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不本意な早起き

 ゼミの準備の為にゼミ室に入ったジョニーは一瞬固まって「ジーザス」と神に祈り、その十分後くらいにゼミ室に入ってきた愛菜は「え、嘘。なんで?」と困惑しながら席についた。

 二人がそうなるのも無理はない。

 なぜなら今日、一番早くにゼミ室に居座っていたのは、あの賢治だからだ。

 目覚めの悪い夢のせいでAM5:00に瞼を開かされた後、昨晩雑に閉めたカーテンから差し込む朝日のせいもあって、賢治の脳みそはもう起きる時間だと錯覚してしまった。本来起きてても何もおかしくない時間ではあるのだが、AM5:00なんて、賢治からしたら十一月と言う季節も相まって、四捨五入したらほぼ夜みたいなものだった。

 陰鬱な憂鬱が残る頭と急遽出来た数時間の余暇。宝くじに当たったらどうする?なんて聞かれたって大した答えが言えないのと同様に、賢治も急遽できた時間を持て余していた。

 いつもなら起きて慌ただしく支度して家を飛び出るのにかかる十五分間。その時間で、賢治は電子ポットで湯を沸かし、インスタントコーヒーを炊き、ゆっくりと口をつけた。

 口から湯気が漏れて、コーヒーの苦味が喉を通っていく。窓の向こうの冬の世界は、まだまだ夜の顔をしていた。

 コーヒーをもう一口飲んでから、ベランダに出てタバコを吸った。冬の朝の冷たさが頬を包み込む。タバコの味なんて一年中変わるはずがないのに、冬に吸うタバコの味はより美味しく感じられた。

 頭の痛さを煙を吐いて紛らわせる。昨日見た夢を思い出して、ちょっと気持ち悪くなって、ゴホゴホと咳き込んだ。二階のベランダから一階へと唾を吐いた。大学生しかいないこのアパートで、こんな時間に起きている人なんている訳がないから、下に人がいるかも確認しなかった。

 それにしても頭が痛い。タバコを室外機の上に置いてある灰皿に押し付けて、部屋の中に入った。

 この頭の痛さを紛らわせるものを探して部屋をうろうろとしていると、一個の名案が浮かんだ。昨日飲みかけで冷蔵庫に入れた缶チューハイだ。

 のろのろとキッチンにある冷蔵庫を開け、缶チューハイに口をつけた。

 ごくり、と喉元を通過したアルコールは脳みそに平穏を与えてくれる。

 こんな朝早くに起きて酒を飲むなんて、何か良くないことをしている気分になるが仕方ない。スピーカーから流れる音楽を聴きながら残りの缶チューハイを飲み干した。

 時刻はまだAM7:13。携帯をいじったり本を読んだりして時間を潰そうとしてもなんだかどれもしっくりこなくて、結局AM7:30過ぎに家を出た。ゼミ室についたのは大体ゼミが始まる三十分前で、そこから何の様もないのに携帯を見たり、ボーっとしたり、やっぱりまだ頭痛いかも、なんて思いながら今に至る。

 「Are you OK?」

 「大丈夫?体調悪いの?」

 ゼミが始まる前に到着するという当たり前のことをしているだけなのに、いやまぁ、普段の自分の行いのせいなんだけど、心配をしてくる二人に適当に相槌をしてゼミが始まった。

 さっきまで夜の顔をしていた外の世界も、ゼミが終わる頃にはとっくに昼の顔をしていた。やることもないし二度寝でもするかな、あ、今日は〈石井精神科〉に行かなくちゃ行けない日だ、と思いながらゼミ室を出ようとしていた時、いつもの様に愛菜が声をかけてきた。

 「ねぇ賢治、今日も暇?」

 いつの間にやら君付けはなくなった愛菜に返事し返す。

 「暇だよ、飲み?」

 「うんそう、今日暇だからどうかなって。」

 「いいよ、いこ。またいつものとこ?」

 「うん、〈スイレン中華〉。六時でいい?」

 「あ、ごめん、今日寄らなくちゃ行けないとこあるから七時でお願い。」

 前に愛菜と飲みに行って以来、愛菜とはちょくちょく飲みに行く仲になっている。いつも行くのは〈スイレン中華〉で、たまには別のところでもいいのではないか、とは思うが、賢治も他の店は〈ホーネス〉ぐらいしか知らないし別にいいかと、〈スイレン中華〉は愛菜と飲むお決まりの場所になっていた。

 「分かった。じゃ七時に後でね。」

 愛菜に手を振って、やけにズキズキと痛む頭を押さえながら家に帰った。

 

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