KAWAIIネコ!!
畳の上にあぐらをかき、もう一度、部屋を見回す。
六畳。
古い壁。
裸電球。
窓の外から聞こえる、ガタン、ガタンという機械の音。
「……昭和かぁ。」
声に出して言ってみる。
やっぱり、昭和だった。
テレビでしか見たことがない時代。
インターネットもない。
スマホもない。
コンビニも、まだ少ない。
だが、未来の記憶がある。
前の人生のことも、昨日までのことも、全部。
そして何より。
「AI、あるんだよな。」
しみじみと呟いてから、親指で画面を軽く触れる。
『残りバッテリー:100%』
「よし!」
なぜか、ちょっと嬉しい。
日向は、深呼吸をひとつした。
「……とりあえず、」
少し考えて、言った。
「触ってみるか。」
まるで新品のおもちゃを前にした子どもみたいに、少しだけワクワクしていた。
画面には、見慣れない項目が並んでいる。
『文章生成』
『画像生成』
『相談』
「おお……」
思わず声が出た。
「なんか増えてる。」
日向は、指で画面をなぞる。
少しだけ緊張している。
「えーと……」
指が止まった。
『画像生成』
そこを、ぽん、と押す。
一瞬、画面が暗くなり、
次の瞬間、文字が表示された。
『作りたいものを入力してください』
日向は固まった。
「……何作ればいいんだ?」
真顔で呟き、しばらく考える。
三秒、五秒、十秒。
「……猫でいいか。」
ものすごく無難だった。
指で、ゆっくりと文字を打つ。
『ねこ』
入力してから、少し考える。
「……これでいい、のか?」
自分でもよく分かっていない。
でも、とりあえず。
画面の『生成』を押した。
その瞬間。
スマホが、ほんのり温かくなる。
画面の右上の端に、小さく表示されている100%の表記が変わる。
『90%』
「減った!?」
思わず声が出た。
10%も減っている。
「え、ちょっと待て!」
焦って確認しようとする。
だが、その前に、画像が表示された。
そこには――
ものすごく可愛い猫がいた。
ふわふわで、丸くて、
やたらと整った顔をしている。
背景も、やけにきれいだ。
「……すげぇな。」
正直な感想だった。
日向は、しばらくその画像を見つめ、そして。
「……これ、」
ぽつりと呟く。
「売れるんじゃないか?」
自分でも驚くほど、自然に出てきた言葉だった。
頭がいいわけじゃない。
計画があるわけでもない。
でも、なんとなく分かる。
これ、普通じゃない。
この時代には、絶対にない。
日向は、もう一度画面を見る。
猫、完璧な猫。
そして、右上の数字。
『90%』
「……」
しばらく黙る。
それから、真顔で言った。
「無駄撃ちは、やめようか!」
ものすごく現実的だった。
とてもシンプルだった。




