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12 死闘!巨大熊赤カブト再び!

俺の名は山口寿明。

色々あって異世界でスライムに生まれ変わり、自分にシリアルキラーの気がある事に気付いて凹んでいる男だ。


【はぁー。まだキツいなー】

まだずいぶんテンションは低いが、何とか気を取り直して穴から這い出した俺は、太陽を見上げてため息をついた。

いつまでも穴に籠もっていても仕方ない。やっちゃったモンは仕方ない。

スライムは鬱病にもならないのだ。多分な。


ピーピーピーピーピーピーピ ピーピピーピーピーピー

丸一日、穴の中で散々練習したお陰で、昭和のヒットソングを口笛で吹けるようになった俺は、上を向いて歩くことにした。

【まぁ、特にやることも目的もないんだけどなー】

コボルトさんにはもう手出ししないことに決めた。もし遭遇しても逃げるぞ。

しかし野犬やら鹿さんやらは獲物だからな。活きる為に喰う。

一人異世界で生きていくのだから、割り切りが大事だ。

【そういえば猿の群れもいたなー。アレ狙ってみるかなー】

猿や野犬で、高密度餅モードの正面戦闘を試してみてもいいかもな。

理想のボディサイズを知る為に、どれくらいダメージ受けたらどうなるのか知りたい所だ。


もうどっちがどっちだか、方向は全く分からないけど、何となく川だと思った方に向かってみる。

方向音痴だと思う無かれ。

君も森の中で二三日過ごしてみれば分かる。マジで何の目印もないからね。

獣道だって、何回も簡単に見つけてると思ってるだろ。

数時間歩き回って、やっとそれ風のが見つかるとか、そんなんだからね。

素人が、凹んだ土見て「ペロッこれは鹿だなまだ暖かい近くにいるぞ」みたいなこと無理だからね。

今もめくらめっぽうに高速で突き進んでるだけだからね。


ずんずか突き進んでいると、「ギャギィー!」みたいな獣の悲鳴?のような物が聞こえた。

急いて声の方に向かうと、例の巨大熊、赤カブトにコボルトさんが襲われている!!

コボルトさんは二人組だったようで、既に一人は赤カブトに殺されていた。

間違いなく死んでる。だって上半身と下半身が合体前のAパーツとBパーツみたいな位置にあるもん。

もう一人もめっちゃビビってる。

そして赤カブトは仁王立ち。

何だよコレ。10秒後には絶対死ぬシーンじゃねーか。

コボルトさんはもう殺さないと決めた尻からコレか。

不可抗力だけど、これを見殺しにすると更に気分が落ち込みそうだ。


ピュイーィ!

俺は、思い切って全力で口笛を吹いた。

つ、罪滅ぼしとかそんなんじゃないからねっ!ただ可哀想だっただけだし!(赤面

ツンデレは兎も角、この位置なら口笛の音は十分牽制になる。

現に赤カブトは、こっちをめっちゃ睨んでるからな。

俺が熊を見ている時、熊もまた俺を見ているのだ。

一応、草むらに隠れたつもりだったけど、今の俺は真っ青なビーチボールだからね。

迷彩する気ゼロの青いボディが恨めしいわ。

「ブフォー!」

赤カブトは俺に向かって威嚇のうなり声を上げる。

今の内に逃げてくれと願う俺だが、コボルトさんは完全に腰を抜かしていた。


ビューィ!ピュピュピュピュピュ!! ピュッピピュ!

【オラァ!赤カブト!!こっちだ!】

と啖呵を切ったつもりだが、口笛だとどうも締まらんね…

赤カブトのターゲットは完全に俺に移ったようだ。

一気に突っ込んで来やがった。

【ヒエッ!速いぃ!!】

そう、熊は実際速いのだ。四足歩行の軽自動車だと思ってくれればいい。

車と違って、走り出しも結構速い。

俺もビビって反対方向に全力ダッシュする。

今の俺は、夕べ野犬を喰って上がった分を含めてスラ力180。

カールルイス並の快速で飛ばして、木のそばを狙って走り抜ける。

だが赤カブトもさる者、ほとんど引き離せない。

器用に木をステップ回避して追いかけて来やがる。

【くっそ!カールルイスは時速40キロで走るんだぞ!】

まぁ、カールルイスがどれだけ速かろうが今は関係ない。

現に熊はピッタリ追走してきてるからな。

結構な距離を走ったところで、疲れないスライムVS巨大熊赤カブトの追いかけっこは、俺の勝利に終わった。

流石に疲れたのか、赤カブトは突然追走を止めて停まりやがったのだ。

ピュイィ!ピュイイ!

【フヒヒ!ざまぁ!ざまぁ!】

生前は鈍足だった俺氏は、駆けっこで勝ったのが滅茶苦茶嬉しかったです。


さてコボルトさんからは結構離れたが、地球のヒグマは自分が狩った獲物に滅茶苦茶執着すると聞く。

確か明治時代頃に北海道で入植者の村が巨大羆に襲われる話を読んだ時に、そんなことが書いてあった筈だ。

赤カブトも、さっきのコボルトさんの死体に執着して、現場に戻るかも知れない。

最悪、生き残ったコボさんが死体を持ち帰ってて、村ごと全滅とかあり得るんでは…


お互い足を止めて、にらみ合いになる。

奴めも今はブゴー!ブゴー!と荒々しく唸ってやがるが、息が整ったらどう動いてくるか。

そしてこちらの手も、いくつか考えられる。


プランA。ひたすら挑発&逃げを続けて、赤カブトが諦めるのを待つ。

今の追いかけっこで、速度はほぼ互角だった。疲れないこちらの方が有利だ。

ただ、コイツがどれくらいしつこいかが分からない。

流石に死ぬまで追いかけてくると言うことはないだろうが、こいつの習性が分からないのは不安だ。


プランB。まず逃げるフリをしてワザと赤カブトに追いつかれるでござる。

そして熊クローが炸裂する瞬間、異世界オープンゲットでござるよ。

ぺぺローションでひるんだ隙を突いて、異世界ゲッターチェンジで顔面に張り付いて殺すでござる。

ただ、このプランの問題は、赤カブトには一度ローション身代わりの術を見られているところだ。

しかも、水分を絞りきった俺の体はローションというよりグミみたいな食感。

以上の二点により、奴はひるまないような気がするな…。



とにかく挑発を続けるべきだろう。

ピーピーピューィ!

【ヘイヘィヘェーィ!】

挑発的に口笛を吹きながら、2本触手を出してシュッシュッとシャドウボクシングっぽく牽制する。

おっ、ちょっとビクッとしやがった。効いてるぞ。


ドゴォン!!


調子に乗ってシュツシュッと牽制していると、突然赤カブトの左顔面が爆発した!

【えっ!何だ!?】

俺に超能力チートが目覚めた訳ではない。

いつの間にか、俺達から少し離れたところに、一人のダークエルフが現れていたのだった!


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