65 極めろ!水魔法!
俺の名は山口寿明。
色々あって異世界でスライムに生まれ変わって、友達が居なくてヤバい男だ。
水商売計画は、この世界での常識アドバイザーの確保に失敗した為に始まる前から終焉を迎えた。
『水を大量に捨てたい?そんなの川にでも流せばいいんじゃないの』
『えっ、見かけなかったけどこの辺に川あんの?』
『魔獣が集まってる地区に流れてるわよ。そこまで行かなくても、城の堀に流せば?』
なんやて工藤…。この町に川あったのかよ。初めて知ったわ。
町中は物騒かなと思って、この詰め所と城意外ってほとんど出歩いてなかったんだよな。
『ねー、シピにゃんって休みの日とかあんの?』
『4日働くと1日休みね』
『次の休みに町を案内してよ。暇でしょ』
『馬鹿なの?何であんたの案内なんかしなきゃいけないのよ』
『俺、城とここしか知らないしさー。どっかいい時間潰しスポット教えてくれ!』
『だから何であたしが案内しなきゃいけないのよ』
『薄情な猫だなー。ストーキングして家の前で待ちかまえてもいいんじゃよ?』
『いい加減にしないと本気で殺すわよ』
猫とか動物タイプの魔獣?が集まって暮らしてるエリアって興味あるんだよな。
俺も非人型だから、案外暮らしやすかったりして。
『とりあえず帰りに魔獣住んでるエリアには連れて行ってよ』
『その辺りまで着いてくるのは良いけど、家まで来たら殺すから』
いくら何でも、本気でストーキングはしないぜ。
『じゃあ夜明け頃また来るから宜しく!』
そう告げて、俺は城の堀に向かった。お城の堀に向けて水を垂れ流すのは名案だ。城の周りなら治安も安心だろうしな。
でも流石に番兵の前で掘にいたずらしてると怒られそうな気がするので、ちょっと門から外れたところでやろう。
今夜練習したいのは水量のコントロールと、攻撃魔法っぽく使う方法だ。
今のところ水道の蛇口くらいの速度でしか水が出せないので、消防の放水くらいの勢いで水を出したいところだ。
むむむと集中して、掘の上に水を出す。
じょぼじょぼと水が出始めたので、水量をアップさせようと四苦八苦を開始。
ああ、ちなみに水魔法、空中から水は出てくるけど別に空中に水の玉になったりしないから。
田端さんの部屋でやった時は、床がビシャビシャにならないようにゲルで受けて飲んでたからね。
5リットルや10リットルくらいでは見た目変わるほど膨らまないから、わざわざ言わなかったけどな。
だが今やってる様にジョボジョボ出しっぱなしだと、最終的に何リットルくらい行くか分からない。
5メートルの巨大スライムとかになって目立ちたくないので、掘に垂れ流して練習するのだ。
うーん、どうやったら水の量を増やせるのか。蛇口みたいに口径を上げれば一度に出る量も増えるんだろうか?
力んでみたり口径を広げようとしたり色々試していると、段々水の量が増えてきたような変わらないような?
水の勢いは調整できるようになってきたけど、一度に出る量はあんまり変わってないなー。
最終的にはドラム缶みたいな口径でドバドバ水出したいんだが、それにはまだまだ遠そうだ。
次は攻撃魔法的な利用についてだ。
この魔法のスペックはと言うと、まず水は出るだけで宙に浮いたりはしない。
水が出る場所はある程度コントロールできるが、水は出た瞬間から重力に引かれて地に落ちる。
水を出せるだけで、中二系水使いみたいに水を操作するわけではないのだ。
つまり、よくある「水の竜ー!」とか「ウォーターボール!」的な物は出来ない。
射出するタイプの飛び道具みたいな活用は無理という事である。
正直なとこ、無限に水が出せるホースで何と戦えっつーんだという話だ。
沸き出す方向や場所を変える事は出来るので、相手の顔面に勢いよく水をぶっかけて怯ますとか、それこそゲル窒息攻撃みたいに気管に水を流し込むとかか?
あとはぬかるみを作り出して足場を悪くするとか、相手をびしょ濡れにするとか…。
密室に閉じこめて水攻め…は攻撃って言うか…?
うーん、どう考えても攻撃手段としては使えないっぽいぞ?
攻撃にも使える魔法と思って水魔法だ!と思ったんだがな。
前話であることの昼間のやり取りを思い返してみても、田端さんは一言も攻撃とか言っていないのだった。
完全に俺の早とちりだったようだ。
まぁいいよ。突然空間から水出せれば色々と超便利だしな。
放水車くらいに水が出せるようになったら、十分な非殺傷攻撃だからな。
実際に現代でも放水車は暴徒鎮圧にかなりの威力を発揮してるのだ。
そのうちダムの放水みたいな殺人水流を作り出せるようになってやるからいいもん。
練習あるのみだ!
俺は水魔法の熟練に決意を新たにして、衛兵詰め所に戻った。
わくわく魔獣ランドに連れて行って貰うのだ。




