第四章 反乱の火蓋
国は徐々に不安定になっていた。
農民の不満、貴族間の争い、そして隣国との緊張。
ついに──反乱が起きる。
「王都に反乱軍が侵攻! 王城を狙っている!」
王太子ジェームズは慌てて軍を指揮しようとするが、貴族たちは足並みが揃わない。
「お待ちくださいジェームズ様!」
私は王城の議事堂に立ち、声を上げた。
「無謀な出撃は混乱を招くだけです。反乱軍の背後には他国の影があります。そして彼らの目的は王城ではなく──王太子殿下のお命です」
「……どういう事だ」
「罠です。あなたが前線に出れば刺客が襲いかかる。そして国は混乱し、権力の空白が生まれる。それを狙っているのです」
「ならば、どうすれば……」
「私が行きます」
「何?」
「グラックフォール家の令嬢として、反乱軍の指導者と交渉します。魔法の力で鎮圧も可能です。それが民の心をつかむ鍵です」
周囲の貴族たちがざわつく。
「平民に味方する令嬢が、反乱軍と手を組むつもりか?」
「違います。私はこの国を守るために動くのです」
私は誠意が伝わる事を願って、王太子を真っ直ぐに見つめた。
「信じていただけませんか?」
彼は長い間私の目を見つめ返す。
そして、一つうなずいた。
「……任せる。ヴァルミナ・デルフィア・グラックフォール」