倍加と空間収納と防御
まずは倍加の魔法から実践する。
「魔法には詠唱があるけど、人によって呪文は異なるの。詠唱は人から教わるもの、本に載っているもの、そして自分で編み出したもの。それぞれの効果は変わらないけど、自分にあったものが1番いいわ。だから詠唱も自分なりにアレンジしてみてね。」
そう言ってウインクをするおじ…オネエサン。
これさえなければ分かりやすくていい先生なのに。
「ただ、最初から自作の魔法は危険が伴うから、無闇に魔法を作ろうとしちゃだめよ。私の艶々だった髪の毛も、遊びごころで魔法を作って失敗しちゃった結果だから。」
残念そうな表情をする先生。
魔法の恐怖を感じた。
失敗したらハゲるってどういうこと!?失敗って何が起こるかわからないのね…
「だから基本は教わった詠唱をもとに魔法を使うこと、少しのアレンジ程度なら問題ないわ。」
では、と実習が始まる。
オネエ先生に教わった詠唱で各自で倍加の魔法を使う。
イメージが難しい…。
隣の男の子はすでに成功させている。すごい。
女の子は顔を真っ赤にしながら詠唱を繰り返している。
目の前のペンに向かって倍加魔法を実践をする。
「ふたつはひとつ、ひとつはふたつ。いたずらな祝福を我に。倍加。」
ポンとペンを叩くと、ペンが2つになった。
倍加魔法すごい!
増えたペンをまじまじと見つめる。特に元のペンとの違いがわからない。
これでお金とか増やせるんじゃないかな。
そんな汚い考え方が読まれたのか、オネエ先生が補足する。
「魔法は一定の期間しか持続しないわ。だからお金もそのペンも時間がたてば消えるから、注意してね。物によっては犯罪で処刑されちゃうわよ。」
やっぱり魔法怖い。
涙目で頑張る女の子をみんなでフォローする。特に同い年くらいなのか、男の子が優しくイメージを伝える。
可愛い光景だ。
なんとか女の子も成功して、次は私の使いたい魔法だ。
「空間収納はかなり便利だから、覚えたい人も多いのよね。そのかわり、難易度としてはかなり上級者向けよ。冒険者の間だと、この魔法が使えたら引っ張りだこになるわね。」
そんなに難しいんだ。私も旅をするなら覚えたいと思ったくらいだから、需要はかなり高いと思う。
それに難しい理由もなんとなくわかる。
イメージが本当に難しい。何だろう空間て。空間に仕舞うってなに!?てなるよね。
「イメージも難しいけど、詠唱も難しいのよね。だから、この魔法を習得する労力を考えたら、働いて魔法袋を買うお金をコツコツ貯めようって冒険者の方が多いわ。」
それでもやる?
と確認される。
む、やらなきゃ出来ないかなんてわかんないもん。
強面のおじさんにそんなこと言われて、女の子と男の子はビビってるけど、私もかなりビビったけど、頑張るもん。
「や、やりまちゅよ!」
噛んだ。イナリみたいになった。
「ふふふ。無謀な子は嫌いじゃないわよ。もしかしたら出来るかもしれないし。じゃあ教えるわね。」
そうして教わった詠唱。
な、ながい。
本気で覚えられるのかってくらい長い。
普通にこの詠唱唱えている間に、イメージとか出来なくなる。
両隣は途中から外の景色を眺めてる。
気持ちはわかるよ。
「…ほら、教卓を仕舞うことが出来たわ。どうかしら?」
何十回か教えてもらわないと、そして試さないと出来ないよこれ。
アレンジでどうにか短くとか、イメージ力でカバーとか出来ないかな。
最初の文言を…
いやいや、覚えやすい言葉を並べて…無理かな。
こうなったら、
「空間収納!!」
ヒュン。
シーン。
「できた?」
「お姉ちゃんすごい!!」
ありがとう犬の少年。
「詠唱なく出来たよ!あんなの覚えなくてもいいってこと!?」
驚く女の子。わかるよその気持ち。これでいいの?
「ふふふ。面白いはね貴方。私の考え出した詠唱を全部破棄するなんて。」
な、なんか怖いよセンセ。
「無鉄砲さは気をつけた方がいいけど、使い方は正解よ。」
どういうこと?
「この魔法はね、その便利さ故に、多くの偽詠唱が出回っているの。私が知っているだけでも30はあるわね。」
これもその中の一つよ、とウインクする先生。
むしろこれを考えた人に賞賛を送りたいよ。
「この空間収納の魔法は、人によって魔法の行使が出来るかは相性にかかってるの。貴方みたいにほとんど詠唱なしでって例は聞かないけど、想像力に頼った魔法なのよ。」
確かに私の場合は、さっきの考える時間でイメージは固まってたから、あとはそれを具体化するだけだった。あのイメージと感覚を忘れないようにしなきゃ。
「あとはあなたの空間収納にどれだけの容量があるかがポイントね。空間収納はギリギリ生活魔法だから、街中でも使えらから宿で試して限界は知った方がいいわ。」
確かにどれだけ入るかは気になる。ペン一本じゃわかんないしな。
「貴方達2人もせっかくだからやってみなさい。」
そう言って正解の詠唱を教えてくれた。
私も試しに正解の詠唱でやってみたけど、出来たイメージが付いたからか、先ほどのように成功はしなかった。
2人とも必死に収納しようとしているが、上手くいかない。
とうとう2人とも出来なくて、子供ということもあって、魔力切れを起こす可能性を避けるためにも
、明日も挑戦するということになった。
「最後は防御ね。この魔法はさっきと違って難易度も低いし、詠唱も簡単だから出来ると思うわ。使う魔力量の調整だけ気をつけてね。」
オネエ先生曰く、広く薄く魔力の膜を張るイメージで詠唱を唱えるそうだ。
「我を守れ。防御」
コンッ。カンッ。トンッ。
3人とも成功だ。
「あら、3人ともセンスいいわね。久しぶりに楽しい授業だったわ。」
気がつけばあっという間に講習の終了時刻だ。
「また明日ね。可愛子ちゃんたち。」
ウインクとともに颯爽と先生は去って行った。
リト達はトレーニング終わったかな。魔法使って驚かしちゃおう。
るんるん気分で教室を後にした。
いつも週末に多く更新しますが、明日から出掛けるので今週は少ないです。ご容赦ください。




