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何度でも、あなたと

 パイプ椅子を出してもらい、水は武道場の隅で腰を下ろした。他の部員たちは稽古を続けている。鶴牙つるが先生は、「久々に長時間稽古をしたからだろう」と行って、スポーツドリンクを買いに行った。


 久々の稽古だからなわけがない。きっと、異常にリアルなあの映像のせいだ。どうしてこんな映像を見てしまうのだろう。時代劇など見ないし、歴史的な場所にも、日本に来てから行っていない。


 考えを巡らすと、また鼓動が早くなり、体の体温が上がる。暑い、熱い、前にもどこかでーー。


「大丈夫?」


 隣から、優しい声が聞こえてきた。横を見ると、葉名はなと同じ顔ーー双子の姉が立っていた。少し後ろに、千代と千もいる。皆が心配そうにこちらを見ていた。


「汗すごいよ、これ使って……」


 そう言って、タオルを差し出してくれる。薄いピンク色でふわふわとしている。水はそれを受け取った。視線は彼女にとどめたまま。


「……あなた、だったんですね」

「え?」


 自然と口をついて出てきた。登校初日、道案内をしてくれたのも、階段で助けてくれたのも、さっき「危ない」と声を挙げてくれたのもーー。


「……ありがとうございました」

「……ううん。びっくりさせちゃったね。私、葉名の双子の姉の、桜音おとっていうの」


 妙に心に溶け込むように馴染む。桜音と視線を合わせると、心臓が落ち着きを取り戻した。水は「これ、失礼します」と桜音に声を掛け、手渡されたタオルで額の汗を拭った。


「こちらこそ……すみません、プリントなんか、渡してしまって」

「ううん、いいの。それより……」

「伊咲、大丈夫か?これ、飲んどけ」

 

 鶴牙がスポーツドリンクを持ってきた。買ってきたばかりでとても冷えている。水はお礼を言って受け取った。鶴牙が会話に入ってきたのを合図に、桜音は去ろうとしている。水は咄嗟に立ち上がった。


「待って」


 その声掛けに、桜音は立ち止まった。こちらを見上げてくる黒い瞳。それが今、揺れている。先ほど、何を言いかけたのだろうーー。


「あの……また、会えますか」


 聞きたいのは、こんな単純なことじゃないのに。



 本当は、水が先日言っていた「どこかで会ったことはありますか」という質問のことを確認したかった。でも、皆がいる場所で、それを聞くことはできなかった。


 きっと、会ったことがあるんだろう。なんとなく、それは今ではなくて、その昔の話なのだと思う。


「また、会えますか」


 水は、茶色の瞳を揺らしていた。


 桜音はその言葉が嬉しくて、胸が震えた。


「会えるよ……何度でも」


 だって私たちは、時を超えてまた出会ったのだから。

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