フリック
「フリック機能が追加されました」
そう表示されたタブレットが僕を照らしている。やはり、新たな機能力……?二つ目を手に入れたということでいいのだろうか。
「遅すぎんよ。もっと早く集めてくんないとこっちが困るんだよね」
そんなことが書き込まれていた。これもミオンの残したメッセージなのだろうか。何が困るというのだろうか。
フリックって……触ったものを弾くとかそういう系統の機能力なのだろうか。取り敢えず、この真下にあるタブレットを弾き飛ばしてみるか。僕がタブレットをフリックした瞬間、思ったより相当速く壁にめり込んだ。破壊音に驚き吉田と白羽がこっちにやってくる。これは随分好都合かもしれない。
「敵襲ですか?」
走りながら白羽が言うが、吉田は息を切らして吐きそうになっている。
「いえ……なんか機能力もう1つ手に入れて……フリックなんですけど」
そう言うと、白羽は角材を持ってきて、急に僕に投げつけてきた。
「上にやってみてください!」
とんでもないヤツだ。機能力を一切使いこなせていない僕に角材を投げつけるとは……いい度胸じゃないか。見せてやるよ本当の僕の力を……!
「だ……大丈夫ですか?」
だめだ……いまいちフリックのやり方がわからない。手首がつるのは想定外だった。
「こりゃあ明日1日は練習だな」
吉田たちの1日は、僕のせいで使われてしまうのか。なるべく早く使いこなせるようにならないと……外が危なさそうだ。
朝焼け……というわけでもない。起きた時は夜だった。僕が起きた時、吉田も白羽もまだ寝ていた。ちくわはずっと起きててうるさかったのだろうか。物置にシャッターは開けっ放しだが、閉じ込められていた。1人で機能力の練習でもしておくか。
僕は外に出て、ひたすらそこら辺に落ちてるガラス片を壁にぶち当てて遊んでいた。
どうやら触らなくても近くでフリック動作さえあれば吹き飛ばせるそうだ。そして、これには重さ制限がない。車も葉っぱも関係なく飛ばせた。
ちくわを……いや、やめておこう。自分をフリックしてみるのもありかもしれないが、降りる時が全く想像したくないので、やめておいた。
僕の後ろに、影が映る。吉田か、白羽か。または敵か。僕は腰に装着していた銃を取り、後ろを向いたのと同時に銃を構えた。
「いやー。ただのニートがここまで働けるとは。やるもんだね。君は連れてくるべきじゃなかった」
……レックミオン!?
嘘だろ!?どうしてここに……?殺す気なのか。やばい。どうしよう。機能力は多分バレてる。どうする?
「最悪だね。お仲間も誰も起きてないし。ミミズ君も」
ミオンがニヤっと笑う。きっと何かが来る。そう感じた僕は、体をホームセンターに向かってフリックする。ガラスは全部壊しておいたから怪我はない。こういう運はあるのか。
僕は向かいの壁に激突し、その音と同時に吉田と白羽は起床する。
物置からちくわを引きずり出す……のは吉田の言っていたことが本当ならまだでいい。問題は……白羽と吉田がどこに隠れるかだ。白羽が大丈夫な人なら、多分吉田と共に時計に隠れるはず。
問題は僕だ。どこに隠れるべきか。
いっそ、もう突撃した方がいいのでは。
「隠れてても無駄さ。じきにここは全焼する。時計に隠れたつもりだろう?どうするんだい?彼は時計を見分けられるかな?」
全部時計を持っていったら間違いなくバレて殺される。こうなったら、ミオンを、ここで、終わらせてやる。
「来いよ。ミオン」
「いいねぇ!いいじゃないか。僕に挑戦するって、なかなかいないもんだよ?」
フリックで突撃……はまずい。こうなったら、投てきか。僕はありったけの角材を持ち上げフリックで飛ばした。が、煙のようなもので押し返されてしまった。
「それで終わりかい?そんなんで……ほう?」
ぼくはチェーンソーを2つ構え、フリックで飛ばした。これなら、煙如きで対策できる武器ではないはずだ。
「切……断」
ミオンはニコッと笑い、亀裂を入れてきた。これだ。これの対策ができていないから前回は負けた。今回は亀裂から別の世界に入る。別の世界はゴールのようなもの。そんなもの怖くはない。
「放電」
これは盾があれば防げる。
「爆発」
盾が……持ってかれただと……?盾は全く傷ついていない。僕の力が弱すぎた。盾なしでどうする?盾をフリックで飛ばすか?いや、掴まれたら僕は個性が無くなってキャラが立たなくなる。どうする。これならもう、あいつごと埋めてやる。
僕は鋸を振りかざし、ミオンの頭に叩きつけた。初めて、攻撃が当たった。これは、やった……!
「爆発」
この一言で、全ては無駄になった。
「さあ。できればちゃっちゃと済ませたいもんだけどね。キミ、楽しいよ」
フリックはしゅってやると弾き飛ばせます。時速400kmで飛んでいきます。




