第九話|名もなき境界
秋の終わりが近づくにつれ、王都の朝は日に日に冷え込むようになっていた。
街路樹はすっかり葉を減らし、石畳の道には赤や黄色の落ち葉が吹き寄せられている。往来には厚手の外套をまとった人々が増え、広場の噴水も、夏の頃ほど賑わうことはなくなっていた。
王立魔法研究所の窓からも、そんな季節の移ろいが見て取れた。
だが、建物の中では朝から人々の足音が絶えなかった。
王都北東の森で行われた調査から、すでに数日が経っている。
持ち帰られた観測記録は研究員たちの手によって整理され、今日はその内容をもとに、今後の方針を話し合う会議が開かれることになっていた。
会議室には長机が置かれ、その上には報告書や観測結果をまとめた資料が広げられている。壁際には大きな黒板があり、属性ごとの魔法反応や、森で確認された空間の亀裂の形状が描かれていた。
「さて、始めるとするか」
室内に響いた声に、集まっていた者たちの視線が向けられた。
主任研究官、ヴァルター・グレイヴ。
長い白髪を後ろへ流した壮健な魔法武人は、机の端に両手をつき、並んだ顔ぶれを見渡した。
研究員のノエル・アシュフォード、魔法騎士のセリナ・ヴェルティスとアルヴィン・クロフォード。ほかにも観測や記録に携わる研究員が数名。
そして、北東の森での調査を率いたレオ・アルディオンと、独立上級魔法騎士のシエル・アステリアも席に着いていた。
「まずは、今回の調査に関わった者たちに礼を言っておこう。おかげで、ようやく手をつけられることが増えた」
「まだ分からないことの方が多いですが」
ノエルが控えめに答えると、ヴァルターは大きく笑った。
「はっはっは! 分からんことがあるからこそ、研究するのだろう!」
その言葉に、緊張していた若い研究員たちの表情が少し緩む。
ノエルは手元の記録を開いた。
「観測結果については、すでに各部門へ写しを渡しています。今回、特に検討したいのは、空間の亀裂に対する魔法の干渉と、通常の魔力観測では変化を捉えられなかった点です」
彼は黒板に描かれた図を指した。
「魔法を放った際、亀裂の表面には明らかな変化が生じました。しかし、その変化を通常の魔力観測器で確認することはできませんでした」
「観測器自体には問題がなかったんだな?」
レオが尋ねる。
「はい。前後の点検でも異常はありません」
「となると、測定方法を考え直す必要があるか」
「その可能性はあります。ただ、まだ断定はできません」
ノエルは資料に目を落とした。
「魔法に反応する以上、何らかの干渉が起きていることは確かです。しかし、それが魔力によるものなのか、別の現象なのかも分かっていません」
「少なくとも、今の観測方法では捉えられなかった。それ以上のことは言えないな」
シエルが言うと、ノエルは頷いた。
「ええ。ですから、今後は観測の条件を変えながら、反応の違いを調べていくつもりです」
議論はその後も続いた。
研究員たちは持ち帰られた記録を照らし合わせ、検証できることと、現時点では判断できないことを分けていく。
アルヴィンが異形へ放った光属性魔法についても、ノエルからいくつか質問があった。
「三度とも、同じ術式を使ったのですか?」
「はい。出力には多少の差があったと思いますが、術式そのものは変えていません」
「分かりました。次の検証に役立ちそうです」
アルヴィンは少し照れたように頷いた。
以前の彼なら、自分の答えに自信を持てなかったかもしれない。だが今は、確かに経験したことを落ち着いて伝えている。
レオはその様子を見て、わずかに口元を緩めた。
やがて会議が進む中、一人の研究員が資料を見比べながら首を傾げた。
「あの……ひとつ確認してもよろしいでしょうか」
「何だ?」
「こちらの報告書にある『世界の割れ目』というのは、北東の森で確認された空間の亀裂を指しているのでしょうか」
「そのはずですが……」
ノエルが別の資料を手に取る。
「私の記録では『亀裂』としていますね」
「こちらには『空間の裂け目』と書かれています」
別の研究員が答えると、何人かが苦笑した。
ヴァルターは資料を覗き込み、しばらくして声を上げて笑った。
「はっはっは! これはいかんな。同じものを調べているというのに、呼び名が違っては話が進まん!」
「確かに、今後の報告書では呼称を統一した方がよさそうですね」
ノエルが言った。
「しかし、正式な名称をつけるには、まだ正体が分かっていません」
「ならば、ひとまず仮の名をつければよい」
ヴァルターは腕を組み、黒板に描かれた図を眺めた。
「……『狭間』というのはどうだ?」
「狭間?」
シエルがその言葉を繰り返す。
「ああ。あれが何と何の境にあるものなのか、それすら分からん。だが、ひとまずそう呼んでおけば、少なくとも話は通じる」
「なるほど。亀裂という見た目だけにとらわれずに済みますね」
ノエルが頷いた。
「異論がなければ、今後の研究記録では『狭間』という仮称を使いましょう」
集まった者たちから、特に反対の声は上がらなかった。
「よし、決まりだ!」
ヴァルターは満足そうに笑う。
「では、その狭間とやらの正体を、じっくり調べていくとしよう!」
ノエルが新しい記録用紙に、二文字を書き込んだ。
――狭間。
まだ、その正体を知る者はいない。
それでも、研究者たちは初めて同じ名前で、その未知の現象を呼ぶことになった。
***
王国西部には、幾重にも険しい山々が連なる地域がある。
深い谷を流れる沢は冬が近づくにつれて水量を減らし、日陰になった岩肌には、朝方の霜が昼過ぎまで残ることもあった。
山の麓に点在する集落では、以前から魔物の動きに変化が見られていた。
本来なら奥地に留まるはずの魔物が、人の暮らす場所の近くまで下りてくるようになったのである。
その一方で、ある谷筋からは鳥や小動物の気配が失われていた。
北東の森で起きた異変と似た報告だったことから、騎士団はこの地域でも調査を続けていた。
そして数日前。
山奥の岩壁に、奇妙な黒い亀裂が発見された。
それは岩そのものに生じた傷ではなく、何もない空間に縦長に開いているように見えた。
調査隊は深追いせず、その場を離れて王都へ報告を送った。
新たに派遣された討伐隊が現地へ到着したのは、それから数日後のことだった。
今回の部隊には、光属性魔法を扱う騎士が複数名同行している。
北東の森で異形の討伐に成功したという報告は、すでに騎士団内で共有されていた。
険しい山道を進みながら、指揮官は周囲の地形を確かめていた。
谷へ下りる道は狭く、両側には切り立った岩壁が迫っている。退路を誤れば、隊員たちが身動きを取れなくなるおそれもあった。
「この先が、報告にあった場所です」
先導する騎士が足を止めた。
指揮官は頷き、隊員たちへ振り返る。
「ここから先は慎重に進む。まずは退路を確保しろ。異形が現れても、勝手に追うな」
「了解!」
短い返事が重なる。
騎士たちは互いの位置を確認しながら谷へ下りていった。
やがて、岩壁の前にそれは現れた。
空間に走る、黒い亀裂。
陽光が差しているにもかかわらず、その内側はまったく見通せない。
指揮官が片手を上げ、部隊を停止させる。
「……報告通りだな」
騎士たちは距離を保ち、警戒を強めた。
しばらくすると、亀裂の奥から黒いものがゆっくりと現れた。
影だった。
地面に落ちる影とは異なり、空中に浮かぶその輪郭は絶えず揺らいでいる。煙のように伸び縮みしながら、時折、腕を思わせる細長い形を作っていた。
影は静かに揺れながら、騎士たちの方へ向きを変えた。
「光属性、準備!」
指揮官の号令に、魔法騎士たちが片手を前へ差し出す。
掌に淡い光が集まり、次第に強い輝きを帯びていく。
岩肌が白く照らされた。
「放て!」
凝縮された光が一斉に放たれ、影の中心を貫いた。
黒い輪郭が激しく乱れる。
光に触れた部分が大きく崩れ、霧のように散っていった。
だが、影は消えなかった。
失われたはずの部分がゆっくりと集まり、再び形を取り戻していく。
「……再生しているのか?」
騎士の一人が呟いた。
「もう一度だ!」
二度目の光が放たれる。
影は大きく揺らいだものの、やはり完全には消滅しない。
そのまま黒い腕のようなものを伸ばし、前衛の騎士へ迫った。
「下がれ!」
指揮官の声と同時に、別の魔法騎士が水流を放った。
迫る影を押し戻し、仲間が後退する時間を稼ぐための援護だった。
だが、水が影に触れた瞬間、予想もしなかったことが起きた。
激しい水流を受けた影の一部が、黒い飛沫のように散ったのである。
そこには、先ほどまでのような再生が見られなかった。
「今のは……」
水流を放った騎士が息を呑む。
指揮官も、その変化を見逃してはいなかった。
「水属性だ。もう一度、同じ場所を狙えるか!」
「はい!」
術者が再び片手を突き出す。
空気中に生まれた水が勢いよく流れを作り、影の側面へ叩きつけられた。
影は大きく形を崩し、欠け落ちた輪郭は元に戻らなかった。
光属性魔法とは、明らかに異なる反応だった。
だが、戦闘は容易ではなかった。
影は形を変えながら不規則に動き、術者たちが狙いを定めるたびに位置を変える。谷の狭さもあり、騎士たちは互いの動きを妨げないよう慎重に立ち回らなければならなかった。
何度か攻撃を重ねるうちに、魔法騎士たちの呼吸も荒くなっていく。
指揮官は周囲を見渡した。
退路はまだ確保されている。
しかし、このまま戦闘を続ければ、やがて隊員たちの動きが鈍るだろう。
「……ここまでだ。撤退する!」
「隊長、あと少しで――」
「深追いするな。全員で戻るぞ!」
指揮官の声に、隊員たちはすぐさま動いた。
前衛が距離を保ち、魔法騎士たちが交互に援護する。
影は何度か追うような動きを見せたが、やがて岩壁の近くへと戻っていった。
谷を離れたところで、指揮官は全員の無事を確認した。
負傷者はいない。
隊員たちが安堵の息をつく中、指揮官は記録係へ声をかけた。
「さっきの水属性の反応、記録できているな?」
「はい。二度とも、同じ変化が確認されています」
「よし。帰還後、すぐに報告する」
指揮官はもう一度、谷の奥を振り返った。
黒い亀裂は、岩壁の前に変わらず開いている。
その姿をしばらく見つめたあと、彼は隊員たちに出発を命じた。
***
西部山岳地帯からの報告が王都へ届くと、王立魔法研究所では再び関係者が集められた。
今回は討伐隊の指揮官も同席し、現地での戦闘について説明している。
「……水属性、か」
ヴァルターが記録に目を落とした。
「はい。光属性魔法でも影に損傷は与えられました。しかし、短時間で再生しています」
指揮官は落ち着いた声で続ける。
「一方、水属性魔法で失われた部分は、少なくとも我々が確認できた範囲では再生しませんでした」
ノエルは資料を受け取り、しばらく目を通した。
「同じ反応を二度確認できたのですね」
「はい」
「分かりました。術者の出力や距離も含めて、記録を照合してみます」
シエルは北東の森の報告書を手に取った。
「同じような影でも、有効な属性が違う可能性があるわけか」
「そのようだな」
レオが頷く。
「今後は光属性だけを前提に部隊を組むわけにはいかない。複数の属性を用意しておいた方がいいだろう」
「魔法部門にも共有しておきます」
セリナが答えた。
「今回のような地形では、前衛との連携方法も考え直した方がよさそうですね」
ヴァルターは二つの報告書を並べ、腕を組んだ。
「ふむ……。何が違うのか、まだ判断するには早いな」
「周囲の環境かもしれませんし、狭間そのものに違いがあるのかもしれません」
ノエルが言う。
「どちらにしても、もう少し比較できる情報が必要です」
「ああ。それでよい」
ヴァルターは頷いた。
「西部の部隊にも、よくやったと伝えておいてくれ。無理をせず、全員が帰ってきた。それだけでも十分な成果だ」
指揮官が深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
その後、騎士団では今後の討伐隊の編成について検討を進めることになった。
研究所でも、各地の観測記録を改めて照合する方針が決まる。
会議が終わり、出席者たちが次々と部屋を出ていく。
レオも騎士団へ戻るため席を立ったが、シエルはその場に残っていた。
机の上には、まだ多くの資料が広げられている。
「先生」
「ん?」
「観測器の精度を上げるだけでは、限界があると思いませんか」
ヴァルターは顔を上げた。
「ほう。では、どうする?」
「……測るものを、根本から見直す必要があるかもしれません」
その言葉に、ヴァルターは少し考え込んだ。
やがて、ゆっくりと笑みを浮かべる。
「面白い。お前もそう考えたか」
「先生も?」
「ああ。何かが起きていることは確かだ。だが、我々の道具がそれを捉えられるとは限らん」
ヴァルターは積み重なった資料の一冊を手に取った。
「まずは、各地の報告を洗い直してみるか。狭間が確認されていない場所も含めてな」
「分かりました。俺も手伝います」
「騎士団の仕事は片づいたのか?」
「今日の分は済ませてあります」
「ならば遠慮はせんぞ!」
ヴァルターは豪快に笑った。
「覚悟しておけ。まだまだ調べることは山ほどあるからな!」
シエルも笑い、空いている椅子を引き寄せた。
窓の外では、午後の陽が少しずつ傾き始めている。
二人の前には、王国各地から届いた報告書が再び広げられていった。
***
同じ頃、王都の騎士訓練場には、乾いた剣戟の音が響いていた。
「はあっ!」
エリア・アステリアが地面を蹴り、大剣を横薙ぎに振るう。
レオは一歩引いてその軌道をかわすと、すぐさま剣を返した。
迫る刃を、エリアは大剣の柄を巧みに操って受け止める。
甲高い金属音が響き、二人の足元で砂埃が舞った。
「っ……!」
エリアは押し返された勢いを利用して身体をひねり、再び大剣を振り上げた。
レオはその一撃を受け流し、わずかに口元を緩める。
「前より踏み込みが速くなったな」
「そうでしょ?」
エリアは嬉しそうに答えた。
「レオがいない間も、ちゃんと練習してたんだから」
「そのようだな」
「でも、まだまだいくよ!」
エリアは軽やかに踏み込み、再び大剣を振るった。
大剣の重量を生かした彼女の攻撃は、一撃ごとに鋭さを増していく。レオも力任せには受けず、間合いと呼吸を読みながら的確に応じた。
幾度となく刃がぶつかり、そのたびに二人の足元で砂が舞う。
やがてエリアが大きく息を吐き、剣を下ろした。
「……少し休憩しない?」
「ああ、そうするか」
レオも剣を収め、額の汗を拭った。
エリアは訓練場の端まで歩き、大剣を壁際に立てかけると、その場に腰を下ろした。
「んーっ、楽しかったぁ」
両腕を頭上へ伸ばし、満足そうに息をつく。
「相変わらず元気だな」
レオが笑うと、エリアは顔を上げた。
「レオと手合わせするの、久しぶりだったもの。ずっと楽しみにしてたんだよ」
「俺も楽しみにしていた」
「ほんと?」
「ああ」
エリアは嬉しそうに目を細めた。
「それなら、よかった」
少し離れた場所では、若い騎士たちが木剣を交えている。時折、指導役の声が響き、訓練場にはいつもの活気が満ちていた。
休憩を終えた二人は、もう一度だけ剣を交えた。
最後まで互いに決定的な隙を見せることはなく、十分に身体を動かしたところで稽古を終える。
「今日はこのくらいにしておこうかな」
エリアは満足そうに頷き、壁際に置いていた荷物をまとめ始めた。
汗を拭いた布を鞄へしまい、水筒の蓋を閉める。
そのあと、小さな手帳を取り出したときだった。
ぱらり、とページが開き、間に挟んでいた一枚の葉が滑り落ちた。
「あっ」
葉は風に乗ってひらりと舞い、足元の砂地に落ちる。
レオもそれに気づき、視線を向けた。
「何か落ちたぞ」
「うん、ありがとう」
エリアはしゃがみ込み、葉をそっと拾い上げた。
赤と黄金色が入り混じった、秋の葉だった。
「綺麗な葉だな。どこで拾ったんだ?」
「これ?」
エリアは指先で葉をつまみ、懐かしむようにその色を眺めた。
「この前、とっても素敵な場所を見つけたの」
「ほう。どこだ?」
エリアは少しだけいたずらっぽい笑みを浮かべ、葉を胸元へ引き寄せた。
「まだ秘密!」
「秘密?」
「そう。今はまだ教えてあげない」
あまりにも楽しそうな返事に、レオは思わず笑った。
「そうか。随分と気に入った場所らしいな」
「うん。景色も綺麗で、とても気持ちのいいところだったの」
エリアは葉を手帳の間へ丁寧に挟み直した。
「また行きたいなって思ってるんだ」
「それはいいな」
レオは彼女が手帳をしまうのを見守ったが、場所についてそれ以上尋ねることはなかった。
エリアは鞄を閉じると、立ち上がって大剣を背中へ戻した。
「さて、そろそろ帰ろうか」
「もういいのか?」
「うん。そろそろお腹も空いてきたし」
「……結局、最後はそれか」
「だって、あれだけ身体を動かしたんだもの。レオだってお腹空いたでしょう?」
「まあ、それはそうだな」
二人は笑いながら訓練場を後にした。
午後の陽は西へ傾き、王都の石畳を柔らかな橙色に染めていた。
通りには家路を急ぐ人々の姿が増え、店先では商人たちが品物を片づけ始めている。荷車を引く者の掛け声や、道端で立ち話をする人々の声が、夕暮れの街に重なっていた。
「あ、レオ。見て」
「何だ?」
「あそこのお店、新しい焼き菓子が出たんだって」
エリアは通りの向こうにある菓子屋を指さした。
店先には小さな札が立てられ、季節の果実を使った焼き菓子が並んでいる。
「……さっきから食べ物の話ばかりだな」
「そんなことないよ。今、見つけたんだもの」
エリアは少し不服そうに答えたが、その表情はどこか楽しげだった。
レオは店先へ目を向け、軽く笑った。
「それなら、少し寄っていくか」
「いいの?」
「ああ。せっかくだからな」
「じゃあ、一緒に選ぼう」
そう言って、エリアは彼の隣へ戻ってきた。
二人は肩を並べ、賑やかな通りを歩いていく。
王都のどこかでは、今日も新しい発見が生まれ、まだ答えの出ない問題に頭を悩ませる人々がいる。
遠く離れた山々には、今も黒い亀裂が開いたままだ。
それでも、夕暮れの街には変わらない日々の営みがあった。
誰かが店を閉め、誰かが家族の待つ家へ帰り、誰かが大切な人と笑い合う。
レオは隣を歩くエリアに目を向けた。
彼女は菓子屋の店先に並んだ品々を、興味深そうに眺めている。
「レオ、これも美味しそうね」
「……まだ選んでいたのか」
「せっかくだから、ゆっくり選びたいじゃない?」
エリアは穏やかに微笑んだ。
レオは呆れたように笑い、彼女の隣へ並んだ。
夕暮れの王都には、穏やかな時間が流れていた。




