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月影流と聖魔竜王剣の共闘

月影流と聖魔竜王剣の共闘

「ギシィィィィィィッ!!」

 全長十メートルを超える巨大な黒い影――創世記の古代兵器『死甲虫機ネクロビートル』が、悍ましい金属音の咆哮を上げた。

 赤黒い複眼が、神気を放つジャージ姿とモンペ姿の二人の女神ルチアナとカグヤを捉え、刃のように鋭い六本の脚が大地を抉りながら突進を開始する。

「ひぃぃぃぃぃっ! 来る! 食べられるぅぅっ!」

「嫌ぁぁぁっ! 誰か、誰か助けてぇぇぇっ!!」

 もはや最高位の神様としての威厳など微塵もない。

 二人は泥だらけの畑を転げ回りながら、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして悲鳴を上げている。

 その巨大な質量が、神々ごとポポロ村の広大な太陽芋畑を蹂躙しようとした、その瞬間。

「――私の村の畑を荒らすなァァァァッ!!」

 ドンッ!! と。

 大砲が放たれたかのような凄まじい踏み込みの音が、太陽芋の畑に響き渡った。

 タローマン特注の安全靴を履いた新村長、キャルル・ムーンハート。

 彼女の小柄な身体が、死甲虫機の真正面へと弾丸のように飛び出していた。

 満月でなくとも、彼女は月兎族の最高峰。その体内に秘められた莫大な『闘気』が、黄金色のオーラとなって彼女の全身を包み込んでいる。

「バカな!? やめなさい、ただのウサギ獣人がSランクの古代兵器に正面から挑むなんて、自殺行為よ!」

 カグヤが絶望の声を上げる。

 死甲虫機の装甲は、黒曜石の数十倍の硬度を誇る特殊金属。並の冒険者の剣など、触れただけで折れてしまうほどの絶対的な強度だ。

 だが、キャルルさんの瞳に迷いはなかった。

(私はもう、鳥籠の中にいた弱いお姫様じゃない。自分の足で立って、この村のみんなを守る『村長』なんだから!)

「ギシィィィッ!!」

 死甲虫機が、キャルルさんを邪魔な障害物と認識し、巨大な鎌のような前脚を容赦なく振り下ろした。

 直撃すれば、巨大な岩盤すら真っ二つにされる一撃。

 しかし、キャルルさんはステップを踏んでその一撃を紙一重で躱すと、両手に構えた二本のトンファーを死甲虫機の前脚の関節部分へと正確に叩き込んだ。

「『月影流・破衝撃』!!」

 ガガァァァァンッ!!

 トンファーから放たれた高密度の闘気が、硬絶な装甲の表面ではなく、関節の内部へと浸透して炸裂した。

「ギ、ギシッ!?」

 内部からの衝撃波に姿勢を崩し、十メートル級の巨体が前んめりに倒れ込む。

 キャルルさんの狙いは、最初からこれだった。巨大な敵の重心を崩し、その最も無防備な『アゴ』の下に潜り込むこと。

「これで、決める……ッ!!」

 キャルルさんは地を這うような低い姿勢から、タローマンで買った特注安全靴(鋼鉄超合金入り)に、自身の全闘気を極限まで圧縮して流し込んだ。

 靴の先端が、摩擦と闘気で赤熱し、黄金の光を放つ。

「『月影流――顎砕き』ェェェッ!!」

 ズドゴォォォォォォォンッ!!!!!

 キャルルさんの全身のバネと、月兎族の超筋力が生み出した、究極のアッパーキック。

 それが、死甲虫機の分厚い顎の装甲にクリーンヒットした。

 信じられない光景だった。

 数千トンはあるだろう十メートル級の超重装甲の化け物が、小柄なウサギ耳の少女の蹴り一発で、まるでボールのように上空数十メートルへと完全に『カチ上げられた』のだ。

「「…………えええええええええっ!?」」

 腰を抜かしていたルチアナとカグヤが、信じられないものを見るように目玉を飛び出させた。

「あ、あんな小柄なウサギの女の子が、Sランクの古代兵器を空中に蹴り飛ばした!?」

「あり得ないわ! どんだけ理不尽な脚力してんのよ!?」

 だが、死甲虫機の装甲は異常なほど分厚い。キャルルさんの蹴りでヒビは入ったものの、完全に破壊するには至っていなかった。

 空中で体勢を立て直そうとする死甲虫機。このまま落下してくれば、その質量だけで村の畑は壊滅してしまう。

「キッド君! お願い!!」

 息を乱しながら着地したキャルルさんが、上空を見上げて叫ぶ。

「うん。完璧なアシストだよ、キャルルさん!」

 僕は麦茶の水差しを置き、すでに上空へと跳躍していた。

 背中から抜いた二振りの剣。

 右手に、白銀に輝く光の神剣『ルクス』。

 左手に、漆黒の闇を纏う魔剣『ノワール』。

 僕は空中で、その相反する絶対的な二つの力を、自らの胸の前で交差させた。

(天使と魔族の力……。僕にしか扱えない、相反する二つの力の融合)

「共鳴しろ、『ルクス』、『ノワール』!」

 僕のネフィリムとしての魔力が、二振りの剣に注ぎ込まれる。

 光と闇。

 本来なら反発し合い、自壊するはずの二つの極致が、僕という『器』を介して完全に一つに混ざり合う。

 バチバチバチッ!! と。

 空中の空間が歪み、神気と魔気が融合した『白と黒の雷光』が僕の全身を包み込んだ。

 それは、神でも魔族でも辿り着けない、ネフィリムだけが至ることのできる最強の形態。

「――『聖魔竜王剣』」

 僕の背後に、巨大な『聖魔竜』の幻影が重なって吠える。

 その凄まじいプレッシャーに、空中の死甲虫機が本能的な『死の恐怖』を感じ取って身をよじった。

 だが、遅い。

「これで終わりだ」

 僕は、融合した光と闇の極太の刃を、上段から一気に振り下ろした。

「――【イクリプス・スラッシュ】!!」

 ズバァァァァァァァァァンッ!!!!

 白と黒の巨大な刃が、空間そのものを断ち切るように空を走った。

 死甲虫機の誇る黒曜石以上の硬度を持つ重装甲が、まるで温かいナイフで切られたバターのように、音もなく、抵抗すら許されずに真っ二つに両断される。

「ギ……シ……ッ」

 死甲虫機は、断末魔の悲鳴すら上げることなく。

 空中でパカリと二つに割れ、その断面から光と闇の炎が吹き出し、塵一つ残さずに完全に消滅してしまった。

 後には、ポポロ村の澄み切った青空だけが残されている。

 ――スタッ。

 僕は静かに畑に着地し、二振りの剣をクルリと回して、背中の鞘へと納めた。

 シャラァン……という清らかな金属音だけが、静寂に包まれた畑に響く。

「……終わったね」

「ふぅ〜っ、なんとかなったね、キッド君!」

 僕が振り返ると、キャルルさんが額の汗を拭いながら、満面の笑みで駆け寄ってきた。

 被害は、死甲虫機が飛び出してきた時の一部だけで、村の大部分の畑は無傷で守り抜くことができた。

「キャルルさんの蹴り、最高だったよ。あれがなかったら、畑がもっとぐちゃぐちゃになってた」

「えへへ、キッド君の剣だって凄かったよ! 空中であんな綺麗に真っ二つにするなんて、やっぱり私の見込んだ用心棒だね!」

 僕たちはハイタッチを交わし、互いの健闘を讃え合った。

 一方、その光景を泥だらけの畑に座り込んで見ていた二人の最高位の女神たちは。

 完全に魂が抜けたような顔で、口をパクパクとさせていた。

「……か、カグヤ……今のアレ、見た……?」

「ええ、ルチアナ……。Sランクの古代兵器が……農家スタイル(安全靴)のウサギのカチ上げと、ネフィリムの少年の魔法剣で、秒殺されたわ……」

 神界のトップである彼女たちでさえ、二人の見せた規格外の連携と圧倒的な火力には、戦慄を覚えるしかなかった。

「……あの二人、絶対に敵に回しちゃ駄目ね」

「同感よ。下界、怖すぎるわ……」

 ルチアナとカグヤは、泥だらけの顔を見合わせ、ガタガタと震えながら深く頷き合った。

 こうして、ポポロ村の平和を脅かした古代の厄災は、新村長と万能の少年の共闘によって、見事に(そしてあっさりと)粉砕されたのであった。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

ついに炸裂した、キャルルの『月影流・顎砕き』と、キッドの『イクリプス・スラッシュ』の超絶コンボ!

Sランクの古代兵器すら、この二人の前では完全な噛ませ犬(虫)でした!

(タローマンの特注安全靴、頑丈すぎますね笑)

その圧倒的な理不尽パワーを目の当たりにし、すっかり心が折れてしまった世界神ルチアナと月の女神カグヤ。

いよいよ次回、第2章の最終話です!

戦いを終えたポポロ村での月下の宴会と、神様たちのまさかの「ヒモニート宣言」が飛び出します!

もし「コンボ技熱すぎる!」「キャルル強くて可愛い!」「神様ドン引きww」と少しでも楽しんでいただけましたら、

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ブックマーク登録もぜひよろしくお願いします!

(皆さんの応援がランキングを駆け上がる力になります!)

次回『第10話:月下の宴と、ヒモニート宣言』

お楽しみに!

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