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矛盾 5


 桜井達が基地へと訪れている間。ジャ・アークの幹部は顔を揃えて、スクリーンに映し出されていた情報に驚愕していた。秘匿されていたエスポワール戦隊の基地の座標データと内部構造の仔細が描かれていたのだ。

 誰もが疑問を抱いた。一体、どの様にしてこんな情報を入手したのかと? 彼らの住家(ヤサ)は、今まで血眼になって探しても見つからなかったと言うのに。豊島が声を上げた。


「この情報は何処で入手した? 信憑性は?」

「入手経路は言えねぇ。信憑性については、槍蜂が放った使い魔から得る情報と照らし合わせたが、かなり信用できるものだ」

「今朝、ピンクさんと会った時にね」


 周囲の景色から突如として現れた蜂が、彼の指先に止まった。切り替わったスクリーンには、ゾロゾロと出て行く隊員達の姿も映し出されていた。


「なんじゃ? アイツらは何をしとるんじゃ?」

「いつもの制裁準備だと思いますよ。ただ、ここまで準備が大掛かりって事は相当な相手を倒しに行くんでしょうね……という事は、基地内情報は制裁相手からのリークって事ですか?」


 疑問を浮かべる金剛を傍目に、考え込んでいた金木は気付いた。フェルナンドは静かに頷いた。


「極端な正義を掲げたなら、内ゲバにも発展するだろうな。アイツらの仲間割れに利用されるのは気に食わねぇが……、葬式での件。テメェら、忘れちゃいねぇだろうな?」


 全員から怒気が発せられる。あの戦いで失った組員やリング、傷つけられたメンツ。研ぎ澄まして来た復讐心に報いる時がついに訪れた。


「戦争じゃ。嘗められっぱなしで堪るかッ!!」

「私の方からも兵隊を引き連れて行きます。準備時間は?」

「10分で動かせる奴を動かせ」


 出席していた幹部達が次々に連絡を入れて行こう。豊島と黒田も立ち上がり、スマホを取り出した。


「黒田。ケンにはお嬢の護衛に当たらせろ。この規模で攻めるんだ。相手側からどんな形で報復されるか分からねぇからな」

「分かりました」


 押し殺した様な声。目の前で組長を討たれ、自身も死の淵を彷徨ったこともあり、豊島には闘志が漲っていた。


~~


「場所を変えろ?」

「これから、俺達はエスポワール戦隊の基地にカチコミを掛ける。お前達にも被害が及ぶかもしれないから、お嬢を連れて離れろ」


 短く告げると、抗議は許さないと言わんばかりに電話が切られた。様子を察した芳野は悲しみもせずに、ポツリと呟いた。


「お父さんの為に、私が危険に晒される。って何なんでしょうね?」


 果たして、亡き染井組長が望んでいたことなのか。だが、自分達も動かねば巻き込まれる可能性がある。


「ジャ・アークの本部に行く。暫く、学校は諦めろ」

「良いですよ。まともな人生なんて期待していませんから」


 衣服や身分証明書。土地の権利書などを持って、直ぐに移動を始めた。邸宅付近に漂い始めた剣呑な雰囲気を避けながら、俯く芳野の腕を引きながら走る。


~~


 エスポワール戦隊の基地は戦場と化していた。駐車場で迎撃が図られたが、量産型強化外骨格(スーツ)を装着した者達では練度が足りず、今日まで生き残って来た怪人達の勢いに押されていた。


「シュッ!」

「ぎえ」


 ハナシャコ型の怪人が放ったパンチが隊員の頭部をスーツごと砕いた。遠距離から銃撃されるが、甲羅を用いて弾丸を弾いていた。

 目の前の敵に集中していた彼らは気付かない。天井に張り付いた猫型の怪人に、喉笛を切り裂かれていたことに。


「よし。次のや」


 爪に付着した血を振り払っていた彼は、轟音と共に倒れた。頭部から胸元まで千切れ飛び、近くの壁には無数の弾痕が出来ていた。


「フゥウウウウ!!! 残念だったなぁああ!! このバイオレットパープル様が! この! テリブルミキサーで! テメェらをひき肉にしてやっぜ!!」


 紫色の強化外骨格(スーツ)を身に纏う彼の手には、大型の散弾銃型のガジェット『テリブルミキサー』が握られていた。

 だが、ハナシャコ型の怪人は一切怯む様子を見せずに接近する。放たれた弾丸で甲羅が抉り取られて行くが、最終的に殺せれば問題は無いと。拳を振りかぶった瞬間、脇腹に痛みが走り、体勢を崩した。見れば、短小のダガーが突き刺さっていた。


「ヒーロォオオオ!! ダッガァアアアアアアアアアアアアアア!」


 喧しく叫び声を上げながら、彼は腰のホルスターに差していた小型のガジェットを目にも停まらぬスピードで突き立てて行く。残った甲羅の隙間から、喉、脇腹、肩、肋骨を縫う様に刺し入れて行く。


「うぉおお!」


 痛みを意にも介さず、高速のパンチを繰り出したが空を切った。バックステップで飛んだ彼は、手にしていたテリブルミキサーの銃口を向けながら叫ぶ。


「これがぁああああ! 俺と! 皆の! 絆の力だぁあああああああ!」


 自分を守ってくれる甲羅を喪失した彼の体は散弾によって食い破られ、周囲に散乱した。倒れた怪人達からリングを奪い、隊員達の遺体から回収した銃剣型ガジェットを腰に提げながら、彼は走る。


「待ってろよぉおおおお! 助けを待つ皆ぁああああ!! 俺が駆けつけるぞぉおおおお!!」


 怪人にもヒーローにも平等に死は訪れる。局所的にはカラードが押していたが、通常の隊員達では分が悪い。基地内に死体が積み重なって行く。

 引き分けも無く、逃走が許される事もなく。逃げ追うとした隊員達は背後から切り捨てられ、あるいは後頭部が砕かれるか、撃ち抜かれていた。


「ガッハッハッハ!!」


 バイソン型の怪人である金剛の手には、カラードから奪った戦槌型のガジェットが握られていた。立ち向かってくる隊員達を打ち砕きながら、遠方から加えられる銃撃には隊員達の遺体を盾に突き進んでいた。


「兄貴を殺したレッドがいないのは癪じゃがのぉ! お前が守ろうとした仲間共を一人でも多く殺したるわ!!」

「怯むな!! 撃ち殺せ!!」


 抵抗も空しく、彼らは染みとなって消えた。隊員達が抗戦を続けている中、基地に残っていたカラードは隊員達に伝えて回っていた。


「怪人どもが後続からどんどんやって来る! この基地は放棄して脱出しろ! 連中の制圧力が尋常じゃない!」


 基地内の施設は破壊され、あるいはデータや装備なども奪われている状態であり、カラードも含めた人員も相当な損害を受けている。

 隊員達に命令が伝達されたころには、相当に数が減らされていた。彼らは緊急用の脱出口から逃げようとしたが、そこには大柄のタカ型の怪人である豊島が待ち受けていた。


「散々、殺って来たんだ。今更、自分達だけ助かろうとするんじゃねぇぞ!」


 大きく翼を広げて振るうと暴風が吹き荒れ、風の中を泳ぐ羽根が体を切り裂き、あるいは突き刺さる。無風になった頃には、全身をバラバラにされた隊員達が転がっていた。

 豊島は彼らに近付くとマスクを剥がした。中年の男性もいれば、年若い女性もいた。中には学生としか思えない少年もいた。


「……なんで、こんな所に来ちまったんだよ」


 彼らが戦場に立たない様に、平和を守るのがヒーローの役目だったのではないのか? 彼らを殺し合いの場に立たせて、何がヒーローか。

 だが、この場に臨んだのは彼らだ。女だから、子供だから。そんな言い訳が殺し合いの場で通じる訳がない。殺さなければ、こちらが殺されるのだ。


「大坊。これがテメェの望んだ光景なのか。女やガキを引っ張り出して来て、ヒーローにして殺し合わせるのが、テメェの望んでいた光景なのかよ」


 彼の憤りに答えてくれる者はいない。今は亡き、組長が見たら何を思うか。

 だが、現実は止まることを知らない。同じく脱出して来ようとした隊員達が次々に殺到しては、武器を構える。豊島も構える。仇と憎悪と敵意の中に、空しさを込めながら。


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