表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デバッグアルバイトのおっさん、転生して勇者となる。(デバゆう)~デバッグ知識で、異世界の壊れた運命を書き換える~  作者: うずまき鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/92

勇者伝説の森(2)

 森の奥に進むと、ゴブリンの雄叫びが聞こえてきた。 続いて激しい剣戟けんげきの音――。


 物陰から覗くと、10メートルぐらい先にアネモネがいた。 どうやら苦戦しているようだ。


 彼女に襲いかかっているのは、2体のゴブリンと、植物系のモンスター……あれは人喰い花だ。


 よく見るとアネモネの足首には、人喰い花の伸ばしたツタが巻き付いている。 あれでは彼女自慢の機動力が活かせないはずだ。


 そして、動きが鈍ったところにゴブリンたちの重い一撃が襲ってくる。 ……これは最悪の組み合わせだ。


 ソロで戦うと、よくこういうアクシデントが起こる。 だから冒険者は常にパーティを組んで行動するのだが、アネモネの場合、賞金首なのでそれが難しいのだろう。


 ……となれば、俺の行動は決まっている。 俺はアネモネを助けるために走り寄った。


「来ちゃダメ! あなたのかなう相手じゃないわ!!」


 俺の姿に気付いたアネモネが叫ぶ。

 確かに、俺ひとりじゃ苦戦するかもしれない。 でも……俺たち二人なら、こんな奴ら敵じゃない!!


「ファイアーボール!!」


 俺は覚えたばかりの魔法を唱えた。 目の前に、野球ボールサイズの火球が現れる。(お、ちょっと進化してるぞ!)


 そして俺は気合いを入れて、その火球を放つ!

文字通り、火の玉ストレートの一撃が人喰い花のツタを焼き尽くす。


 俺の予想外の行動に、一瞬だけ驚いた顔をしたアネモネだったが、すぐにキリッとした表情になり、手にした短剣で人喰い花を突き刺した。


「サンキュウ! タケベ!」


 アネモネの反撃を横目で見ながら……俺もゴブリンたち目掛け、鋼の剣を一閃させる。


「グゲギャーー!!!」


 ゴブリンたちの二つの首が――同時に地面に落ちた。 おお! この剣、すごい切れ味だ。


「タケベ……あなた、いつの間に魔法を? それに剣の腕前も……昨日会った時は、あんなに弱そうだったのに……」


『弱そうだった』という言葉に、内心ちょっとだけ傷つきながら、俺はこんな言葉を返してみた。


「『男子、三日会わざれば刮目かつもくして見よ』ってやつだよ」


「ああ、なるほどね」


 ……いや、ちょっと待って。

 中国の『三国志演義』が出典の言葉が、なぜ中世ヨーロッパ風世界観で通じるんだ?


 この世界の『翻訳機能』についてもう少し調べてみたくて、つい試したのだが(これもデバッガーの職業病みたいなものだ)なんて期待通りの反応なんだろう。

 ただ、アネモネは素直に感心してるみたいなので、これ以上突っ込むのはやめておくことにした。


 ◇


「あのさ……助けてくれて、ありがと」


 激しい戦闘の後のせいか、ちょっと頬を赤くして、アネモネがぺこっと頭を下げた。


「いや、昨日助けてくれたお返しってことで」


 ……正直、女の子からこんな風にお礼を言われることって、これまでの人生でほぼ無かった……いや、初めての経験だったので、ものすごく照れる。


「あ! すごい! 腕とか逞しくなってる。あと、腹筋も割れてる!!」


 昨日も思ったが、この子……距離感がバグってる気がする。

 ほぼ初対面の俺の腕や腹を、遠慮なくぺたぺたと触っている。 正直、こそばゆい。


 ただ……こういう『バグ』なら、悪くないかも……。


「ねぇ、どういう鍛え方をしたら、そんな急に強くなれるの?」


 まっすぐな瞳でそう聞かれたが……まさか『実はデバッグコマンドを使って』などと本当のことを言うわけにはいかない。

 仕方なく、俺はこう返した。


「ごめん。守秘義務があるから答えられないんだ」


 守秘義務とは、文字通り『秘密を守る義務』という意味だ。

 デバッガーは毎日、発売前のゲームをプレイするわけで、そこで知った情報を外部に漏らすわけにはいかない。


 このため会社とNDA(秘密保持契約)を結び、違反した場合は罪に問われてしまうのだ。


 今時のゲーム会社は上場企業なども多いので、情報が漏洩ろうえいしてしまうとインサイダー取引などの犯罪につながってしまう場合もある。 実際、何年か前にも某社の……おっと、それ以上はいけない。


 とにかく、デバッガーが業務上知り得た情報をSNSなどに出すのはもってのほかで、家族にすら話してはいけないと言われている。

 ……まぁ、独身で一人暮らしの俺には、そもそも話す相手すらいないのだが……。

 あ、なんか涙出てきた。


「まぁ、秘密ぐらい誰でも持ってるもんね」


 アネモネが妙に聞き分けがいいのが逆に怖い。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ