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ゴッドチューブ配信開始! 神々のおもちゃ箱

ゴッドチューブ配信開始! 神々のおもちゃ箱

 神界某所、ポテトチップスの空き袋が散乱する四畳半のコタツ部屋。

 世界神ルチアナは、愛用の『エンジェルすまーとふぉん』をコタツの上にセットし、高らかに宣言した。

「はいはーい! 全次元の暇を持て余した神々、ならびに魔界と天界の皆さーん! 突発ゲリラ生配信の時間だよー!」

 画面には、迷宮ダンジョンの中を歩く一人の少年の姿が映し出されている。

 配信開始からわずか数秒で、画面の右側を猛烈な勢いでコメントが滝のように流れ始めた。

『うぽつ』

『ルチアナ様また仕事サボりですか? ヴァルキュリア様にチクリますよ』

『ってか、その背景の岩肌……またあのヘルメット妖精が作った厄災迷宮か!?』

『おいおい、映ってるのただの子供じゃねえか。キュルリンの迷宮に入ったら、秒でミンチになるぞ。残酷配信はやめろ』

 心配や呆れの声が飛び交う中、ルチアナの隣でイカの姿焼きをかじっていた魔王ラスティアが、ニヤリと悪魔の笑みを浮かべて画面を覗き込んだ。

「ふふん、ただの子供じゃないわよ。お前ら、よーくアイツのステータスと魔力波形を見てみなさい。……さあ、伝説の目撃者になる準備はいいかしら?」

 ――その頃。

 迷宮の第一層を歩いていた僕は、少しだけ眉をひそめていた。

「うーん……薄暗いし、カビ臭いな」

 周囲はゴツゴツとした岩壁に覆われ、松明の頼りない明かりだけが揺れている。

 タローマンで買ったお気に入りのスニーカーが、ぬかるんだ泥で汚れてしまうのが少し不快だった。

『グガァァァァッ!!』

 突如、岩陰から三体の巨大な魔獣が飛び出してきた。

 筋骨隆々の肉体に牛の頭を持つ『マーダー・ミノタウロス』。冒険者ギルドでもAランク指定を受ける、狂暴な一撃必殺の魔獣だ。

 彼らは血走った目で僕を睨みつけると、大木のような戦斧を高く振り上げた。

「……あーあ。急いでるのに」

 僕はため息をつきながら、軽く右足を踏み出した。

 ブンッ!!

 脳天をカチ割る勢いで振り下ろされた戦斧。

 しかし、それは僕の残像を切り裂いただけだった。

「遅いよ。……【体術 A】」

 僕はミノタウロスの懐に滑り込むと、義母さん直伝の合気道の要領で、巨大な手首を軽く掴んだ。

 そのまま、相手の突進するベクトルと体重を完璧に利用して、軽く足を払う。

 ドゴォォォォォンッ!!

「グベァッ!?」

 体重一トンを超える巨大なミノタウロスが、まるで羽虫のように軽々と宙を舞い、そのまま岩壁に深々とめり込んで白目を剥いた。

 残り二体が驚愕して動きを止めた瞬間、僕は両手に『魔気』を集中させた。

「【ダークネス・ショット】」

 指先から放たれた漆黒の魔弾が、魔導ライフルの弾丸すら超える速度で射出される。

 ドスッ! ドスッ!

 寸分違わず二体のミノタウロスの眉間(急所を外し、気絶するポイント)に命中し、彼らはドスンと地響きを立てて倒れ伏した。

 戦闘時間、わずか三秒。

 僕はパンパンと手の埃を払うと、何事もなかったかのように再び歩き出した。

「よし。これなら夕飯のキッシュには間に合いそうだな。義母さん、今日はほうれん草とベーコンのキッシュだって言ってたし」

 ――一方、神界のコタツ部屋。

 ゴッドチューブのコメント欄は、完全にパニック状態に陥っていた。

『は?????』

『ファッ!? 今、何が起きた!?』

『Aランクのマーダー・ミノタウロスを、素手で投げ飛ばした!? しかも無傷!?』

『待て、今アイツ【闇魔法】を使ったぞ! 魔族か!?』

『いや、よく見ろ! 頭の上に天使族特有の光輪(オンオフ可能)が見え隠れしてる!』

『天使と魔族の混血……絶滅したはずの【ネフィリム】だぁぁぁっ!?』

 コメントの勢いが爆発的に加速し、同時接続者数が鰻登りに跳ね上がっていく。

 それに伴い、画面には色とりどりの『スーパーチャット(投げ銭)』のエフェクトが乱舞し始めた。

『【名無しの聖騎士】から 5,000G のスパチャ!「あの体術、美しすぎる!」』

『【ラーメン屋台D】から 10,000G のスパチャ!「ほう、なかなか見込みのあるガキだな。豚骨ラーメンを奢ってやりたいわい」』

『【炎上神ワイズ(匿名)】から 10G のスパチャ。「チッ、生意気なクソガキが。次は死ぬだろ」』

「よっしゃあああ! スパチャ飛び交ってるわよラスティア! これで月人君のプレミアムVIPチケット買えるわ!」

「最高ねルチアナ! さあ少年、もっとリスナーを沸かせなさい! どんどん行くわよー!」

 神々が狂喜乱舞しているとは露知らず、僕は次々と現れる厄介なトラップを、完全に『作業』として処理し続けていた。

「ん? この甘い匂いは……」

 通路の先から、不自然なほど甘い香りが漂ってきた。

 視線を向けると、通路の中央にポツンと、奇妙な形をした野菜が置かれている。

 あれは確か、ポポロ村の農家のおじさんたちが「絶対に素手で触るな」と怯えていた最悪の植物――。

「『折れたス(お祈りレタス)』……しかも、あれは激レアの『最終面接お祈り種』か」

 近づいただけで、脳内に直接『誠に遺憾ながら、今回は採用を見送らせていただくことと……』という絶望のテレパシーを流し込み、精神(SAN値)をゴリゴリ削り取ってくる凶悪なトラップだ。

 普通なら、聞いた瞬間にその日一日が虚無になり、戦意を喪失してしまう。

「でも、僕には効かないよ」

 僕はスッと息を吸い込み、自分の周囲に神気と闘気をブレンドした極薄の結界を展開した。

『……大変甲乙つけがたい優秀な成績ではございましたが……』

 折れたスから放たれる精神攻撃の波動が、結界にぶつかって霧散していく。

 僕はそれを足元に転がっていた小石でピンッと弾き飛ばし、通路の端の溝へと転がした。

「義母さんからは、『不採用はあなたの価値を否定するものじゃない。その会社と縁がなかっただけ。次に行きなさい』って教わってるからね。こんな幻覚の不採用通知で、僕の心は折れないよ」

 僕はニコリと笑い、トラップ地帯を悠然と通り抜けていく。

 天井から降り注ぐ酸の雨(死蟲王の残骸)も、足元の落とし穴も、すべてを【体術】と【知恵】で完璧に回避、あるいは無力化していった。

 服に少しでも汚れがつけば、義母さんが「洗濯が大変でしょ」と悲しむ。だから、絶対に汚れるわけにはいかないのだ。

 ――そして。

「……着いた。ここが、最深部かな」

 迷宮の奥深く。

 それまでの通路とは明らかに空気が違う、巨大で重厚な黒曜石の両開き扉が、僕の前に立ちはだかった。

 扉の隙間からは、尋常ではない濃度の魔力と、肌をピリピリと刺すような殺気が漏れ出している。

「ふぅ……」

 僕は一度だけ深呼吸をした。

 早く帰らないと、義母さんのキッシュが冷めてしまう。

 それだけは、絶対に避けなければならない重大なミッションだった。

「よし、行こう」

 僕は、一切の躊躇なく、巨大な扉に手をかけた。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

ルチアナとラスティアの「ゴッドチューブ」ゲリラ配信がスタート!

キッドの圧倒的な無双っぷりに、世界中の神々や魔族が大熱狂(とスパチャの嵐)を巻き起こしています!

本人は「義母さんのキッシュが冷めちゃう」と夕飯のことしか考えていない、無自覚な余裕っぷりが最高ですね。

さあ、次回はいよいよ最深部のボス戦! そして、あの『伝説の二振りの剣』が登場します!

もし「キッドの無双たまらん!」「神様たちのリアクション最高!」と少しでも思っていただけましたら、

ページの一番下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

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(皆さんの応援がランキングを駆け上がる力になります!)

次回『第5話:常識破りの迷宮踏破』

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