66 ワクワクしなかった!魔獣ランド!
俺の名は山口寿明。
色々あって異世界でスライムに生まれ変わって、水魔法を練習中の男だ。
『勤務時間は終わったかな?じゃあいこうか』
まるで彼女のバイトを待ってる彼氏みたいだなー。相手は巨大な猫だけど。
『うわ、本気で着いてくるつもりなの?』
『「うわ」は地味に傷付くからやめようね』
大猫の食生活はどうなっているのかなど、世間話をしながらシピにゃんについて町を行く。
毎月一括で生活費を国に収めると、対象エリアでは食事が飲み食いし放題で寝床は寝放題のフリー利用。
掃除なども専門の業者が定期的に来てやってくれるらしい。
猫の手足でどうやって金を払ったり店を利用したりするのか割と謎だったんだが、そういう仕組みになっているのか…。
割と金銭を必要とする都市型生活猫なんだね。
たしかに町の中で魔獣とかいうタイプのクリーチャー達がが密集して住むとなると、コミュニティやその集団の生活サービスを委託するような業者的な奴らがいないと成り立たないだろう。
動物園ですら結構な獣の臭いや糞尿めいた臭いがするのに、掃除やらなんやらを誰もしなかったら、魔獣が暮らすゾーンは凄い事になるだろうしな。
しかしそういう事業があるなら、水商売は需要あるんじゃねーかな。
魔獣パークに水を配達してる業者が居そうだ。
まぁここに定住する訳じゃないから、水商売はもういいけど。
『何でそんな手間かけて、この町に魔獣を住ませようとするんだろうね?』
『そんなの同盟があるからに決まってるじゃないの。質に取られてるのよ』
『んん?それどういう事?』
どうやら、ちょくちょく田端さん達が言っていた魔族の同盟とか言うのを堅持してますよと表明する為に、各種族から何人(匹?)かづつ、人質として差し出されて魔都で暮らしているらしい。
『えっ、じゃあシピニャンもそう言う猫質として…?』
『そうよ。族長の娘だからね。まぁ魔都が見てみたかったってのもあるけどね』
重い裏エピソードに踏み込んでしまったな。
それにしても各種族から人質取るとか、徳川めいた政策だな。江戸時代かよ。
そうこうしているうちに、魔獣ランドゾーンに入ったようだ。
だが、直立二足歩行系のクリーチャーどころか、獣っぽいのもほとんど居ない。
一匹だけ牛っぽい奴がいたくらいだ。あんまり獣口密度高くないようで、獣さんはあんまり見かけないな。
『魔力や知性のある魔獣なんて希少なのよ。ここには数えられるくらいしか居ないわ』
『えー。猫とかウサギとかモフモフできるふれあいランドじゃないの?』
『あんた誰でも触るのね…。基本的に魔獣に許可無く触れたら殺されると思った方が良いわよ』
ちっ、ふれあい動物ランドの夢が崩れていく。
『じゃ、ここから着いてくんじゃないわよ』
サッと魔獣ランドの中に駆けていくシピにゃんを見送ったはいいが、想像以上に獣口が少なくて困ったな。
もうちょい良い感じの動物とか居そうだと思ったんだが。
まぁ、この辺に来れば休日のシピにゃんと遭遇できそうだし、町の中で一個目標ポイントが出来たことで良しとしておこう。
もう朝になった事だし、城の田端さんの所に行こうか。
『うそーん…なんか騒ぎになってる…』
ヌルヌルと城に向かったところ、なにやら城の入り口で検問のようなことが行われていた。
入城チェックがされてるようで、入城待ちの行列が出来ていた。
最後尾に並んでいた目のデカい小人さんに尋ねたところ、人間族のスパイが城の堀で破壊工作をしていたとかで、念のため警戒態勢が取られているらしい。
『ほぅ、堀にですか…』
『何でも夜中に、堀から外壁の辺りで連続した魔法の使用があったとか…』
『ほぅ……堀で魔法……』
それ完全に俺の犯行。魔法使ったログとか取れるのかよ…。
シピにゃん、堀に水捨てればとか言ってたのにどういう事だよ…。
『…誰が魔法を使ったとかは分かっているんですかな?』
『流石にそこまでは分かりませんよ。念のため入城者をチェックをしているだけですよ。良くある事です』
『ああ良くあるんですね。それはよかったですね』
何が良かったって、それはもちろん俺にとってだ。
魔法の使用ログみたいなのが残るなら、そこから個人特定までされてしまうんではと怯えたが、流石にそこまでガチの詳細記録が残るわけでは無さそうだ。良かった。
『最近人間共の動きが不穏ですなぁ。先日も最前線のシェズリーで人間共が大規模な呪いを使ったと言う噂が…』
口が付いてなくてデカい複眼みたいな目しか付いてないのに、割とおしゃベリだな、この目のデカい人。
大規模な呪いってあの巨大蜘蛛だろ。結構噂になってるんだな。
目のデカい人に適当に相づちを打ちながら、入城列に並んだ。




