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第三章 『海中国家の視察団と、偽装大アイドル作戦!』

タローソン前の死闘と、鼻息五円玉の極貧アイドル

 ポポロ村の昼下がり。

 村の行政を強引に押し付けられた月兎族の新村長、キャルルさんと一緒に、僕は村の巡回(という名の買い出し)に出かけていた。

「いやぁ、平和だねぇキッド君。村の書類仕事は頭が爆発しそうになるけど、こうして外の空気を吸うと生き返るよ!」

「あはは。義母さん(リベラ)が、キャルルさんは優秀だから助かるって言ってたよ。……ん?」

 僕たちは、村の大通りにあるコンビニエンスストア『タローソン』の前に差し掛かっていた。

 その時、タローソンの裏路地から、ただならぬ殺気と、獣の唸り声が聞こえてきたのだ。

「……ねえ、キャルルさん。あれ、何かな?」

 僕が指差した先。

 そこでは、目を疑うような『死闘』が繰り広げられていた。

「グルルルルルッ……!!」

「シャァァァァァッ!! 渡しませんわ! これは、私の今日のディナーですのよ!!」

 片や、ポポロ村の裏山を縄張りにしている、獰猛で図体のデカい野良犬(ほぼ魔獣に近い)。

 そして片や――ルナミスデパートで売られている、絶妙にダサい『緑色の芋ジャージ』に身を包み、足元に健康サンダルを履いた一人の少女だった。

 少女の顔立ちは、息を呑むほど美しい。

 透き通るような白い肌に、海のように深いサファイアの瞳。まるで童話の中から飛び出してきた『人魚姫』のような、純真無垢で可憐な美貌だ。

 しかし、その美少女が今、泥だらけの路地裏で四つん這いになり、野良犬と本気の睨み合いをしているのである。

 二人の(一人と一匹の)視線の中心にあるのは、タローソンのゴミ箱から半分はみ出していた、廃棄品の『唐揚げ弁当(半額シール付き)』だった。

「キャルルさん……え? あ!」

「えっ? 何? 魔獣が出た……って、ああっ!?」

 キャルルさんが、その芋ジャージの少女を見てウサギ耳をピンと逆立てた。

 そんな僕たちの存在など気にも留めず、路地裏の死闘はクライマックスを迎えようとしていた。

「ウゥゥゥ、ワンッ!!」

 野良犬が、唐揚げ弁当を奪取すべく鋭い牙を剥いて飛びかかった。

 並の人間なら怯んで逃げ出す威圧感。だが、芋ジャージの美少女は、不敵な笑みを浮かべた。

「甘いですわね。野生の掟、私が教えて差し上げますわ!」

 少女はジャージのポケットから、ピカピカに磨き上げられた『五円玉』を一枚取り出した。

 そして、あろうことか。

 その五円玉を、自らの美しい鼻の穴に、スッ……とセットしたのだ。

「……えっ?」

「ええっ!?」

 僕とキャルルさんが呆気にとられる中、少女は肺いっぱいに空気を吸い込み、野良犬の顔面に向けて、凄まじい勢いで息を吐き出した。

「フンッ!!!」

 スパーーーンッ!!!

 まるで狙撃銃から放たれた弾丸のように、鼻の穴から射出された五円玉が、空気を切り裂き、野良犬の眉間にクリーンヒットした。

「キャインッ!? キャインキャインッ!!」

 急所に謎の金属片(五円玉)の一撃を食らった野良犬は、悲鳴を上げながら尻尾を巻いて路地裏の奥へと逃げ去っていった。

 静寂が戻った路地裏で、少女は唐揚げ弁当を両手で高々と天に掲げた。

「よっしゃあああああ! 取ったどおおおおおっ!! 久しぶりのお肉ですわぁぁぁっ!!」

 美しい人魚姫の顔で、サバイバル番組の勝者のような雄叫びを上げる少女。

「…………ねぇ、キャルルさん。あれ、何かな」

 僕は、自分の【知恵 A】のステータスをもってしても目の前の光景が理解できず、隣で顔を引きつらせているウサギの新村長に尋ねた。

「……元、シェアハウス仲間の……リーザ……」

「シェアハウス仲間? じゃあ、キャルルさんの友達?」

「まあ、そうなんだけど……」

 キャルルさんが頭を抱えていると、唐揚げ弁当を大事そうにジャージの懐にしまった少女――リーザが、こちらに気づいてパァッと顔を輝かせた。

「まぁ♡ キャルルじゃないのぉ♡ 探しましたのよ!」

 ペタペタと健康サンダルを鳴らして駆け寄ってくるリーザ。

 至近距離で見ると、本当に驚くほどの美少女だ。ジャージと健康サンダルという絶望的なコーディネートでなければ、どこかの国の姫君だと言われても信じてしまうほどの気品がある(鼻から五円玉を出したばかりだが)。

「ポポロ村の村長に栄転したって噂で聞いたから、わざわざルナミスの帝都から会いに来てあげましたのよ!」

「……リーザ。前のマンションはどうしたの?」

 キャルルさんがジト目で尋ねると、リーザはフッと、まるで悲劇のヒロインのように遠い目をしてみせた。

「キャルルが居なくなったから、家賃が払えなくなって、追い出されてしまいましたの。……ああ、でも心配しないで? 私はたくましく生きていましたわ」

「……どうやって?」

「ルナミスデパートですわ!」

 リーザは胸を張り、ドヤ顔で自分のサバイバル生活を語り始めた。

「朝は一階の化粧品コーナーで、新作の化粧品テスターを使ってバッチリメイクをして! お昼はデパ地下で、爪楊枝を片手に優雅にフルコースのご飯を食べて(試食品)!」

「うん……」

「午後は家電コーナーの最新マッサージチェアで身体の疲れを癒やし! 夜は屋上の庭園で、満天の夜空を眺めながら寝泊まり(テント生活)していたのよ! 完璧なアーバンライフですわ!」

「それ、ただの不法占拠のホームレス生活だよね!?」

 キャルルさんの的確なツッコミに、リーザは「失礼な!」とウサギ耳……ではなく、自分の耳を塞いだ。

「私は宇宙一のトップアイドルですの! アイドルはいつだって、ステージ(デパートの屋上)で輝いているものですわ! まぁ、警備員に見つかって出禁になってしまったので、こうしてキャルルを頼ってきたわけですが」

 悪びれる様子もなく、むしろ「泊めてあげる権利をあげますわ」と言わんばかりの堂々とした態度。

 僕は、この美しすぎるポンコツ少女の凄まじい『ド底辺の生命力』に、ある種の感銘すら受けていた。

「……ねぇ、キャルルさん。これ、何かな」

 僕がもう一度尋ねると、キャルルさんは深いため息をつき、ウサギ耳をペタンと垂らした。

「……自称アイドルの……私の親友(寄生虫)かな……」

「キャルル? 今、寄生虫って言いませんでした!?」

「言ってないよ! ほら、とりあえずその汚いジャージ洗うから、私の家(村長宅)においで。お弁当、温めてあげるから」

「本当ですの!? キャルル大好き! 愛してますわ!」

 野良犬から勝ち取った廃棄弁当を抱きしめながら、キャルルさんにすり寄る人魚姫のアイドル。

 ポポロ村には、神界のヒモニートルチアナ・カグヤに続き、またしても厄介で騒がしい、そして底抜けにたくましい『居候』が転がり込んでくることになったのである。

第3章スタート!!

今回から、新キャラクターである自称・宇宙一の地下アイドル(人魚姫)の『リーザ』が登場です!

「野良犬と廃棄弁当を賭けて死闘」「鼻息で五円玉を射出」「デパートでの極貧テント生活」……。

彼女の底辺サバイバル術は、あのキャルルですら頭を抱えるレベルです(笑)

これからこの極貧アイドルが、ポポロ村とキッドの日常をどのように引っ掻き回していくのか!?

そして、彼女の持つ『ユニークスキル』と『本気の歌』が、思いもよらない奇跡と騒動を巻き起こすことになります!

もし「リーザの底辺力高すぎww」「鼻息五円玉は草」「新章も最高に面白そう!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページの一番下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

ブックマーク登録もぜひよろしくお願いします!

(皆さんの応援がランキングを駆け上がる力になります!)

次回『第3章:パンの耳と神様の運気泥棒』

お楽しみに!

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