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デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


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廃墟タルカス(1)

「着いたわよ。ここがあたしの生まれ故郷」


 アネモネが案内してくれたのは――廃墟だった。


 崖沿いの道を抜けた先にある小さな村。 しかし、そこに人影はなく、建物の多くが崩れ落ちていた。 鳥の鳴き声すら聞こえてこない。


「この村はタルカス。あたしはここで生まれ育ったの。優しいお父さんと、明るいお母さんと、やんちゃな弟と……家族4人で幸せに暮らしてた。今日はここに、お墓参りに来たってわけ」


 アネモネは村の奥を進む。そこには青く美しい花が咲いていた。 形はユリに似ているけど、朝顔のような鮮やかな青色をしている。


「この花、お母さんが好きだったんだ」


 そう言うと、慎重に花を摘み、丘の上へと歩き出した。


「付いてきて」


 村が一望できる小高い丘に、たくさんのお墓が並んでいた。 この墓石の数だけ、亡くなった人たちがいるのだろう。

 家族の墓に花を捧げ、アネモネが目を閉じ祈る。 俺もそれに倣った。


「3年前、村を魔物が襲ったの。凶暴化した、ものすごい数の魔物……自警団の人たちが戦ってくれたけど、どうすることもできなかった。魔物は津波みたいな勢いで迫ってきたから……あたし以外の……全員が亡くなったわ」


「……辛かっただろうね」


「それが不思議なの。あの頃は、自分も一緒に死んじゃいたいくらい悲しくて、寂しかったんだけど……時間が解決してくれたのかな? 今は、楽しかった頃の思い出のほうが大きいから、だからこうしてちょくちょくお墓参りに来 てるってわけ」


「アネモネは……強いな」


「うん。この3年間、強くならなきゃ生きていけなかったもん」


 そう言って寂しそうに笑うアネモネ……いったいどれだけの苦労をしてきた3年間だったのだろう? 俺にはちょっと想像がつかない。


 普通の女の子が、お尋ね者として追われながら、あれだけの魔石を集め続けた。 その孤独な戦いを思い、俺は胸がいっぱいになった。


「それにしても、何でこの村が……魔物の大群に襲われなきゃならなかったんだろ?」


 独り言のように、そう呟く。

 そして、俺はおそらくその答えを知っている。


 ……スタンピードだ。


 凶暴化した魔物が大挙して殺到する状態を指す言葉で、実はゲーム本編のシナリオでも、この後に王都でスタンピードが起こる。


 その時は、勇者となったウィル王子と聖女エリザが大活躍して、王都の平和が守られる……という展開になっている。


 圧倒的な魔物の攻勢に、心が折れそうになるウィルを、エリザが一喝して勇気づけるところは、ゲーム序盤のハイライトと言ってもいいくらいの名シーンで、俺も大好きだ。

 普段は大人しく、おしとやかなエリザの意外と芯の強い一面を見ることができるのもポイントだ。


 ……いや、今はゲームではなく、リアルのことを考えよう。


 3年前にすでにこの村でスタンピードが起きていたと言うことは、その原因を調べれば、これから起こるスタンピードを阻止できるかもしれない。


 まぁ、本筋通りなら勇者ウィルたちが何とかしてくれるのだが、王都が受ける被害を考えると、スタンピードは起こさないに越したことがない。


「ねぇヒデオ、今日はもう遅いから、うちに泊まってってね」


「あ、あぁ……う、うん」


 考え事をしていたら、いきなりアネモネがドキッとするようなことを言ってきた。

 あ、いや……普通に親切心でそう言ってくれているわけで、勘違いしちゃダメなんだろうけど、こういうときは女性慣れしていないせいで、つい挙動不審な返答をしてしまうのが恥ずかしい。




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