王都バルディア(6)
レッドスライム二匹を倒した後、フィールドに笛が落ちていた。 いわゆる『ドロップアイテム』というやつだ。
「よしっ! このバグ、まだ直ってなかった!」
『狩人の笛』は、本来0.003%という非常に低い確率でしか手に入らないレアアイテムなのだが、なぜかレッドスライムを素手で倒すと100%の確率でドロップしてしまうというバグがあるのだ。
バグというのは「普通、そんなことやらないだろ!」というようなことを、あえてやると出ることがある。
このバグも俺があえて装備を外して戦っていたら出たバグで、発見した時は興奮して脳汁が出た。
こんな感じで狙った通りにバグが出ると、なんだかプログラマに勝ったような気分になるのだ。 ……まぁ、あくまで気分の問題で、実際には何も勝ってはいないのだけれど……。
そしてこのバグは、俺を二重に歓喜させてくれた。 というのも、この『狩人の笛』は、レベル上げに非常に有用なアイテムなのだ。
♪ぼっぼろ・ピリョー!!
俺が狩人の笛を吹くと、すぐさま黄ゲロ……もとい、イエロースライムが現れた。 そう、この笛はモンスターを呼び出すアイテムなのだ。
♪ぼっぼろ・ピリョー!! ♪ぼっぼろ・ピリョー!!
それから一時間ぐらい、俺は笛を吹いては各種スライム達を倒し続け、最終的にレベルを20まで上げることができた。 そう、アネモネと同じレベルだ。これでもう『弱い』なんて言わせない。
さらに! スライムたちを倒したことで、俺は結構な数の魔石を手に入れていた。
魔石というのは、モンスターを倒すと必ず手に入る宝石で、これを冒険者ギルドに持っていくことでゴールドが手に入るという仕組みだ。
魔石はドロップアイテムとは違って地面には落ちず、専用の袋に自動的に入る。 どういう仕組みなのかはさっぱりわからないが、いちいち拾わなくて済むので便利だ。
しかし、実際に手にした皮袋がモンスターを倒した直後に急に重くなるのは、最初のうちすごく違和感があった。
そして魔石を入れた皮袋は、アイテムボックスという謎の空間から取り出す仕組みだ。
アイテムボックスは、ドラ○もんの四次元ポケットのようなもので……あ、いや、異世界転生モノでは当たり前の機能なので、わざわざここで説明する必要はないのかもしれない。
ただ、自分でも不思議だなと思うのは、こういう機能を俺自身がごく自然に使いこなしているということだ。 なんか、体が覚えているという感じがする。
しかしその一方で、頭ではそれらの機能に対し、いちいち驚いている。 ゲームとリアルとの融合にまだ戸惑っているというのが正直なところだ。
「さて、王都に戻って、まずは冒険者ギルドに行くとするか……」
魔石の皮袋はずっしりと重かったが、アイテムボックスに入れると重さがゼロになる。 これもだいぶ不思議な感じだが、まぁ異世界なので何でもアリだ。




