壊れた家と、温かなスープ
――ぽたり。
冷たい雨粒が、私の鼻先に落ちてきた。
「……え?」
思わず空を見上げる。
灰色の雲が、ルクシアの村を覆っていた。
昨日まではあんなに晴れていたのに、今日は朝からどんよりとした空模様だ。
私は、手にしていた書類を慌てて胸元へ抱えた。
「……降ってきましたね」
隣にいたマリアが、心配そうに空を見上げる。
「ええ。思ったより早かったわ」
昨日の集会で、屋根の修理を頼まれた。
雨漏りがひどく、家族が夜も満足に眠れないという。
今日は、その家を見に行く約束をしていたのだ。
……この雨では、少し急いだ方がよさそうね。
私は、広場の向こうに目を向けた。
そこには、腕を組んだガルド様と、黒髪の青年が立っている。
「……おい。だから言っただろうが」
ガルド様が、険しい声で言った。
「雨が来る前に、さっさと屋根を直しておくべきだったんだ」
「昨日の段階では、材料が足りなかったんだろう」
レオン様が、落ち着いた声で答える。
「無理に作業を始めても、危険なだけだ」
「……ちっ」
ガルド様は、舌打ちした。
けれど、反論はしなかった。
私は、二人へ近づいた。
「おはようございます」
「……おう」
「おはよう、エリシア」
レオン様が、柔らかく微笑んだ。
その笑顔を見て、私は少しだけ安心する。
「……それで」
ガルド様が、私を見た。
「本当に行くのか?」
「はい」
「雨が降りそうだぞ」
「ええ。ですから、なおさら早く様子を確かめたいのです」
ガルド様は、深いため息をついた。
「……ったく。物好きな領主様だ」
私は、小さく笑った。
「そうかもしれません」
「褒めてねえぞ」
「……あら」
思わず、レオン様と顔を見合わせる。
彼は、少しだけ口元を緩めていた。
……何だか。
この村へ来てから、笑うことが増えた気がする。
◇ ◇ ◇
案内された家は、村の北側にあった。
古い木造の建物。
壁には大きな亀裂が走り、屋根の一部が崩れかけている。
雨樋は外れ、窓枠も歪んでいた。
……これは。
想像していた以上に、ひどい状態だ。
「……お嬢様」
マリアが、小さく声をかける。
「かなり危なそうですね」
「……ええ」
私は、ゆっくりと頷いた。
そのとき。
「……あの」
家の扉が、静かに開いた。
中から姿を現したのは、一人の老人だった。
白髪交じりの髪。
痩せた身体。
けれど、その目には、どこか穏やかな光が宿っている。
「……領主様、でしょうか?」
「はい。エリシア・フォン・アルベルトと申します」
私は、軽く頭を下げた。
「昨日、お話を伺いました。屋根の状態を見せていただきたくて」
「……ああ」
老人は、少しだけ目を見開いた。
「本当に、来てくださったんですか」
「……え?」
「いや……」
老人は、困ったように笑った。
「貴族のお方が、こんな家まで来てくださるとは思わなかったもので……」
私は、胸が少し痛くなった。
……まただ。
この土地の人たちは。
誰かに助けを求めることさえ、申し訳なさそうにする。
「……お名前を、伺ってもよろしいですか?」
「トビアスと申します」
「トビアスさんですね」
「はい」
私は、微笑んだ。
「では、まずはお家の中を見せていただけますか?」
「……もちろんです」
トビアスさんは、慌てて扉を大きく開けた。
◇ ◇ ◇
家の中は、薄暗かった。
古い家具。
使い込まれた食器。
壁には、小さな刺繍が飾られている。
決して豊かな暮らしではない。
けれど。
どこか、温かい。
そんな印象を受けた。
「……あなた」
奥から、女性の声が聞こえた。
「お客様?」
「ああ。新しい領主様だ」
「……まあ!」
奥の部屋から、小柄な老婦人が姿を現した。
銀色の髪を後ろでまとめ、古い前掛けを身につけている。
「こんなところまで、ようこそ……」
老婦人は、慌てて頭を下げた。
「どうぞ、こちらへ……」
「ありがとうございます」
私は、微笑んだ。
「今日は、お家の修理についてご相談に来ました」
「……修理、ですか?」
「はい」
すると、老婦人は少しだけ目を伏せた。
「……ありがとうございます。でも……」
「……でも?」
「もう、この家も長くはもたないかもしれません」
その声には、諦めが滲んでいた。
「雨が降るたびに屋根が傷んで……去年の冬には、寝室まで水が入ってきたんです」
「……そうなのですね」
「何度も直そうとしたんですけれど……木材も足りませんし、主人も昔ほど力が出なくなって……」
トビアスさんが、申し訳なさそうに笑った。
「……情けない話です」
「そんなことはありません」
私は、思わず首を横に振った。
「長い間、このお家を守ってこられたのでしょう?」
「…………」
「それは、とても大変なことだと思います」
老夫婦は、顔を見合わせた。
そして。
「……ありがとうございます」
老婦人が、静かに微笑んだ。
その笑顔を見て、私は胸の奥が温かくなるのを感じた。
◇ ◇ ◇
「……さて」
私は、部屋の中央へ進んだ。
天井を見上げる。
木の梁には、大きな亀裂が走っていた。
屋根板の一部は腐食し、雨水が染み込んだ跡もある。
……なるほど。
これは、表面だけを直しても駄目だわ。
私は、そっと右手を伸ばした。
淡い銀色の魔法紋が、手のひらに浮かぶ。
「……《修復》」
小さく呟く。
けれど、すぐには魔力を流さない。
まずは、壊れた部分を調べる。
木材の状態。
梁の歪み。
屋根板の損傷。
そして、建物全体の構造。
私は、慎重に魔力を巡らせた。
すると。
「……あら」
思わず声が漏れた。
「……どうした?」
レオン様が、すぐに尋ねる。
「……思っていたより、傷んでいます」
「……どのくらいだ?」
「屋根板だけではありません。支えになっている梁の一部も、かなり弱くなっています」
私は、天井を指さした。
「このまま屋根だけ直しても、次の大雨で別の場所が崩れてしまうかもしれません」
「……なるほど」
レオン様は、静かに頷いた。
ガルド様も、険しい表情で天井を見上げる。
「……やっぱりか」
「……ご存じでしたか?」
「ああ。去年から気になってたんだ」
ガルド様は、苦々しげに言った。
「だが、直すための木材が足りねえ」
私は、少し考えた。
……木材。
修復魔法は、失われた材料を無から生み出すことはできない。
腐って崩れた部分は、元の形に戻せないこともある。
それなら。
「……ガルド様」
「何だ?」
「村に、使っていない建物はありませんか?」
ガルド様が、眉をひそめた。
「……使ってねえ建物?」
「はい。もし古い木材が残っていれば、使える部分を再利用できるかもしれません」
すると。
ガルド様は、少しだけ考えた。
「……ああ」
そして、頷いた。
「昔の倉庫がある。もう何年も使ってねえが……」
「……まあ!」
私は、思わず顔を輝かせた。
「そこを、見せていただけませんか?」
◇ ◇ ◇
村の外れにある古い倉庫。
そこには、使われなくなった木材や道具が積み重ねられていた。
腐っているもの。
割れているもの。
虫に食われたもの。
けれど。
中には、まだ使えそうなものもある。
「……これなら」
私は、一本の木材を手に取った。
表面は傷んでいるけれど、芯の部分はしっかりしている。
「……使えるかもしれません」
ガルド様が、驚いたように目を見開いた。
「……そんな古い木で、大丈夫なのか?」
「状態を確認して、使える部分だけ選びます」
私は、微笑んだ。
「必要なら、修復できる部分もありますから」
すると。
「……おい」
ガルド様が、後ろにいた村人たちへ声をかけた。
「使えそうな木材を運ぶぞ!」
「……え?」
村人たちが、顔を見合わせる。
「村長、本当にやるのか?」
「当たり前だ!」
ガルド様は、怒鳴った。
「このままじゃ、あの家が潰れちまうだろうが!」
私は、思わず笑ってしまった。
……ふふ。
ガルド様は、やっぱり優しい人なのね。
口では厳しいことをおっしゃるけれど。
困っている人を、放っておけない人なのだ。
◇ ◇ ◇
それから、修理作業が始まった。
村人たちは、木材を運ぶ。
ガルド様は、屋根の状態を確認する。
レオン様は、危険な場所に近づかないよう周囲を見ながら、作業を手伝ってくださった。
そして私は。
使える木材を選び、傷んだ部分を修復していく。
「……《修復》」
淡い銀色の光が、木材を包み込む。
細かな亀裂が、少しずつ閉じていく。
けれど、腐ってしまった部分は元には戻らない。
そこは切り落とし、別の木材と組み合わせる必要があった。
……やっぱり。
魔法だけでは、すべてを直すことはできない。
けれど。
誰かが手伝ってくれれば。
少しずつ、できることが増えていく。
「……お嬢様!」
マリアが、慌てて駆け寄ってきた。
「少し、お休みください!」
「……え?」
「朝から、ずっと動いていらっしゃいます!」
「……でも、まだ……」
「お嬢様!」
私は、思わず口を閉じた。
……はい。
分かっております。
私は、小さく頷いた。
「……少しだけ、休みます」
すると。
マリアが、満足そうに微笑んだ。
「はい。それがよろしいです」
私は、近くの椅子に腰を下ろした。
そして、温かいお茶を一口。
……ああ。
美味しい。
疲れた身体に、じんわりと温かさが広がっていく。
そのとき。
「……エリシア」
レオン様が、隣に腰を下ろした。
「……はい?」
「少し、疲れたか?」
「……ええ」
私は、正直に答えた。
「でも、大丈夫です」
レオン様は、私をじっと見つめた。
「……本当に?」
「……はい」
私は、小さく笑った。
「今日は、ちゃんと休みながら作業していますから」
すると。
レオン様は、少しだけ安心したように微笑んだ。
「……それなら、よかった」
私は、胸の奥が温かくなった。
……不思議。
誰かに心配されることが、こんなにも嬉しいなんて。
◇ ◇ ◇
午後になると、作業はさらに進んだ。
古い梁の一部を取り外し、新しい木材を組み込む。
屋根板を交換し、隙間を埋める。
壊れた雨樋も、使える部品を集めて修理した。
そして。
「……よし!」
ガルド様が、大きな声を上げた。
「これで、ひとまず完成だ!」
私は、思わず顔を上げた。
屋根は、朝とは見違えるようになっていた。
新しい木材と、修復した古い木材。
それらが、しっかりと組み合わされている。
もちろん、完璧ではない。
後で、もっと丈夫な材料を使って補強する必要がある。
けれど。
少なくとも、今夜の雨をしのぐことはできそうだった。
「……すごい」
私は、思わず呟いた。
たった半日で。
こんなにも、変わるなんて。
そのとき。
ぽたり。
冷たい雨粒が、頬に落ちた。
「……あ」
私は、空を見上げた。
灰色の雲が、さらに厚くなっている。
そして。
ざああああっ!
突然、雨が強く降り始めた。
「……っ!」
村人たちが、慌てて屋根の下へ駆け込む。
私も、レオン様に手を引かれて家の中へ入った。
「……大丈夫か?」
「は、はい!」
私は、息を整えた。
そして。
天井を見上げた。
……雨漏りは?
しばらく待つ。
一分。
二分。
三分。
けれど。
どこからも、水は落ちてこなかった。
「……あら」
私は、思わず目を丸くした。
雨音は、確かに聞こえる。
屋根を叩く、大きな音。
けれど。
室内には、一滴も水が落ちてこない。
「……直った」
トビアスさんが、震える声で呟いた。
「……本当に、直ったのか……」
老婦人が、ゆっくりと天井を見上げる。
その目に、涙が浮かんでいた。
「……あなた」
「ああ……」
「……もう、雨が降っても……」
そこで、言葉が詰まる。
トビアスさんは、妻の手を握った。
「……ああ」
そして、静かに頷いた。
「もう、寝台を濡らさずに済むな」
私は、胸の奥が熱くなるのを感じた。
……よかった。
本当に、よかった。
◇ ◇ ◇
「……皆様」
そのとき。
老婦人が、ゆっくりとこちらへ向き直った。
「今日は、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる。
私は、慌てて首を横に振った。
「そんな……! 皆様で直したのですから!」
「……それでも」
老婦人は、微笑んだ。
「領主様が来てくださらなかったら、きっと、この家はこのままでした」
「…………」
「だから……ありがとうございます」
その言葉に。
私は、何も言えなくなった。
ありがとう。
何度も聞いたはずなのに。
どうしてだろう。
ここで言われる感謝の言葉は、いつも胸の奥まで届く。
……嬉しい。
ただ、それだけだった。
◇ ◇ ◇
「……あの」
しばらくして。
老婦人が、少し恥ずかしそうに口を開いた。
「もしよろしければ……」
「……はい?」
「夕食を、一緒に召し上がりませんか?」
私は、思わず目を瞬かせた。
「……夕食、ですか?」
「はい」
老婦人は、優しく微笑んだ。
「大したものはありませんけれど……温かいスープなら、お出しできます」
私は、少しだけ考えた。
……夕食。
そういえば。
王宮にいた頃は、誰かとゆっくり食事をすることなんて、ほとんどなかった。
いつも仕事に追われて。
冷めた料理を、一人で食べることが多かった。
けれど。
今は。
「……ぜひ」
私は、微笑んだ。
「ご一緒させてください」
老婦人の顔が、ぱっと明るくなった。
「まあ! 嬉しいです!」
その笑顔を見て、私も嬉しくなった。
◇ ◇ ◇
夕方。
雨音が静かに響く家の中で、私たちは食卓を囲んでいた。
机の上には、大きな鍋。
その中には、野菜と豆を煮込んだ温かなスープが入っている。
それから、少し固めのパン。
決して豪華な食事ではない。
けれど。
とても、美味しそうだった。
「……いただきます」
私は、そっとスプーンを手に取った。
一口。
温かなスープが、口の中に広がる。
野菜の優しい甘さ。
豆の柔らかな食感。
そして、ほんの少しの塩味。
「……美味しい」
思わず、声が漏れた。
老婦人が、嬉しそうに笑った。
「まあ。お口に合いましたか?」
「はい!」
私は、思わず大きく頷いた。
「とても、美味しいです!」
その言葉に、老婦人の目が細められる。
「よかった……」
私は、もう一口スープを飲んだ。
……ああ。
何だか。
とても、幸せ。
王宮の豪華な晩餐会よりも。
高価な食器に並ぶ料理よりも。
今、この小さな家で食べるスープの方が。
ずっと、温かい。
◇ ◇ ◇
「……エリシア」
隣から、レオン様の声がした。
「……はい?」
「美味しそうに食べるな」
「……っ!」
私は、思わず顔を上げた。
レオン様は、少しだけ笑っている。
「……そ、そんなに分かりますか?」
「ああ」
彼は、穏やかに頷いた。
「見ているこちらまで、嬉しくなる」
「…………」
私は、急に頬が熱くなってしまった。
……もう。
この人は。
どうして、そんなことを普通に言うのだろう。
「……レオン様も、召し上がってください」
私は、慌てて話題を変えた。
すると。
「……ああ」
レオン様は、小さく笑った。
……絶対に、気づかれている。
私は、少しだけ恥ずかしくなりながら、もう一口スープを飲んだ。
◇ ◇ ◇
食事が終わる頃。
トビアスさんが、ぽつりと呟いた。
「……今日は、いい日だったな」
老婦人が、静かに頷く。
「ええ。本当に」
「……久しぶりだ」
トビアスさんは、天井を見上げた。
「雨が降ってるのに、怖くねえなんて」
「…………」
「いつもは、雨音が聞こえるたびに、どこから水が落ちてくるか気になって眠れなかったんだ」
その声には、長い年月の疲れが滲んでいた。
けれど。
今は。
穏やかな笑顔が浮かんでいる。
「……今夜は、よく眠れそうだ」
その言葉に。
私は、胸が熱くなるのを感じた。
……眠る。
ただ、それだけのこと。
けれど。
安心して眠れる場所がある。
雨を怖がらずに過ごせる家がある。
それは。
とても、大切なことなのだ。
私は、静かに微笑んだ。
「……よかったです」
すると。
老婦人が、私を見つめた。
「……領主様」
「……はい?」
「この家を直してくださって、本当にありがとうございました」
私は、首を横に振った。
「皆様のおかげです」
「……それでも」
老婦人は、優しく笑った。
「あなたが、ここへ来てくださってよかった」
「…………」
私は、息を呑んだ。
……来て、よかった。
その言葉が。
どうしようもなく、嬉しかった。
◇ ◇ ◇
帰り道。
雨は、すっかり弱くなっていた。
濡れた石畳が、月明かりを受けて淡く輝いている。
私は、レオン様と並んで歩いていた。
マリアとガルド様は、少し先を歩いている。
「……エリシア」
レオン様が、静かに声をかけた。
「……はい?」
「今日は、どうだった?」
私は、少し考えた。
朝から、たくさんのことがあった。
壊れた屋根。
村人たちとの作業。
そして、温かなスープ。
……どれも。
大切な時間だった。
「……とても、幸せでした」
私は、素直に答えた。
すると。
レオン様が、少しだけ目を見開いた。
「……幸せ?」
「はい」
私は、微笑んだ。
「誰かのお役に立てたことも嬉しかったですけれど……」
そこで、少しだけ言葉を切る。
「……皆様と一緒に、食事をできたことが」
私は、静かに続けた。
「とても、嬉しかったんです」
レオン様は、しばらく黙っていた。
それから。
「……そうか」
優しく、微笑んだ。
「それは、よかった」
私は、胸の奥が温かくなった。
……この人は。
私が何かを直したことよりも。
私が幸せだったことを、喜んでくれる。
そのことが。
今は、どうしようもなく嬉しかった。
◇ ◇ ◇
小さな屋敷へ戻ると、マリアが温かいお茶を用意してくれた。
「お嬢様。今日は、早めにお休みくださいね」
「……ええ」
私は、素直に頷いた。
「今日は、よく眠れそうだわ」
すると。
マリアが、嬉しそうに笑った。
「それは、何よりです」
私は、そっと窓の外を見た。
雨は、もう止んでいる。
遠くには、明かりの灯った家々。
その一つに。
今日、直したばかりの家がある。
きっと、今頃。
トビアスさんと奥様は、安心して眠っているのだろう。
そう思うと。
胸の奥が、じんわりと温かくなった。
「……明日も」
私は、小さく呟いた。
けれど。
すぐに、首を横に振った。
「……いえ」
そして、微笑んだ。
「明日も、皆様と一緒に」
そう言って、私は静かに目を閉じた。
――壊れた家を直した、一日。
けれど。
その日、私が見つけたのは。
壊れたものを直す喜びだけではなかった。
誰かと一緒に働くこと。
誰かと一緒に笑うこと。
そして。
温かな食卓を囲むこと。
そんな、小さな幸せだった。




