まあ、いいか
「……もうこんな時間か。」
ぽつりと呟く。
時計は、もう日付が変わりそうな時間を指していた。
机の上には、書き上げた紙。
鉛筆の粉が、少しだけ散っている。
肩を回すと音が鳴る。
「まあ、手書きにしては、きれいに出来たんじゃないか?」
小さく言って、紙を揃える。
明日、貼る。
それだけ決めると、余計なことは考えなかった。
スマホを手に取る。
画面をつける。
右上。
小さな数字が目に入る。
『84%』
じっと見る。
朝は満タンだった。
そこから、画像を作って、文章を考えて、書き直して。
それで、この数字。
「……減るな。」
思っていたよりも、随分と減る。
ここは昭和だ、充電する術もない。
「……まあ、いいか。」
結論は、それだった。
まだ使えるなら、それで十分だ。
画面を消す。
部屋が暗くなる。
布団に入る。
天井はもう見えない。
目を閉じる。
ガタン、ガタン。
遠くの機械の音が、変わらず続いている。
そのまま、ゆっくりと眠りに落ちた。
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目が覚めた。
ぼんやりとした意識のまま、体を起こす。
天井が白い、いつもの朝だった。
あくびをひとつして、手を伸ばす。
枕元のスマホをつかむ。
なんとなく、画面をつける。
右上。
小さな数字が、目に入る。
『100%』
一瞬、止まる。
「……あれ?」
昨日は、確か——
『84%』
そこまで減っていたはずだ。
使った分だけ、減っていた。
それは覚えている。
なのに。
今は、満タン。
しばらく、じっと見つめる。
「……まあ、いいか。」
理由は分からない。
だが、ほんの少しだけ、得をした気分だった。




