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夢④

 また白い部屋だ。また、白い部屋にいる。もう見慣れたものだ、この空間も。でもいつもと違うのは、部屋を半分にまるで違う場所みたいになっている。賢治がいる半分は何もない空間で、もう半分は机とか本とか、中が空っぽの鳥籠とか、いろんなものがぐちゃぐちゃに積み重なって山みたいになっている。

 そこの山の前に、一人、小さい男の子が座りながら泣いている。小学五年生くらいだろうか、身体は大きくなってきているのに顔は幼くて、溢れて止まらない涙を短い腕で必死に拭っている。二人だけの空間で黙って見ているのは流石に偲びなくて声をかけた。

 「どうしたの?大丈夫?」

 顔から腕をどかした少年の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていて、それでも嗚咽も涙も止まらないものだから賢治は困った。

 「転んだの?」

 「転んで、なんか、ないっ。」

 「何か嫌なことあった?」

 「あいつに。」

 「あいつ?あいつって誰?」

 そう聞くと少年は一瞬口をつぐんで、溢れ出す嗚咽を無理矢理抑えながら大きく息を吸ってから言葉を出した。

 「あいつに、お前なんか、殺してやりたいって、お、お前なんか産まれなきゃよかったんだって、、、!い、言われた、、、!、」

 声にならない声を出して少年はまた泣き出した。

 「俺だって、産まれなくなかった、、、!!あんなやつに、そんな、傷つくことばっかり言われて、こ、こんな、気持ちになるくらいなら、俺、産まれなくながっだよ!!」

 少年の声は部屋中に響き渡った。喉を潰し切るようながなり声が、賢治の鼓膜と部屋を揺らした。少年が声を上げて部屋を揺らす度、少年の後ろにある机や鳥籠はどんどん形を大きくしていき、ガタガタと音を立てて暴れ出し、賢治がいる空間にまで侵入してきていた。暴れ出した机から飛び出した引き出しから色々なものが飛び出してきた。有線のヘッドホン、TSUTAYAのレンタルシールが貼られたANARCHYのCD、二羽の文鳥の写真。

 「俺だって、、れだって、、、、ったかった、、、。俺だって、普通の家に産まれだがっだ!!当たり前に、産まれていいんだって言われたかった、当たり前に、普通の家庭で、あ、あ、愛してるって言って欲しかった、、、。」

 そう言って大声で泣き続ける少年を前に、賢治は何も出来ずにただ立ち尽くしていた。この少年が泣いているのを見ていると、何故だか自分も泣きたくなるくらい悲しくなってきて、何とかしようと少年へと一歩踏み出した。

 次の瞬間、巨大化して暴れ狂っていた鳥籠が脳天に直撃し、賢治は最悪の目覚めをすることになった。

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