表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫呪術代行事務所  作者: 無咲 油圧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

313/427

第八十五話 呪われた自動販売機 ― 前半 ―

夜の街は、人の気配が薄れてどこか冷たかった。


黒猫呪術代行事務所の窓の外には、薄い霧が漂い、街灯の光をぼんやりと滲ませている。


零は机の上に広げた古い呪符を整理しながら、静かに息をついた。


クロは黒猫の姿で窓辺に寝転んでいたが、ぴたりと耳を立て、小さく呟く。


「……ねえ零。今日の夜……なんか、ざわざわしてる。」


「知っている。さっきから“呼び出す気配”が濃い。」


クロは少女の姿になり、零の傍に寄る。


「依頼……かな? でも、いつもの呪いの感じと少し違うよ?」


零はそれに短く頷いた。


「確かに、妙だ。あれは“生者”の恨みではない……もっと乾いた、機械のような……奇妙な怨念だ。」


クロは眉をひそめた。


「機械の……怨念?」


その時。


事務所の扉が、弱々しい力で叩かれた。


コン……コン……


音は小さいが、確かな「助けを求める気配」がある。


零が「入れ」と言うと、扉がゆっくり開き、制服姿の女性がよろよろと入ってきた。


高校三年ほどの年齢。

髪は濡れておらず、雨の気配もないのに──

肌は異常なほど冷たく青白い。


少女は名乗った。


「わ、私……白峰しらみねゆき……です……

夜道で……自動販売機に……殺されるところでした……」


クロは目を丸くする。


「じ、自動販売機が!? 殺すって……そんな……!」


少女は震えながら語り始めた。


「部活帰りで……喉が渇いて……公園の端にある、自販機でお茶を買おうとしたんです……」


その声は震え、零の背筋にひんやりとした冷たさが走る。


少女の表情は強い恐怖で固まっていた。


「お金を入れようとした瞬間……自販機の“取り出し口”から……白い腕が……伸びてきて……」


クロは悲鳴を上げかけ、口を押さえる。


「白い……腕……?」


「はい……人間のものじゃなくて……長くて……細くて……指が……折れ曲がったまま伸びて……私の足首を“つかんだ”んです……!」


少女は身を抱え、必死に耐えるように続けた。


「そのまま……自販機の中に引きずり込まれそうになって……外から見たら普通の自販機なのに……中は……底の見えない“闇の穴”みたいで……」


零の表情がわずかに動く。


「……呪われた自動販売機、か。」


クロが零を見る。


「零、知ってるの……?」


零はゆっくり頷く。


「昔、この街の地下に“ほこら”があった。

怨霊を封じるために作られた場所だ。だが都市開発で祠は壊され……代わりに上から“便利な街の設備”が建てられた。」


クロの顔が青ざめる。


「もしかして……その上に自動販売機が?」


「ああ。封印場所の真上に設置されたのだろう。」


ゆきは零の言葉に小刻みに震えた。


「じ、自販機に連れていかれた人たち……学校でも噂になってて……“飲み物を買った人が、翌日から行方不明になる”って……」


クロは声を震わせた。


「その人たち……まさか……」


ゆきは涙をこぼしながら言う。


「みんな……自販機の中に……“落ちた”んです……私も……あと数秒で……」


クロが少女の背にそっと触れる。


「大丈夫。零がいるから、もう大丈夫だよ。」


零は腰を上げ、黒い外套を羽織った。


「赤信号だ。封印の祠は完全に破れている可能性がある。」


クロは少女姿のまま、零の隣に並ぶ。


「零……行くんだよね?」


「ああ。放置すれば、行方不明者は増える。──行くぞ、クロ。」


クロは力強く頷いた。


「うん!」


ゆきは零の袖を掴む。


「ど、どうか……!あの自販機から……みんなを助けて……!」


零は静かに答えた。


「助ける。だがまず──“自販機の正体”を暴く。」


ゆきは震えながら息を吸う。


零は目を細めて言い残す。


「祠を荒らした者がいる。自販機の“白い手”は……封じていた怨霊の一部だ。」


クロはぞくりと肩を震わせた。


「じゃあ……自販機の中にあるのは……」


零は淡々と言い切った。


「──“祠の地下空間”そのものだ。」


事務所の灯りが静かに揺れた。


そして零とクロは夜の街へ向かう。


呪われた自動販売機の真実を暴くために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ