表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/27

本物と偽物(チートとメッキ)

本物と偽物チートとメッキ

「……ふざけやがって。証拠もないのに、勇者である俺を愚弄するのか!」

 ポポロ村の西門へと続く丘の上。

 自作自演のマッチポンプを見破られた金髪の勇者ゼロス・ディバインは、顔を真っ赤にして剣を抜いた。

『やっちまえゼロス! シナリオ変更だ! 「悪しきネフィリムにそそのかされた盗賊を討伐しようとしたが、逆にネフィリムが本性を現して襲いかかってきた」って筋書きにする! そいつを殺して悲劇のヒーローを演じきれ!!』

 神界から配信を見守る炎上神ワイズの狂った指示が、ゼロスの脳内に直接響く。

 ゼロスはニヤァッと下劣な笑みを浮かべ、自身のユニークスキル【マネー】を限界まで解放した。ワイズから供給された莫大な神力(資金)が、強制的に彼のステータスを跳ね上げていく。

「オオオォォォォォッ!!」

 ゼロスの全身から、眩い黄金の闘気が間欠泉のように噴き出した。

 風が巻き起こり、周囲の小石が宙に浮く。見た目だけは、まさに伝説の英雄と呼ぶにふさわしい圧倒的なオーラだ。

「見たかガキ! これが選ばれし勇者の力だ! 俺のステータスは今、限界を突破している! お前のような不吉な交雑種など、一撃で消し飛ばしてやる!」

 黄金の闘気を纏ったゼロスが、大上段に剣を構え、地面を蹴った。

 ドゴッ、と土を抉る音と共に、目にも留まらぬ速度でキッドへと迫る。

「死ねェッ! 『シャイニング・メテオ・ストライク』!!」

 大層な名前を叫びながら、ゼロスの剣が振り下ろされる。

 その太刀筋は、確かに速く、重い。当たれば岩をも砕く威力が込められている。

 だが。

 キッドは、双剣を鞘から抜くことすらしなかった。

「……遅いし、雑だね」

 キッドが、わずかに体を半歩だけズラす。

 ゼロスの渾身の一撃は、キッドの白いパーカーの端をかすめることすらできず、虚しく空を斬り、地面に巨大なクレーターを穿っただけだった。

「なっ……!?」

「威力を上げるために大振りになりすぎている。それに、足腰の重心が全く安定していない。その剣、今日初めて振ったの?」

 キッドの冷ややかな指摘に、ゼロスは血上り、「黙れェッ!」と連続で斬撃を放つ。

 右、左、袈裟斬り、突き。

 黄金の闘気が嵐のように吹き荒れるが、キッドは両腕をだらりと下げたまま、首を傾け、肩を引き、ステップを踏むだけで、そのすべての攻撃をミリ単位で回避し続けていた。

 キッドの目には、ゼロスの動きがまるで『素人のコマ送り』のように見えていた。

 ゼロスのステータスは確かに高い。だが、それは神の力(金)で強引に引き上げられただけの『メッキ』だ。

 肉体が、その規格外の速度とパワーにまったくついていっていない。剣を振るたびに姿勢が崩れ、筋肉が悲鳴を上げ、関節が無理な負担に軋んでいる。

「ゼェ……ハァ……ッ! ちょこまかと……逃げるなァッ!」

「逃げてないよ。君の剣が、僕に届く軌道を描いていないだけだ」

 キッドは、息一つ乱していない。

 ゼロスが大振りの突きを放ってきた瞬間。キッドはそれを避けるだけでなく、スッと前へ踏み込み、ゼロスの懐に完全に入り込んだ。

義母かあさんから教わったんだ。強すぎる力は、器が伴わなければただの自滅にしかならないって」

 キッドの手が、鞘に収まったままの『ノワール』の柄を握る。

 そして、流れるような動作で、ゼロスの剣を持つ手首を、鞘の先端でトンッ、と軽く叩いた。

「ガァッ!?」

 たったそれだけ。

 だが、キッドの極限まで洗練された『闘気』と、合気道の『理合りあい』が込められたその一撃は、ゼロスの腕の神経を完全に麻痺させた。

 ゼロスの手から剣がこぼれ落ち、黄金の闘気が一瞬にしてブレる。

「お前、自動車学校に通わないで、フェラーリを運転してどうするんだ?」

 キッドの静かな声が、ゼロスの耳元で響いた。

「レベル1のお前が、金で買ったレベル100のステータスを操作できるわけないだろ。一体お前は、その見掛け倒しの装備と金を全部剥がしたら、何が残るんだ?」

「あ、が……ッ」

 図星を突かれ、ゼロスの顔が恐怖と屈辱で歪む。

「君の剣には、誰かを守りたいっていう『覚悟』が微塵もない。そんな薄っぺらい力じゃ、僕の日常には傷一つつけられないよ」

 キッドが、鞘のままの双剣を交差させ、ゼロスの鳩尾みぞおちに押し当てた。

 そして、ほんのわずかだけ、ネフィリムの魔力を解放する。

「――寝てて」

 ドォォォォンッ!!

 凄まじい衝撃波がゼロスの背中側へと突き抜け、彼の纏っていた黄金の闘気がガラスのように粉々に砕け散った。

 ゼロスは白目を剥き、胃液を吐き出しながら、無様なカエルのように地面を転がっていく。

 その衝撃で、彼が履いていた分厚いシークレットブーツが両方ともすっぽ抜け、宙を舞ってポトリと落ちた。

 勝負は、一瞬だった。

 本物の『チート』の前に、金で買っただけの『メッキ』が完全に剥がれ落ちた瞬間だった。

 ――チーン。

 神界のサーバルーム。

 炎上神ワイズの目の前のモニターには、哀れな姿で気絶した契約勇者ゼロスの姿と、それを見下ろすキッドの姿が映し出されていた。

「バ、バカな……! 俺の神力を限界まで注ぎ込んだ勇者が、剣すら抜いていないガキに、手も足も出ずに負けただと……!?」

 ワイズのチャンネルのコメント欄は、完全に大炎上状態に陥っていた。

『は? なんだこのクソダサい勇者www』

『シークレットブーツwww しかも金でステータス買ってただけかよwww』

『自作自演で村を襲わせて、挙句の果てにボコられるとか、過去最高にダサい配信だな!』

 ワイズが必死に画面を操作しようとするが、彼のアカウントには『運営(ゴッドチューブ本部)』からの警告メッセージが点滅し始めていた。

 一方、別のチャンネル――世界神ルチアナと魔王ラスティアの配信では。

「ギャハハハハハ!! 見た!? 今のワイズの所の勇者の顔!!」

「最高すぎるわキッド君!! 本物の力ってやつを分からせてやったわね!! うおおおスパチャが止まらないわぁぁ!!」

 神々が腹を抱えて大爆笑し、キッドへの絶賛とスーパーチャットの嵐が吹き荒れていた。

 ――そして、地上。

 西門の丘で、静かにため息をついたキッドの背後から、コツン、コツンとヒールの足音が近づいてきた。

「……まったく。夕飯の前に、こんな薄汚い真似をしてくれたのは、どこのどいつかしら」

 夕闇の中、完璧な黒のパンツスーツに身を包み、金製の煙管キセルを手にした桜田リベラが、三頭犬のアモンを連れて現れた。

義母かあさん」

「怪我はないわね、キッド」

「うん。でも、村を襲わせたのはこの金髪の人みたいだ」

 リベラは気絶しているゼロスを一瞥し、そして周囲に転がっている盗賊たちを見渡した。

 彼女の瞳の奥で、修羅の炎が静かに、だが激しく燃え上がっている。

「……不法侵入、器物損壊未遂、威力業務妨害、そして強盗殺人未遂の教唆。さらに、悪質な『やらせ』による詐欺行為」

 リベラはバッグから、分厚い『六法全書』と、請求書を挟んだバインダーを取り出した。

「さあて、薄っぺらい偽物の勇者さん。目を覚ましなさい。ウチの可愛い息子と、ポポロ村の平和を脅かした『代償』を……法廷と物理の両方で、骨の髄までたっぷり払わせちゃるけえな」

 偽勇者ゼロスを待ち受けていたのは、神界での大炎上よりも恐ろしい、最恐のオカンによる『地獄の取り立て(コンサルティング)』だった。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!

イキり散らかしていた偽勇者ゼロスを、剣すら抜かずに圧倒的な実力差でボコボコにしたキッド!

「自動車学校に通わないでフェラーリを〜」のセリフがブッ刺さりましたね!

炎上神ワイズの卑劣なシナリオも完全に崩壊し、ざまぁ展開も最高潮です!

そして最後に到着したリベラ母さん。悪党にとって、キッドに殴られるよりも、リベラ母さんに「合法的に詰められる」方が絶対に恐ろしいはずです(笑)

もし「スカッとした!」「ゼロスださすぎww」「リベラ母さんの説教タイムが楽しみ!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページの一番下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

ブックマーク登録もぜひよろしくお願いします!

(皆さんの応援がランキングを駆け上がる力になります!)

次回『オロチ会長の土下座アゲイン

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ