8 甘美!犬人間との宴!
俺の名は山口寿明。
色々あって異世界でスライムに生まれ変わり、熊に殺され掛けた男だ。
熊から逃げ切ったが、いつの間にか辺りはすっかり真っ暗になっていた。
70リットルほどあったボディも、熊にぶった切られて数十リットル位に減ってしまった。
移動速度も随分下がったし、何だか意識が少し曖昧になったような気がする。
これ以上小さくなると意識が保てなくなるかも知れない。
とにかく動物を捕って大きくならなければ。
木に登って、ゲル状になってテローンとツタめいた触手を垂らし、動物を待ち伏せる。
そういえば、今日は虫しか食べていない。
今のサイズでやれる手頃な動物なら何でも良い。何でも良いから早く来い…。
焦燥に駆られながら待つ時間は、やたらと長く感じる物だ。
ようやっと姿を現した獲物は、コボルトだった。
【よりによって犬マンかよ…】
コボルトの大きさは高学年の小学生くらい。
夜目が利くのだろう、明かりは持っていない。
幸いこちらに気付いてはいない。
頭上から不意を突いて頭を突っ込み込めば、多分窒息死させられるだろう。
だが、コミュニケーションの相手として想定していたコボルトだ。
ひょっとしたら、友好的なコミュニケーションを取れるかも知れない。
だが、口もきけないスライムで、意思疎通など出来るのだろうか?
コボルトは脚が早い。悩んでいる時間は無さそうだ。
【おーい!! 聞こえますかー? キミにとーどーけー!テレパシィィィー!!!】
「………」
コボルトはノーリアクション。
俺の渾身のテレパシーは空振りに終わった。
テレパシー的な物でモンスター同士がコミュニケーションをとれると言うことは無いようです。
俺には分かった。この異世界はあんまりファンタジーめいてないタイプのやつですね。
コボルトがツタ触手の近くを通るタイミングを見計らって、目の辺りにシュッ!
犬に触手を食いちぎられた経験を生かして、いきなり口まわりは狙わない。
「!!!???」
パニックに陥って触手を引きちぎろうとするコボルトだが、握力は弱い。
その程度の力では俺の触手はちぎれない。
触手の方に体積を移し、一気に顔面を包み込む。
ゲルで出来た小さめのリュックを顔に被せられたような物だ。引き離す手段はない。
もがく腕も一緒に巻き込んで、ゆっくり窒息死するのを待つ。
【犬マンすまぬ…もっと平和な世界で出会っていたら、違う結果もあったかも知れんね…】
やがてコボルトは動かなくなった。
さて、殺したはいいが、人型の生き物を食うのは初めてだ。
サルの脳みそを最初に食べたのは誰なのかしら。そいつかなり勇者だよな。
流石に人型の生物に抵抗感が無いとは言わない。
だが綺麗事は止めよう。コイツはモンスターなんだ。
最初から食い殺す気で襲いかかったんだ。こいつを食う為に殺したんだ。
これは野犬、これは野犬、と唱ながら、頭から消化を始める。
【はあぁぁぁぁ…おおおっ…らめ…これはらめえぇぇぇ!!】
野犬など比較にならない圧倒的快感に、俺のしょぼい罪悪感が一発で吹っ飛ばされた。
生前は流石に三十路くらいだったので、かろうじて素人童貞は脱していた俺だが、コボルトはセクロスなど比べものにならない…
だめこれ…気持ちよすぎる…。
反射的に体中がビクンビクンと脈打ってしまう。
気持ちよすぎて知能がさがっていく…なにもかんがえられない…
【かゆ…うま…】
いつの間にか朝になっていた。
あれからずっと、コボルトを全て食い尽くして、さらに余韻に打ち震えていたようだ。
夜の間に熊とかに襲われなくて良かった…。
しかしこれはやばい。麻薬でもここまで効かないのではないだろうか。
コボルトは気持ちよすぎる。
コボルトとコミュニケーションを取る作戦はなしの方向だ。
こいつは単独行動するタイプの種族なのだろうか?何となくのイメージでは群れを作ってそうだが。
多分巣や集落があるんじゃないだろうか。そこを見つけてコボルトを確保したい。
どうしてももう一度コボルトを楽しみたい。
俺は完全にコボルト快楽に目が眩んでしまったのだった。




