多肉植物の鉢植え
「おっ、これはこれは…」
植物学者はエルフの店の商品に目を留める。
置いてあったのは多肉植物の鉢植え。
手のひらサイズの鉢の中に、ころんとしたたたずまいで並べてあった。
「まあまあ。ねえ…」
エルフもうんうんと頷きながら目配せをする。
お互い多くは語らずとも、植物を好きで育てているもの同士通じるものがある。
多肉植物はかわいいのだ。
その見た目を説明しようとすると少々ユニークなことになる。
プニっとしていて、プチっとしていて、ツブツブしている。
花のようで、草のようで、実のようでもある。
不思議な透明感のあるそれに魅惑され、多肉植物を沢山育ててるマニアもいるくらいだ。
自分の部屋にも多肉植物は置いてあるが、やはり余所で見るものもかわいい。
「何ともいえませんね…。」
「何とも言えないねえ…。」
二人で言葉にならない溜め息をうっとりとつく。
店に置いてあるのはバラの花のような形のものと、つやつやとして緑色が濃いもの、葉の先が尖っていて磨りガラスのように半透明なものなどがある。
どれも個性豊かな見た目で、コレクションして並べたくなってくる。
が、油断は禁物
多肉植物は葉を抜いて地面に挿すと、そこから新たに成長する。
つまり、やろうと思えばかなりの数を増殖させることができる。
気づいたら家が多肉植物だらけに…なんてことも嘘ではないのだ。
植物学者は部屋にある鉢植えの数と、植物を置けるスペース、今既に育てている多肉植物の数を思い出し脳内で計算する。
「いや~、もう…。」
「そうなんだよねえ…。」
今度は悲しみの溜め息をつく。
どうしても育てられる限界があるのだ。
そして、多肉植物を増やそうと思うと限界がないのだ。
きっとエルフもそうなのだろう。
庭があるとはいえ、どんどん増やしていたらきりがない。
多肉植物ばかり育てていたら、多肉植物の農家のようになってしまう。
店の方針的にも悩みどころなのではないだろうか。
でも、増やしたくなるのはわかる。
だってかわいいんだもの!!
目にしてしまうとコレクター心が刺激されてしまう。
ああこの心を何としよう…。
すいません、見つめちゃって。
いえいえ、どうぞごゆっくり。
最早植物学者とエルフとの間には会話すらない。
お互いちらりと目線を動かすだけで思っていることが伝わり、少ない仕草で考えていることがわかるのだ。
うーん。でも本当にどうしよう。
植物学者が店内をぐるぐるまわりながら多肉植物に思いを馳せていると、扉のベルが鳴り来客を告げる。
若い女性三人組は店内を楽しそうに見て回り、多肉植物の前で足を留める。
「えっ、これ植物?」
「なんかぷにぷにしててかわいいよね!」
「面白い!ほんとだ!」
三人はわいわいと話し合い、エルフに多肉植物について育て方等をあれこれ尋ねている。
しばらくすると三人はそれぞれ自分が気に入った鉢の多肉植物を購入し、楽しげに店を出ていった。
「よかったですね~。」
「うんうん。」
多肉植物のかわいさを知る人が、一気に三人も増えた。とても喜ばしい。
残された二人は再び少ない言葉を交わして、お互い頷きあった。




