表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫呪術代行事務所  作者: 無咲 油圧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

314/427

第八十五話 呪われた自動販売機 ― 中半 ―

夜の街は、しんと静まり返っていた。


人通りのない歩道。

街灯の下には、白い霧が薄く漂い、光を鈍く反射している。


零とクロは、白峰ゆきの案内で公園へ向かっていた。


ゆきは時折、零の背に隠れながら震える。


「こ……ここです……この奥の、自販機……」


公園の隅──

そこには、ぽつんと古い自動販売機が一台、沈黙して佇んでいた。


灯りはついているはずなのに……

どこか“暗い”。


クロは少女姿で、零の背に小さく隠れる。


「……零。あれ……ただの自販機じゃないよね……?」


零は目を細めた。


「表面の光が“吸われて”いる。内部の空間が、外界と繋がっていない証拠だ。」


ゆきは唇を噛みしめる。


「わたし……ここで……引き込まれそうになって……」


クロはそっとゆきの手を握る。


「もうそんなことさせないから。」


零が一歩、自販機へ近づいた。


──その瞬間。


ガコン……ガコン……


自販機が、“勝手に動いた”。


ボタンが沈み、購入ランプが、勝手に点滅する。


クロが叫ぶ。


「れ、零! 動いてる!!」


零は冷静に言った。


「内部で封印が破れ、“祠の怨霊”が外界の機械を操っている。」


その時。


取り出し口の奥から、カサカサ……と何かが這う音が響いた。


ゆきが青ざめる。


「く、来る……!」


取り出し口が、勝手に開いた。


暗闇の奥から、白い指先がひょっこりと現れ──


ズルッ……ズルッ……


“白い腕”が地面に落ちた。


その腕は、関節が逆に曲がり、皮膚は濁った白色で、何より指先が異様に長い。


クロは息を呑む。


「で、出た……!」


腕は地面を這い、蜘蛛のような動きで零へ向かってくる。


ゆきは半泣きで悲鳴をあげる。


「そ、それ……私の足を掴んだやつ……!!」


白い腕は、零の足元まで来ると──

まるで“匂いを嗅ぐように”動きを止めた。


クロが小声で呟く。


「零……見つかった……?」


零は淡々と筆を構えた。


「――“見られた”だけだ。」


白い腕が一気に跳ね上がり、零の胸を貫こうと伸びる──!


しかし、その瞬間。


零の筆が宙へ一閃。


「“呪断じゅだん”。」


光の線が走り、白い腕の“肘”の部分が切断された。


ドチャッ。


切り離された腕は地面でのたうち、取り出し口の奥へ吸い込まれて消える。


クロは驚きの声を漏らす。


「き、効いた……!」


零は冷静に言う。


「怨霊本体ではない。“触手”のようなものだ。」


ゆきが震えながら零の袖を掴む。


「あ、あの……!中には……本体が……?」


零は自販機の取り出し口を見つめた。


「間違いなくいる。祠に封じられていた怨霊は──一体ではない。複数の“魂の集合”だ。」


クロは顔をしかめる。


「そんなの……どうやって倒すの……?」


零は静かに呟いた。


「倒すのではない。“祠”そのものを再構築して封じ直す。」


ゆきは目を大きく開いた。


「そんなこと……できるんですか……?」


「できる。ただし、自販機の内部空間に入る必要がある。」


クロが震えながら零の腕を掴む。


「え……!零、とりこまれるってこと……!?そのまま戻れなかったら……!」


零は淡々と答えた。


「戻る。そのためにクロ、お前も来い。」


クロは驚いた。


「わ、わたしも!?」


「お前がいないと、内部の“幻惑”に捕らわれる。」


ゆきも慌てて言う。


「で、でもあそこは……!底が見えない真っ暗な穴で……引きずり込まれたら……!」


零は自販機を一瞥する。


取り出し口は、まるで口のようにゆっくり開き、

暗闇が“呼吸している”ようだった。


クロは震えながらも、零の手をぎゅっと握った。


「行く……零と一緒なら……どんな暗闇でも……」


ゆきは涙をこらえ、零に訴える。


「みんなを……あの中から……助けて……!」


零は短く頷く。


そして──


取り出し口の真っ暗な穴へ、ゆっくり手を伸ばし、言った。


「行くぞ、クロ。」


クロは深く息を吸い、零の手を握り返す。


「うん……!」


次の瞬間。


零とクロの身体は、“自販機の闇”へ引きずり込まれた。


ゆきの叫びが遠ざかる。


「お願い……!みんなを、助けて……!」


公園に残された自販機は、静かに、音もなく再び閉じた。


そして──

零とクロは、“地下の祠”の空間へ堕ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ