最終日
「ヴェルテクス……少し話がある」
吉田が言っている「ヴェルテクス」とは、僕がペットにした大ミミズ『ちくわ』だ。見た目は半身ミミズだが、根は優しい。とても暖かくて、かわいい。すごくかわいい。
吉田は舌の根も乾かぬうちにちくわと何処かへ消えていった。これでは合コンとかの友人の友人同士で2人きりになった感じがして、とても気まづい。
「白羽……さんはなんかその、趣味とかあるんぞ?」
「ひ……特には、はい。無いです」
吉田……助けておくれよ。と多分僕も白羽も思っている。そういえば、白羽の機能力は何なのだろうか。
「白羽さん……の機能力ってどんな感じなんですか?」
白羽はピクっと反応し、子供のような笑みを浮かべ、かばんの中にある掛け時計を次々と並べていった。合計で……6個?
「こいつの中に、時間を指定して入れとくんです。そうすると、時間になった時に発動……みたいな感じですね。やってみます?」
何をやるんだろうか。人とかも入れられたりするのだろうか。気になったが、少し怖くなって聞くのはやめた。
「むききむく」
ちくわの声がする。なんか……野良猫を見ているような感覚がして、ほっこりするな。あぁかわいい。
「先にヴェルテクスの説明をしておく。ヴェルテクスの寿命は、無い。体は千切られても2時間後には全回復する。毒の耐性もあるし、この星で最強の種族だ。しかし、ヴェルテクスは自分で死のうと思った時に死ぬことができるのさ。」
寿命が無いって……どういう感じなのだろうか。もしかしたら、吉田が出した2匹のミミズも自分から死のうとか思っていたのだろうか。
森に吹き飛ばされた時は、どんな気持ちだったのだろうか。やはり、痛かったりするのだろうか。だんだん考えること自体が怖くなってきて、もう、なんかすごく嫌だ。考えるなとでも言いたいのだろうか。僕はそっと、ちくわに抱きついた。
「エサもいらない。必要なのは、心だぜ」
僕は、ちくわに寄りかかったまま、眠りに落ちてしまった。
「さて……吉田さん。答えはどこにあると思います?」
「そんなん……光にしかわからねぇよ」
「と、いうと?」
「光は1回、街の外に出たんだ。俺も出たけど、すぐに戻っちまった。光が前外に行った時の戦利品がこの盾」
「では……外に出てみますか?」
「むききむく」
僕は……なぜこんな暗いところにいるんだろう。夢……にしては随分と鮮明だ。絶対に僕は起きている。それにしても、ここはどこだ?
生き物の体の中を想像させる、妙に湿っていて薄暗い空間。壁は灰色で、何故かぶよぶよしている。もしかして……外?
「中だよ」
吉田の声がした。
「もぺぺのむ」
ちくわの鳴き声が聞こえたあと、僕はちくわから出てきた。いや、多分ちくわから出てきた訳では無い。別の世界に送られていた。
「ひーもぷ」
「おかえり」
ちくわが嬉しそうに跳ねている。が、揺れというか、そういうものが一切起きない。地についた音はするが……重さがないのか?
「さて……もう1回、外に出ることになった。付いてきてくれるかい?……いや、俺らを助けてくれ」
吉田が真剣な表情で聞いてくる。外に出るって……もしかして、帰ろうとしてる?外に終点があるのか……?僕は別ルートというか、よくわからない道を通って帰ったが、行きの果てとかは……あるのだろうか?
そう考えているうちに、何故か外の世界の直前まで来ていた。ちくわの力……?それとも
「あっ、自分がやりました。時計の中にいる時は記憶とか無いもんで。すみませんね」
白羽か。この時計って、どうなんだろう。外の世界はほとんど壁がない空間だし、使えるのだろうか。
「やっぱ、ちょっと休憩していくか。」
吉田は僕と白羽の表情を見て言った。2人と1匹は、ノーとは言わなかった。
そして僕らは、ホームセンターらしき場所の窓を壊す。
こんなことができるのも、今日で最後になりそうなのか?取り敢えず、ここならいろいろありそうだ。ベッドのサンプルもあるし、工事器具もある。1日は余裕で過ごせそうだ。
あと、僕は、光っているタブレット端末を見つけた。
ちくわくんの声※多分主は途中で忘れます
おかえり→もぺぺのむ
何かないかな→ひーもぷ
何言ってんのお前→むききむく




