廃墟タルカス(6)
王都へと向かう道すがら、ウィル王子がこう切り出してきた。
「私はある程度、相手の強さを見極めることができる……そう思っていた。ヒデオ、お前と初めて会った時も……失礼ながら、特に訓練をしていない平均的な壮年男性……そう判断してしまった」
「まぁ、普通そうだろうな」
「しかし今のお前からは、まるで熟練の剣士のような闘気を感じる。一体これは、どういうことだ?」
「そ、そのあたりは守秘義務があるから……」
「誤魔化さないで教えてくれ。私たちはこれから、あの冒険者ギルドを敵に回すことになるかもしれないんだ。だからこそ、仲間であるお前とは嘘のない関係でいたい」
『セイクリッド・ハートランド』の主人公、ウィル王子に『仲間』と呼ばれて、俺はちょっと感動してしまった。
……ただのデバッグアルバイトのおっさんが、いつの間にかゲームのメインキャラに? いや、そんなことでいちいち感動していたら心がもたない。
少なくとも俺視点では、この世界の主人公は、他ならぬ俺自身なのだから。
「じゃあ、言える範囲で話すけど……俺には特別なスキルがあるんだ。短期間で強くなれたのはその力によるものだ。他にもアイテムボックスが使えたり、限定的だけど魔物の出現を抑えることもできる」
「ああ、あの時のラッキータケベは、スキルの力だったのか!」
ウィル王子はイケメンだ。 駄洒落とか絶対に言わない正統派で真面目なナイスガイだ。
しかも低音の響くイケボだ。 その声で『ラッキースケベ』みたいに呼ばれることに、俺はまだ慣れていない。
なんかシリアスな世界をギャグで汚染してしまったような、そんな罪悪感がある。
「それで、今もその『ラッキータケベ』のスキルを使っているのか?」
「……これからは【ENTRY_OFF】って呼んでもらえると……」
「わかった。【ENTRY_OFF】だな。それは使っているのか?」
「ああ、一応な」
「じゃあ、一時的に解除してくれ。ヒデオ、お前と共に戦いたい」
「わかった」
◇
解除した途端、魔物が襲ってきた。 ゴブリンが6体。二人で戦うには、ちょうどいい数だ。
「それじゃ、行くぞ!」
ウィル王子が疾走し、一番奥の敵に切り掛かる。 どうやら手前の敵は俺に譲ってくれるらしい。
俺も剣を抜き、上段から切り付けて1体……返す動きでもう1体を倒した。
「へぇ、やるじゃないか!」
そう声をかけるウィル王子も、すでに3体を葬り去っている。 残りの1体は、無詠唱のファイアーボールで倒した。
「すごいな。魔法も使えるのか」
「まぁ一応、見せておいた方がいいかなと思って」
「ああ、もちろんだ。お前のこと、もっと教えてくれ」
――なんか、男の友情って感じだ。 ちょっと気恥ずかしいけど、嬉しさの方がずっと大きい。
俺たちはそれから、次々と魔物を倒していった。
仲間と共闘する楽しさ……デバッグでプレイしててもそれなりに楽しいゲームだったけど、実際に自分の腕で剣を回り、実在する仲間と共に闘うという体験は格別……いや、快感と言っていいくらいだ。
魔物を倒しまくり、二人ともひとつずつレベルが上がった。 すごい。今俺はこのゲームを心の底から楽しんでいる。
「魔石もある程度稼いだし、冒険者ギルドに行って換金するか」
「そうだな。ついでにあの猫耳幼女を仲間に引き込もう」
「猫耳……幼女?」
「あ、いや……こっちの話だ」
ああ、またあのイケボの持ち主に、相応しくない言葉を言わせてしまった。
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