勇者伝説の森(3)
アネモネ……ゲームでは早々に退場したチュートリアル的な中ボス……
彼女はいったい、どんな秘密を持っているのだろう? ゲームシナリオに描かれているキャラは大体把握しているのだが、彼女の場合ゲームでは細かく描写されていないので、まったくの謎なのだ。
「秘密ぐらい誰でも持ってる……か……」
「そうよ。特に女子はね」
俺は彼女のことを、もっともっと知りたいと思った。
◇
さらに森を進むと、見覚えのある倒木があった。
「ちょっと待って、ここに宝箱があるから」
「え? どういうこと?」
びっくりしているアネモネを横目に、俺は倒木の前でしゃがみ込む。
思った通り、内部は空洞になっていた。 ……というか、内部が空洞の倒木って、自然界にあり得るんだろうか?
まぁ、そんな細かいところ突っ込んでも仕方ないけど……。
匍匐前進で倒木内を進むと、突き当たりに宝箱があった。 これもデバッグで何度もお世話になった隠し宝箱だ。
中には『守りの指輪』が入っている。 防御力を中程度上昇させるアクセサリーだ。
「ほら、ここに宝箱があるんだ」
「えええ!? なんでそんなこと知ってるの?」
これだけ大きなリアクションで驚いてくれると、正直嬉しい。
「これもまぁ……守秘義務があるから言えないんだ」
「ぶーっ! 教えてくれてもいいじゃない!」
「悪いな。家族にすら話せない契約なんだ」
「ふーん」
可愛らしい膨れっ面を見て、ふと思った。 この指輪は俺ではなく、アネモネが装備した方がいいかもしれない。
俺は今後、強力な鎧などを手に入れる予定だから防御力は十分だけど、アネモネは軽装だからアクセサリーを充実させる方針で強化する方がいいだろう。
「ほらほら、これあげるから機嫌直してよ」
レアアイテムだし、見た目も綺麗だから喜んでくれる……そう確信していたのだが……返ってきたのは予想外の反応だった。
「どどど、どういうこと? いきなりおかしいでしょ!?」
「……え?」
「あたしたちまだ会ったばかりだし……こ、心の準備もできてないし……べべべ、別に嫌じゃないけど、その……段階ってものがあるでしょ?」
「でもこれを嵌めれば防御力が……」
「は、ハメる? な、なんてことを……!」
「え? 嫌なの?」
「……ととと、とにかく! 今はまだ受け取れません!!」
顔を真っ赤にしながら、ぷりぷりと足早に俺の前を歩いてゆく。 呆気に取られ、立ちすくんでいると……。
「な、何してるの? は、早く付いてきなさいよ!」
言い方はきついけど、声はなぜか嬉しそうだったので、別に怒っている感じではなさそうだ。
……とにかくまぁ、機嫌が直ったみたいでよかった。




