第六章 王太子の求婚
改革は徐々に進んでいった。
王太子ジェームズは、当初は疑っていたが私の行動に次第に敬意を抱くようになる。
王城の庭の、ある夜の事。
「ヴァルミナ……君は本当に変わったな」
「そうですか?」
ゲームでのヴァルミナは王太子を独占したくてヒロインのヴィヴィアンを陥れ、すべてを壊した。
でも、今ならわかる。
「私はただ……愛は奪って得られるものじゃない。与えて、初めて返ってくるものだと、知っているだけです」
私の言葉にジェームズは驚いたように目を見開いた。
「……君は、本当にあのヴァルミナなのか?」
「はい」
もう悪役令嬢じゃないけど。
彼は静かに微笑む。
「君がいなければこの国は崩れていたかもしれない。君の知恵、勇気、そして──優しさ。私は……君に惹かれた」
そう言って、ジェームズは私に向かって膝をついた。
「ヴァルミナ・デルフィア・グラックフォール。君とこの国を共に築いていきたい。私と結婚してくれないか?」
ヴィヴィアンは嬉しそうに涙ぐみながらも微笑んでうなずき、ルカスは遠くで軽く頭を下げた。
一瞬驚いた私だったけれど、涙を浮かべながらうなずいて見せる。
「はい。お受けします、ジェームズ様」