ねこはいます
布団をたたみ終えて、しばらく座ったまま考えていた。
目の前には、さっき作った猫の画像。
スマホの画面の中で、相変わらずやたらと可愛い顔をしている。
「……売れる、とは言ったけど、」
腕を組む。
「どうやって売るんだ?」
真顔で、しばらく考える。
「……思いつかんな。」
あっさり諦めた。
そもそも、この時代にはインターネットがない。
スマホもSNSもない。
画像を作っても、見せる場所がなかった。
「紙か……」
ぽつりと呟く。
紙にするしかない。
それは分かるが……
「プリンター、ねぇしなぁ。」
部屋を見回す。
六畳。
机。
布団。
当たり前だが、文明の利器は何もない。
「……会社にあるか?」
ふと思いつくが、すぐに首を横に振る。
「いや、ないな。」
金属部品工場だ。
ネジとか、金具とか、そういうものを作る場所。
猫の絵を印刷する機械なんて、あるはずがない。
「詰んだか?」
思わず口に出る。
「いや、待て!」
手を叩く。
「写真屋!」
その言葉が、すっと出てくる。
昔は、写真を現像する店が町にあった。
フィルムを持っていくと、写真にしてくれる場所、つまり。
「これも、紙にしてくれるんじゃないか?」
かなり雑な理屈だった。
でも、他に手はない。
スマホを見つめる。
猫はまだ、そこにいる。
「……よし!」
立ち上がる。
そのとき、腹が鳴った。
ぐぅ。
思ったより大きな音だった。
「……腹が減っては戦はできぬ、か。」
時計を見る。
朝の六時半。
出勤までには、少し時間がある。
「食堂、行くか。」
最近支給されたばかりの、少し硬い生地の作業着に袖を通して、ぼそりと言った。
「今日から、忙しくなるぞ。」
その言葉とは裏腹に、口元は楽しそうに笑っていた。




