14話 天才魔法具設計師の姫
エレ、本気でバレなければどんな魔法具作っても良いと思ってるよ。
魔法具を無効化する魔法具。それだけでも、不可能と言われていた領域なのに。
「ふみゅみゅ」
「……エレ、何してるの?好き」
「ふみゅ。ゼロ起きたの」
ゼロが起きた。
「魔法具を無効化する魔法具の設計図を考えているの」
「……ぎゅぅ」
「ちょっと難しいの」
「ぎゅぅ」
「お祭り間に合うか分かんないの」
「ぎゅぅ」
「……ゼロちゅき」
さっきから、話を全く聞かずに、ぎゅぅぎゅぅ言いながら邪魔しているだけなのに好きって。ほんと謎。
「ふみゅ……ぎゅぅ……ふみゅふみゅ。これをこうすれば」
「ぎゅぅ。好き。エレ大好き。ずっと一緒。エレ大好き」
「ふみゅ。ゼロがいると色々と思い浮かぶの」
「ぎゅぅ。エレ、ゼロしゅき。可愛いの……可愛い⁉︎可愛くすれば良いの!」
何を可愛くするんだろう。魔法具無効化の魔法具に可愛い要素なんてないと思うんだけど。どこに可愛い要素があると思ってるんだろう。
「ふみゅ。魔法具は魔力を動力に動いているから、動力の魔力を……ふみゅ。現実的に不可能な気がするの。絶魔結界をやれば、他の魔法具も機能しなくなるの」
「ぎゅぅと好きは、好き。エレはぎゅぅで好き」
「ふみゅ。ゼロの体質がヒントになっているの。あの体質をうまく利用すればできる気がするの。でも、それだと、他の魔法具も」
他の魔法具には干渉しない。それさえなければ、エレなら作れるだろう。
「エレ、他の魔法具の事は考えなくて良いよ」
「考えるの……ふみゅ⁉︎他の魔法具を考えれば良いの!ゼロ、エレの設計図達を持ってきて」
「ぎゅぅ?」
「ふみゅ。ぎゅぅ」
これで言うこと聞くんだ。やってないのに。言ってただけなのに。
「……ゼロ便利」
「……」
「それは流石にゼロが可哀想だからやめてやれ」
「……みゅ?なでしてだめ?」
「それは良い」
「ゼロいない間ルーにぃがなでして」
……これ、なんだか、エレ女王様とか言いたくなる。もう女王様だよ。
僕の膝の上に座って、ルーに頭撫でさせて。
「エレ、ぎゅぅ」
「……なでは足りているから、ゼロはエレの隣にいるの。一緒に、これ見るの」
「好き」
「ふみゅ。ぎゅぅでちゅきなの」
ゼロはエレに必要だから、隣にいるだけで良いとは。
「ゼロ、ここ覚えておいて」
「ふみゅ」
「これがこうでこうが良いかも。候補として覚えておいて」
「みゅ」
ゼロの記憶力頼り。
「ふにゅ。ゼロ、魔法具無効化の範囲なんだけど、お祭りの会場全体」
「もう少し広い方が良いかも。祭りの会場がこの円だとすると、範囲は一回り大きいくらい」
「フォル」
「都全体」
「ふみゅ」
設計図自体は描けても、エレは、こういうの苦手だから。ほっといたら、ギュリエン全体を包む結界とか作りかねない。
「できたの。これをおにぃちゃんに持っていけば、エレのお仕事おしまいなの。頑張った。褒めて」
「エレ好き」
「そうじゃなくて褒めるの」
「ぎゅぅ」
「ふみゅ。ぎゅぅ」
エレ、それ褒められてないから。欲求不満のゼロなだけだから。
気づいてないだろうけど。
「ねむねむなの」
「お疲れ様。夕食まで寝ていて良いよ」
「ふみゅ。じゃあ、フォルぎゅぅってしてねむねむなの」
「僕動いちゃだめなの?」
「みゅ」
まぁ、エレの好きにさせておけば良いか。それで喜んでくれるなら。
なんだか、エレの事甘やかしすぎているかもしれない。
「おやすみなの」
「うん。おやすみ」
僕も少しだけ寝ようかな。寝れる時に寝ておいた方が良いから。
**********
真っ白い部屋。硬そうなベッドに二人で手を繋いでいる。
「エンジェだけは見逃して」
「ゼーシェだけはみのがちて」
怯えながら、エレとゼロは僕にそう言った。
「危害を加えるつもりはない。君らを保護するように命じられている」
与えられた役目を全うすれば良い。この時は、それ以外考えていなかった。
「……ぴゅ……ふきゃん」
「エンジェ、転んだ。今痛いの治す」
互いに支え合っている。そんな印象だった。ゼロがエレの面倒見ているだけのようにも見えたけど。
**********
「ふみゅ……むにゅ」
主宮でエレが、僕の服を引っ張る。
「……」
「あの、ね。おかえり、なちゃい。おちゅかれちゃま」
仕事から戻った僕を出迎えてくれたんだ。
「……ただいま」
「ふみゅ……すたすたすた」
こういう事が何度も続いた。エレじゃなくてゼロの時もあったけど。
**********
僕が、にぃ様に呼び出されて、軍部への異動を聞かされた日。
エレとゼロは、ある人物が作った魔法具。赤の姫の一つに襲われていた。
「破壊対象、赤の姫」
「ふみゅ、防御魔法なのー」
「なのー」
そんな必要ないのに、エレとゼロは、僕に防御魔法をかけてくれた。破壊はすぐに終わったけど、後始末というか、泣いているエレとゼロを慰めるのは大変だったんだ。
「ふぇぇぇん」
「ふぇぇぇん」
「ごめん、気づくのが遅れて」
「……エレ、このまま泣き落としだ」
「ふみゅ」
「怪我したの、お嫁さんいけない」
「フォル責任取るの」
「……それで、泣き止んでくれるなら」
何も考えてなかった。子供の言う事だくらいにしか。それがまさか、再会後も本気にするなんてね。
エレとゼロは、僕がそう言ったらすぐに泣き止んでくれたんだ。
その日から、異動までずっと一緒だった。方時も離れる事なんてなかった。
**********
軍部への異動で離れる事になった。離れる前に、エレとゼロには、安い指輪をあげた。三人お揃いって。
離れていて、二人の事はずっと気になっていた。定期的に、主宮へ帰るくらい。
辺境の宮に異動になって、それからはずっと帰らなかったけど。
**********
「……夢」
「エレ、ケーキさんの夢見た気がするの」
懐かしい夢だったな。今思えば、あの頃からずっと……
「エレ、好きだよ」
「ふぇ⁉︎ふみゅふみゅ⁉︎フォルがエレを好きって言うの⁉︎夢かもしれないの」
「夢じゃないよ……エレ、頼りにしてるから」
「ふみゅ。頼りにして良いの。フォルのためだったら頑張れるから」
こんなふうに関係のない誰かに頼るなんて、昔じゃ考えられなかったかな。これはきっと、エレとゼロと一緒にいたからだ。
二人の影響、思った以上に受けているみたい。それでも良いと、今だから思うけど。
「エレ、もし君が一番売り上げに貢献できたとしたら、君のお願いなんでも聞いてあげる。結婚したいとかは、まだ無理だけど」
「じゃあ、デート。エレとゼロと一緒に、朝までお外で遊ぶの。場所はエレ達が決めるから」
「良いよ」
祭りが終わった後、にぃ様に頼んだ指輪も準備できるだろう。その時に、一緒に渡そう。
「……今日は優しいの」
「どっかのお姫様のせいじゃない?……エレ、祭り最終日は、僕の側にいて。絶対離れないで。側にいてくれれば守れるから」
「ふみゅ。でも、でも、エレとゼロは守られてるだけはやなの」
「赤の姫でわんわん泣いていたのに?」
「むぅ……そういうの言ってくる酷い」
猫パンチ、思った以上に威力ないんだけど。触られている感じしかしない。
「……じぃー」
ゼロが来た。僕とエレが寝てる間どこ行ってたんだろう。
「おにぃちゃんに設計図渡し行ってやってたのに……渡し行ってやってたのに……」
抜け駆け許さない子が来た。
「エレ……信じてたのに」
「ちゃんとゼロも忘れてないの。エレが売り上げ貢献一位取ったら、ゼロと一緒にフォルと三人でデートなの」
「本当に?嘘じゃない?」
「エレが嘘ついてたらすぐにバレるの」
「そうだな」
「否定しろなの」
猫パンチ好きなのかな。ゼロが餌食になっている事がほとんどだけど。
「エレ、もっと上」
「みゅ?」
威力ないから、マッサージにもならないと思うんだけど。
「フォル、お祭りの警備」
「最終日はルノとデューゼに頼むから一緒にいられる」
「ふみゅ。都の中央の宮所属の人達も一緒なの?」
「見回りが軍部の仕事だから、やりはするだろうね。場所が違うから、会いはしないだろうけど」
というか会いたくない。僕がいた頃からいれば、逃げられるだけだろうけど、新人は面倒だから。軍部に入れたって言うだけで偉そうにしていて。
中央の宮の軍部は、入るだけでもかなり厳しいから、自慢したいのはわか……らないか。
「全員一度は見回りするから、エレ達も一緒にするの。フォルと一緒に見回りするの」
「……公平になるように見回りの時間を決めるか。勝負って言うならなるべく公平にしてあげたいし」
「……エレは公平までは言ってないの。ちょっぴり、ちょっぴりで良いから、エレに有利なご予定を」
「それなら着いてこなければ良いんじゃないの?」
「それはやなの」
エレは体力ないから全部着いてくるのは、心配しかないんだけど。僕の予定はかなり歩くから。
「疲れると思うよ?」
「秘策があるから良いの。この日のために大量に体力回復薬を持っていくの」
「……エレ、飲むのにも限界はあるからね?」
この子、大量に持って行って、大量に飲めば大丈夫って思ってるよ。
「……エレの知らない世界」
「ゼロ、夕食の後ににぃ様と見回りの場所を相談する予定なんだけど、一緒に来る?そうしたら、どれだけ歩くか分かるだろうから」
「いく」
「エレは?エレは?」
「エレは僕が抱っこで強制的に連れてくから聞く必要ないかなって」
「フォルがエレと一緒にいたいの」
その通りだから何も言わないけど、歩くのだけは歩いて連れていくべきかな。抱っこは流石に甘やかしすぎな気がする。
まぁ、少しくらい良いか。
「今日はルノとエルグにぃが夕食作ってくれたんだ」
「エレ連れてって」
「自分で歩け」
「……けち」
「二人ともおいてくよ」
祭り開催まで残り二十日。とりあえず、後でにぃ様と話し合い。




