13話 祭りの最終日は
祭りの事は、何も進まないまま夕方になった。主にエレとゼロが話脱線させまくったから。
「ゼロが邪魔ばかりするの」
「エレ……ぎゅぅ」
「ふみゃ⁉︎ふみゅふみゅ。エレ、お部屋戻るの。ゼロ、一緒に行こ」
「うん」
なんか、妙に素直だけど何かあったのかな……甘えモードになったのかも。ゼロは時々、甘えモードになって、可愛くなるんだ。
「エレ、甘々なの欲しい」
「ふみゅ。フォル、ゼロがフォルもお求めなの」
「分かったよ。ごめん。祭りの事は明日また話そう」
「おにぃちゃんとルノもお求めなの」
「……フォル、俺予定」
「おれも仕事」
「僕に押し付けないでよ」
「……ふにゅ。これなら、ここにいた方がお得なの」
部屋戻るのやめた。エレ、ここでゼロと一緒にいるつもりみたい。そうしないと、フィルとルノは逃げるからって事だろうね。
今のエレは、ゼロの意志で動いているから。そのくらいは思いついていると思う。ゼロが。
「でも、おまちゅりのお話疲れたの。エレはお休みしたいでちゅ」
「ルーにぃ、撫でて」
「ふみゃ⁉︎」
何その、驚いたのって感じの動き。ゼロはエレの元から離れないのとでも思っていたのかな。
「……ぷみゅぷみゅ。振られたの。エレ、泣く」
「ゼロ、エレが泣くから手でも繋いどいてあげな」
「むにゅ」
手を繋いでいたらどこにいても泣きそうにない。
「本当に仲良いですね」
「エレとゼロは二人で一つなの」
「……エレ好き」
「エレもゼロが好きなの」
仲睦まじい双子。フュリーナ達はそういうふうにしか見えないんだろうなぁ。
実際はかなり真っ黒だけど。僕も、ゼロも、エレに対して情報規制やら感情制御やら色々とやってるから。その一つがこれになるのかな。
エレが、僕とゼロに依存するように仕向けている事。
僕らのこの関係は、白くないから。
「フォル、エレねむねむさんになったからーフォルのお膝でー」
「良いよ。エレには特別に」
「むにゅぅ。ゼロはずっと手を繋いでるの」
「繋いでる」
エレは、僕を枕とでも思っているのか、好きなんだよね。
寝心地悪そうなんだけど。どこが良いんだか。
「ふみゅ。ここはエレ専用なの」
寝るのというか、僕が座っている上に乗るのも好きだから、側にいたいだけっていうだけだろうけど。
「おやちゅみ」
「うん。おやすみ」
寝ている時は、大人しくて普通に可愛い女の子としか見えない。普段も可愛いけど、子供っぽいんだよなぁ。僕らがそうしてるんだけど。
寝ている時は、年齢相応……ではないかもだけど、起きてる時より少しだけかもだけど、年齢に近い顔を見せてくれる。
「……」
「フォル様って、姫様好きですよね」
「リーグうるさい」
「俺も寝る」
二人して、僕が動けないようにしたいのかな。ゼロが、エレと手を繋いだまま、僕の隣で寄りかかって寝た。
エレ一人なら、最悪連れて行けばどうにかなるって思っていたけど、これじゃあ、どうにもならない。
「相変わらず、姫様の前だと別人ですわ」
「フォルはエレとゼロが大好きだから当然だろう」
「こんな純粋姫がフォルを好きになるっていう事が、奇跡か洗脳かってくらい信じられない事に感じるがな」
「……祭りの店、衣装は僕が用意するよ。サイズだけ書いておいて」
「すいません、冗談です。変なのだけは勘弁してください」
ん?好き勝手言われるくらい、日常茶飯事だから怒ってないけど?
フィルとルノとにぃ様とルー以外は、なんか青ざめてるけど、こんな事で怒るわけないじゃん。
それに、今回は資金稼ぎが目的なのに変な衣装なんて、そんな事しないよ。ちょっと、ウケを良くするような衣装にしてあげるだけで。
「ゼロ、起きてるでしょ。部屋戻るよ」
「……戻ったら、撫でくれる?」
「うん」
「戻る」
エレみたいなゼロも可愛い。なんか騒がしいけど、この可愛さで全部聞き流しておこう。
**********
部屋に戻ると、エレの隣でゼロが寝てくれた。エレは、寝ていれば、離れても気づかない。起きた時に泣く可能性はあるけど。
「エレとゼロまで見せ物にするつもりはないだろうな?」
「ルー、僕にそんな趣味があると思ってんの?やるとしても、僕以外は見れない場所でやるよ」
「それなら良いんだが。ゼロはともかく、エレはまだ、人と関わる事に恐怖心がある。あまり無理はさせるな」
「分かってる」
エレとゼロは、本人達の望むようにさせる。仕事で離れないといけなくても、フィル達に任せておけば安心だから。
「ふみゃ⁉︎……ふぇぇぇぇん」
また未来視?泣くような事が……エレのきらいなものとかは多いから、原因が分からない。もう少し、何かあれば良いけど。
「ぷみゅぅ……ぱたり」
「……ルー、誰も入れないように結界魔法使っておいて」
エレに何かあるのかもしれない。そう思ったら、考えるより先に動いていた。
未来視。いくつかある可能性の未来を視る能力。それは、本来聖星以外は使えないもの。けど、僕は、使えるんだ。いつでも使えるというわけではないけど、それは、聖星もおんなじ。
「……」
部屋にみんなが来てくれるように、祈りを込めて部屋中に魔力を巡回させる。
「……」
エレは、不定期に、一つの可能性の未来を視る。聖星は、そうして未来を視てきている。
僕の場合は、いくつもある中から、自分で探さなければならない。いくつもの未来が、目の前に広がる。
エレが視た未来。それがどれか、あの少ないヒントの中で探し当てなければならない。
未来視ができる。未来を知る誰かが行動を起こさない限りは変わらない、ほぼ確定の未来。エレが、無意識に視る事ができるのはそれだけなんだ。
僕がそれだけを視る事ができないのは、この方法でハズレが出てきてしまうから。僕の思考とかそういうのが反映されて、映し出された未来がほとんどなんだ。
「これ……」
その中でも、エレが視たと思う未来が見つけられた。
祭りの最終日。暗くて何も見えないけど、何かが起きたんだろう。悲鳴と轟音が響き渡っている。
「……ルー、祭り最終日、警戒を強めるように主様に頼んでおいて」
「何かあるのか?」
「何があったのかまでは分からない。でも、確実に何か起こる……あの轟音って、爆発も含まれていたような……爆発系の魔法具を使えなくする手段とかあれば……」
「みゅぅ?フォルぎゅぅ」
エレが起きた。怖かったんだろうね。起きた途端、僕に抱きついてくるくらい。
「あのね、あのね」
「言わなくて良いよ」
「……爆弾なの。爆発が始めなの。エレの目で視るものをエレはそのまま視るから、分かるの」
「そうか。エレの未来視は、エレとゼロの周囲しか視る事ができない。だったら、場所は」
「ふみゅ。目的も知ってるの。支援魔法師の誘拐。エレ……むきゅぅてされて、その後知らないの」
エレの視界以外は映さない。エレが、聞いている範囲以外は聞けない。
それは、エレが気絶していれば何も知る事ができないという事。
ギュリエンを守護する二人の支援魔法師。一人は、フュリーナ。もう一人は、エレ。
支援魔法師が狙われるとすれば、真っ先にフュリーナが狙われるだろう。そこにいたエレが、守ろうと魔法を使い、それで攫われた。
その可能性が高い。エレの情報は、隠されているから。
「フュリーナに護衛をつけるにしても、爆弾が」
「それならエレがどうにかできるの。エレなら、魔法具を無効化する魔法具を作れるから。おにぃちゃんと一緒に」
「頼める?」
「ふみゅ」
嘘だって分かっている。エレは、そんな魔法具は作れない。でも、自分で作れると言ったんだ。それを僕が信じてあげれば、きっとエレは応えてくれる。
僕の大好きなエレは、そういう子だから。
「早速取り掛かるの。エレの作業部屋にエレはいるから、ほっといて良いよ」
「やるならここでやって。一人になんてさせられない。僕も、できる事があれば協力するから」
「ふにゅ……ふみゅ。分かったの。ここでやる」
一人にさせたら、完成するまで徹夜でやり続けそう。そんな事、させたくないから。
「……ふみゅ。ここって事は……ここなのかも」
「えっ、エレ?そこってわけじゃ」
「ここなのかも」
これ無限ループだ。ここで良いって言わない限りずっとおんなじ事言い続ける気だ。
この部屋でって言ったけど、なんで、僕の座っている上でになるんだろう。
「ふみゃ⁉︎思いついたの!」
「早いね」
「フォルのこのふみゅふみゅ感とこのエレを安心させる匂いを考えていたら思いついたの」
うん。触れないでおこう。
「フォル、エレ頑張るから、この匂い堪能させてー」
「……」
「くんくん。ふみゅぅ」
「……ルー」
「小動物のペットを飼っているとでも思っておけば、何も思わないだろう」
「これは小動物よりも可愛いよ」
「これだと描けないの。フォル、ぎゅぅってして。できるだけエレのお顔の近くに腕が当たるようにして」
言う事聞いておこう。それで、エレが機嫌良く、魔法具の設計図を書いてくれるのであれば。
「ふっふっふ、これは、特定の魔法具だけを無効化するの」
「そんなの作れるの?」
「ふみゅ。作るの。常識無視してでも作るの。フォルのお望みはエレが叶えるの」
常識無視は自覚あったか。でも、頼もしいな。
「ふみゅ。なんだか、ほんわりしたの。もっと頑張れそうなの」
「あんまり、無理したら……待って、それ以上頑張らないで」
「エレ、バレないようにやるんだ」
「ふみゅ」
バレなければ良いって問題じゃないと思うんだけど。




