リアラの魔道鏡(2)
その日の夜――。 俺たち3人……猫獣人の数え方がよくわからないな……2人と1匹?
とにかく、俺とウィル王子とミネア嬢は酒場にいた。
人の多い表の酒場ではなく、アネモネが教えてくれた裏酒場だ。 ここなら人も少ないので、密談にはもってこいだ。
「へぇ……王都にこんな場所があったのか……」
「私も初めて来ましたにゃん」
ぬるいエールで乾杯し、俺は早速本題に入った。
「実はミネアにお願いがあるんだけど……」
「何でもやりますにゃん。タケベさんはお財布の恩人ですにゃん!」
食い気味に協力を約束してくれる。 この幼女、案外ちょろいのかもしれない。
「いや、そんな安請け合いしないで……やばいお願いかもしれないんだよ?」
「タケベさんは悪い人じゃないですにゃん。だから安心ですにゃん」
シュミット爺が俺に『リアラの魔道鏡』を使った時、確かミネア嬢も同席していたはずだ。 ひょっとして、そこで判断したのだろうか?
まぁ、信用されているなら話は早い。
「じゃあ相談なんだけどさ。盗賊のアネモネって知ってるだろ? あの賞金首の……あの子に『リアラの魔道鏡』を使ってみてくれないか? ただ、ギルドマスターには内緒にしてほしいんだけど……」
面倒な頼み事だし、難色を示されるだろうということはわかっていた。
その場合は、アネモネの身の上話をして……などと段取りを考えていたのだが、ミネア嬢の反応は意外なものだった。
「実は私も、あの子が悪い子には見えなくて、それがずっと気になってましたにゃん」
「じゃあ、協力してくれるの?」
「もちろんですにゃん。でも問題があって……」
「ギルドマスターが、なかなか自室を出ないって話だろ? だったら俺に任せてくれ。考えがある」
ウィル王子が助け舟を出してくれた。
「彼からはもともと、冒険者ギルドからあの村……タルカスを調査してくれという依頼を受けていたんだ。 廃墟に不審な二人組がうろついているって報告があったらしくてね」
そう言って、いたずらっぽい目で俺を見る。
賞金首の盗賊に、謎の異世界人……確かにこれ以上ないくらい不審な二人組だ。
「その報告をギルドにするんじゃなくて、『個人的に相談がある』って言って酒場に呼び出せば、おそらく断れないだろう。後ろ暗い部分があるなら、なおさらにね」
「なるほど。じゃあ時間稼ぎはウィル王子に頼む。決行はいつにする?」
「早いほうがいいですにゃん。明日の夜はどうですにゃん?」
「問題ない。それじゃ、準備を進めよう」
細かい打ち合わせの後、俺たちは解散した。 ギルドへと戻るミネア嬢の背中を見送る。
「そういえばヒデオ、今晩の宿は?」
「これから取るつもりだ」
「だったら、俺の隠れ家に来ないか?」
「隠れ家?」
品行方正なウィル王子が、そんなやんちゃなものを持っていることが意外で、つい聞き返してしまった。
でも正直、すごく興味がある。
そんな俺の気持ちを察したのか、ウィル王子は爽やかな笑顔でこう誘ってきた。
「行こう。今日はちょっと、語り合いたい気分なんだ」




