その1時間は休憩です ~会議までの1時間
私は正直高給取りではない。
なので、世間から見れば些細な金額でも気になってしまう。
例えば、終業後の会議だ。会議そのものに文句はない。仕事なのだから、必要なら参加する。そこは理解している。
問題は、その時間である。私の職場では、時々、通常業務が終わった後に会議が入る。
しかも開始は終業から1時間後。
最初に聞いた時は、当然こう思った。
「じゃあ、その1時間は残業ですよね」
「いや、その時間は休憩だから」
違った。
残業代は出ないらしい。
ある日、さすがに空腹に耐えられなくなった。会議が終わるのは21時や22時になる。昼食を食べてから何時間経っていると思っているのだろう。
せめてコンビニでおにぎりを2つくらい買ってこよう。
そう思って席を立った。
「ちょっと出てきます」
すると、すぐに声が飛ぶ。
「どこに行くの?」
ちょっと、コンビニです。そう答える前に、別の声が続く。
「会議資料の最終チェックは済んだ?」
更に。
「この数字、念のため確認しておいて」
「ついでにこっちも見てもらえる?」
気がつけば、席に戻っている。
そして仕事をしている。
休憩時間なのに。
不思議である。
私の知っている休憩の概念とは少し違う。休憩というのは、本来、労働から解放される時間だった気がする。
だが、この職場では違うらしい。
仕事をしていても休憩。
何とも便利な言葉である。
会社にいなければならない。
いつ呼ばれるかわからない。
資料の修正依頼が飛んでくるかもしれない。
なのに、休憩。
どうやら最近の休憩時間は、自由に使える時間ではなく、職場で待機しながら次の仕事を待ち、呼ばれれば対応する時間を指すらしい。
会社に拘束されていても休憩。
会議のために待機していても休憩。
便利な言葉だ。
もしこれが本当に休憩なら、私は長年、労働という日本語を誤解していた事になる。
たかが1時間。
そう言う人もいるだろう。
だが、1時間あれば昼食代くらいにはなる。最近値上がりを続けるおにぎりだって2つは買えるし、飲み物だって買える。
何より、その1時間は私の時間だったはずだ。
会社のために使っているのに、何故か存在しない事になっている。
会社というのは不思議な場所だ。
売上の数字が1時間分消えたら大騒ぎになる。経費が1時間分消えたら原因究明が始まる。
だが、従業員の時間だけは違う。
何故か簡単に消える。
しかも誰も困らない。
いや、正確には会社だけが困らない。
その日も私は会議に出席し、資料を確認し、指示に対応した。
ただし、会議前の1時間分は休憩だったらしい。
なるほど。
どうやら休憩という言葉には、時間そのものを消し去る力があるらしい。
少なくとも私の1時間は、その日も見事に消えていた。
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