王都バルディア(7)
王都に戻る。 冒険者ギルドを訪れるのは初めてだが、デバッグで街の構造を熟知している俺は、迷わずに辿り着くことができた。
「ここは冒険者ギルドにゃん。お客さん、初めてにゃん?」
独特な語尾で話しかけてきたのは、看板娘のミネア。猫獣人だ。
令和の日本だったら、児童福祉法に引っかかってしまいそうな幼女で、年齢も8歳なのだが、「猫の8歳は人間では十分に大人」ということでOKなのだそうだ。
それにしても……可愛い。 小動物的な愛くるしさが溢れ出していて、思わず頭を撫でてしまいそうになる。 もちろん、そんなことをしたら犯罪なのでグッと堪える。
「あの……ご用件は何ですかにゃん?」
受付のカウンターは彼女には高すぎるようで、ちょっと背伸びをして……たまにぴょんぴょん飛び上がりながら応対している。 思わずお持ち帰りをしてしまいそうなくらい可愛い。
「えーと、冒険者登録をお願いします。あと、魔石をお持ち帰りで」
「へ?」
……つい心の声が出てしまい、だいぶ気まずい。
「あ、いや……魔石の買取をお願いします」
「わかりましたにゃん♪」
危ない危ない。何とか誤魔化せたようだ。 俺はずっしりと重くなった魔石袋をカウンターにドンと置いた。
「にゃにゃっ! こ、これはっ……!?」
ミネア嬢は大きな瞳をまん丸にして驚いている。 よく見ると、ちょっと怯えた表情で、じわじわと後ずさりをしている。
「え? 何か問題……でも?」
「も、問題だらけですにゃん! まず数が多すぎます。登録のない冒険者がこの数の魔石を集めるって異常ですにゃん。それも鑑定したら全部、今日の夕方に手に入れたって……一体、どんなジェノサイド(大量虐殺)が起こったんですかにゃん?」
「……な、なんかごめん」
勢いに圧倒されて、つい謝ってしまった。
「ゴールドスライムの魔石が5個もあります! これも異常ですにゃん! 超レアモンスターで、レベル50ないと倒せないはず……お客さんのレベルと合ってないですにゃん! ほんと異常事態ですにゃん!」
「……あの、あんまり異常者扱いしないで……」
幼女に責め立てられると、自分が危ない奴だと思われそうだ。
「なんだ? 何事だ?」
「俺たちのミネアちゃんを、泣かせてるぞ?」
「『異常者』とか呼ばれてるぞ? 兵士を呼ぶか?」
「そうだな。変態は牢屋にぶち込まないと!」
「ロリコンには死を!」
……やばい。もう手遅れなようだ。 絶望している俺の前に、救世主が現れた。
「ミネア、大丈夫か?」
「ま、マスター!」
年齢は70歳ぐらい。しかし、筋骨隆々とした大男……。 彼こそが冒険者ギルドのマスター、シュミットだった。
いかつい顔と無口な性格なため、かなり近寄りがたい雰囲気があるが、実は優しくて面倒見のいい爺さんだ。 実際ゲームではウィル王子の良き相談相手になっている。
シュミット爺は鋭い眼光で俺を睨むと、ゴツくて大きな手で、俺の肩をドンと叩いた。 老人とは思えない馬鹿力だ。だいぶ痛いけど、悪意はない……はずだ。
「奥で話をしようぜ」
「は、はい……」
圧倒的な筋肉を目の当たりにして、俺に拒否などできるわけがなかった。




