コジロウ
スライド式のドアをガラガラと動かし、瓦屋根の家に入った。タミコと話して、自分の記憶と、夢と決着をつけなくてはいけない。
足を踏み入れた木製の玄関がギシ、と音を立てた。ギシ、ギシと音を立てて見慣れた廊下を歩いていくと、懐かしい低い声が鼓膜を揺さぶった。
「賢治。」
コジロウの声。ずっと寝たきりだった、祖父の声。
「は、、、?」
ずっとベッド上で寝たきりのコジロウから声がした。
「おいまじかよ。」
そう言ってトイレ横の部屋に駆け寄ると、ずっと瞑っていたコジロウの目が開いていた。
「なんで起きてんだよ、なぁ、おいジジイ。」
「誰がジジイだテメェ。」
そう言って笑ったように見えた。
「お前夢見たんだろ?」
「あぁ、見た。ジジイそれより病院を。」
そう言った賢治の頬をコジロウの手が叩いた。パチィン!と響くそれは、寝たきりの老人から繰り出されたとは思えないくらいの強烈な一発だった。
「痛ぇな、オイ。」
「もう長くねぇんだよ、黙れガキ。」
賢治の胸ぐらを掴んでコジロウは言った。寝たきりの老人のくせして、ありえない力で胸元を引っ張る力に少し驚いた。
「お前、もう夢見たんだろ。なら、自分の見たものを信じろ。人は嘘をつくからよ。嘘だらけの現実を、生きるなら見なくちゃな、、、。それだけだ、俺が言えるのは。」
「でも、ジジィ、俺が見たのは──。」
そう言ったコジロウはもうあたかも何も知らなかったかのようにベッドの上で目を閉じていた。コジロウに握られた胸元の皺が嘘のように感じるくらい、コジロウの開かれた手のひらは、上に向けていた。




