11 悲劇!犬人間の村!
俺の名は山口寿明。
色々あって異世界でスライムに生まれ変わり、驚きのダイエットを果たした男だ。
森の中をカールルイス並のスピードで疾走する青いビーチボール、それが俺だ。
カールルイスが分からない子はパッパマッマに聞いてみようね。
前回、水分を吐き出したせいか、体色が濃くなってしまったんです。
鮮やかなライトブルーが、ドス青くなってしまった。
こういう色の宇宙ロボいたよね。
【地球から来た…。僕の名はトシアキ、この世界は狙われている!(俺にな)】
若い子を置いてけぼりにするおっさん話題は置いておくとして、獣道の果てには、コボルトの村があった。
そう、村だ。
森の中を伐採したのだろうか。
広場の様に開けたところに、竪穴式住居めいた原始的な掘っ建て小屋が5つ。
木陰から観察すると、何かの繊維みたいなのを木の棒で叩いたりしてる奴と、幼稚園児くらいの子供みたいな奴がいる。
他のコボルトは、おそらく家の中にいるのか、村の外にいるんだろう。
少なくとも家の数×1人か2人くらいの規模の村だと思う。
【……………。】
言葉も出なかった。
ついさっきまで、調子に乗ってコボルトを狩るつもり満々だった俺は、冷や水をぶっかけられた様な気分だった。
コボルトは、原始的だったが、十分すぎるほど『ヒト』だった。
あんなに美味しく頂いた獲物が、思っていた以上に人間だった。
スライムじゃなかったら吐いていたと思う。
思い返してみれば、粗末とはいえ弓も持っていたし、危機を察知したら二人組を組んだりもしていた。
普通に考えれば、巣にこもる獣の群れではなく、集落を構成する程度の文化があることは分かっていたはずだ。
…捕食の快楽におぼれて、考えないようにしていただけだろ。
別に、命は尊いとか、人間と獣の命の価値がどうのとか、そういう臭い話をしたい訳ではない。
ただ、コボルトの子供を見たのが精神的にキツかった。
彼らが、人間の形をしていないだけの、普通の村人だと強烈に見せつけられた。
それを薄々知りながら、快楽の為に狩り殺していた自分を見せつけられて、気分が悪くて仕方がないだけだ。
どこのシリアルキラーなんだよ、俺。
いつの間にか、俺は村から離れていた。
大した速度も出さず、音を消すよう気をつける事もせず、ダラダラ歩いていた。
そのせいか、他の動物にも出くわさなかった。
途中で、小さな洞穴を見つけたので、何となく中に這入ると、奥に野犬が寝ていたので、とりあえず喰った。
寝ようと思ったけど、スライムは眠れないんだった。
【うあー、思ったより凹むなーこれ】
独りぼっちだと、こういう時に誰も励ましてくれない。
いつもなら、こう言う時は気晴らしにオネイニーでもして、嫌なことを忘れようとするんだけど、スライムにはおにんにん生えてないからな。
手慰みに、何となく体の表面を凹まして、内向きに風船のように空気を含んで、弾けさせてみる。
パチン
風船ガムみたいな音がする。
パチン パチン パチン
小さくて真っ暗な穴の中で、ひたすら空気を含んで潰す、を繰り返した。
やっている間は何も考えなくていい。こう言う時は無心で手慰みだ。
2つ同時に風船を作ったり、時間差で潰したり、デカい風船を作ったり。
色々やっていると、ピュイッと笛のような音が鳴った。
【あれ?いまどうやったっけか?】
何回か試行錯誤している内に、口笛みたいな音が鳴らせるようになった。
口笛の切っ掛けを掴んだ俺は、暗い穴の中で一日中、口笛の練習をして過ごした。




