王都バルディア(8)
俺が案内されたのは、冒険者ギルド2階最奥にあるギルドマスターの私室だ。 豪華な応接セットが並んでいる。
「タケベヒデオ、32歳。犯罪歴は……なし、か……」
シュミット爺が魔道具を覗き込みながら呟く。
「レベルは20だが、妙なスキルを持っているな。それでスライムを倒して、あの大量の魔石を稼いだってわけか……なるほど。疑って悪かったな」
便利すぎる魔道具のせいで俺のプライバシーは丸裸だが、ややこしい説明の手間が省けて助かる。
「うちの若いのが騒いじまって、迷惑かけたな。お詫びってわけじゃねぇが、こいつを受け取ってくれ」
「こ、これは……B級ライセンス?」
「まぁ、あんたの実力を考えたら、もっと上のランクでも良かったんだが……いきなりS級じゃ目立っちまうだろ?」
「助かります」
冒険者ギルドに登録すると、冒険者ライセンスがもらえる。 通常はE級から始まり、徐々にランクを上げて行くのだが、今回はギルドマスターであるシュミット爺の計らいで、いきなりB級冒険者から始めることができたのだ。
これは本当にありがたい。
「タケベ様、ごめんなさいにゃん。タケベ様があまりにも強くて……しかも、お名前が魔王デオメットに似ていたから、私、急に怖くなって……」
ミネア嬢が涙目になって謝っている。
「いいんだ。気にしないでくれ」
魔王デオメットというのは、この世界の伝承にある破壊神だ。 今でも子供たちは「いい子にしないと魔王デオメットに食べられちゃうぞ!」と親に脅されているらしい。
それだけ子供たちにとって恐怖の対象となっているのだ。8歳のミネアが怖がるのも無理はない。(猫獣人的には成人してるらしいけれど……)
で、ネタバラシをしてしまうと、この魔王デオメットが『セイクリッド・ハートランド4』のラスボスなのだが、ヤツがこの世界に召喚されるのはだいぶ後のことになるので、今は気にしないことにする。
「魔石は全部換金でいいんだな? だったら、こいつを受け取れ」
シュミット爺は、金貨でずっしりと重くなった皮袋をドンとテーブルに置く。
おそらく俺の鑑定スキルのおかげなのだろう。 皮袋の上には『400ゴールド』と書かれた半透明のウィンドウが浮かんでいる。
……うん、いちいち数えなくて済むのでこれは便利だ。
「今後、うちのギルドに厄介な案件が来たら、指名させてもらってもいいか?」
「はい。もちろんです」
俺はシュミット爺とガッチリ握手をした。 ……なんか、実家のお婆ちゃんの部屋の匂いがする。
中世ヨーロッパ風世界観なので、まさか線香の匂いではないとは思うのだが、それっぽいお香の匂いだ。 これって、年寄り独特の匂いなのだろうか?
ただ、少なくとも不快ではない。 むしろ、妙な親近感を持ちながら、俺は冒険者ギルドを後にした。




