建築ルール
今日もバーツとお出かけ。新しく作ってもらったコートを着て外界へ出る。
――でも。
何回外出しても意味がわからない。
お向かいさん、こんにちはー、みたいに、玄関を開けたら目の前が真向かいの玄関、という住宅は見たことがある。しかし、真向かいさんが"全部"背中を向けている家は知らない。
そう、真向かいさんがなぜか三軒ある。背中が狭くて、玄関側がやたら広い住居らしい。三軒並ぶと、扇形の一軒家みたいに見える。そもそもなぜ連なって三軒? と思っていたら、どうもお向かいさん、三つ子らしい。
――なるほど……?
ただ大型の獣人らしく、入り口を好きな方向に向けて広くしたら、背中のほうを小さくするしかなかったと……。
――やっぱり意味がわからない。
今日こそ道を覚えたくて、観察しながら歩く。今日は念願の八百屋に行くから凄く楽しみ……とウキウキがびっくりに変わった。
「あ。窓」
「ん? あー。シシリーの家か」
大きな家だった。窓もある程度の大きさがあって、私も出入りできそうだ。とよく見たら、真向かいにも同じ大きさの窓つきの家がある。
「え?」
なんとお互いの玄関が三十センチも離れていない。中に入れないんじゃ……と思ったら、窓から出入りしているそうだ。ライバル同士の兎の家らしく、同時期に建て、相手の家を見て大きくするを繰り返していたら、玄関が使えないほど幅がなくなり、窓を作り、ぴょんとそこから出入りするようになった。
なんてバーツが教えてくれたけど、一人暮らしの兎に、うちの三倍はある大きさが必要なのか? てか、玄関とは?? と疑問しか湧かない。そんな私の様子をじっと見ていたバーツは――。
「でけぇ家が欲しいのか?」
バーツの目が「欲しいのか?欲しいのか?」と圧をかけてくる。――けど、負けない。負けるとバーツは絶対に手に入れるから。だから……
「バーツとくっついていられる今の家が好き」
と答えてみた。もちろんそう思っているし、何よりこう言っておけばバーツも作らないだろう。
――浅はかだった。
バーツは手で口を押さえるとわなわなと震え、涙目になった。
「そんなに俺のことを……」
小さい声が聞こえた瞬間、抱き抱えられ、すごい勢いでベッドまで戻る。その時間、体感で三秒。
――はや!
扉、どうやって開けた?? と一瞬思ったけど、バーツが服を破いて触り始めるから、それどころじゃなくなった。まぁ、その後はイチャイチャイチャイチャ……。私の野菜生活は次の日まで持ち越しとなった。
えーーーー!!!
ルルを気が遠くなるほどあんあん言わせて、ようやく満足したところで、俺は次のことを考えた。
――家だ。
でかくするか。
この家がいい、なんてルルは言ってたがな。
あいつは謙虚すぎる。ああいうのは、だいたい本音じゃねぇ。
問題は、この家の周りに増築する場所がねぇことだ。
……ま、いつものアレか。
ここじゃ、土地の取り合いは日常茶飯事だ。
皆、好きな場所に建てたがる。だから揉める。
そこで出来たのが、“潰しあい”ってルールだ。
名前の通り。
相手の家を減築――なんて綺麗な言い方をするが、要するに取り壊しだ。
やられりゃ、向こうもやり返す。
気がつきゃ、壁がねぇだの、屋根がねぇだの、そんな家が転がってる。
先に家を完成させたほうが勝ち。
作るか。
壊すか。
材料をどれだけ早く集められるか。
結局、勝負はそこだ。
――いい場所あったか?
まぁ、先に新しい巣を建てちまってから引っ越せばいい。
家をでかくして、壁を分厚くすりゃ、巣そのものは小さくなる。
あいつ、言ってたからな。
くっついていたい、って。
うるうるした目で俺を見上げてよ。
……ったく。
可愛いツガイの願いを叶えてやらねぇと、オスが廃るってもんだ。
悪くねぇ考えだ。
そう思いながら、俺はルルを抱き寄せた。
あったかい体を腕の中に収めて、そのまま眠りに落ちた。




