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ご遠慮ください~あなたはしないのに?

 少し前、来客が多い時期がありました。

 普段なら足りている駐車場が、その時期だけは完全に足りない。

 駐車場が埋まるだけならまだしも、ついには路上駐車まで出始めました。


 当然、近所から苦情が入ります。

「そりゃそうだよね・・・」

 私は思いました。そこで上司に相談しました。

「しばらく続く予定ですよね。近くの駐車場を会社で借りる事はできませんか?」


 来客が多い。

 駐車場が足りない。

 路上駐車が発生している。

 近所から苦情も来ている。

 問題は、かなり明確です。


 ところが返ってきた答えは、実にシンプルでした。

「お金がないから無理」

 終了。


 いや、分かりましたよ。

 会社にお金がないなら、ないものは仕方ありません。


 では次善策を考えましょう。

 お客様には来店時間をずらしていただくようお願いする。

 そして、路上駐車をしないよう張り紙をする。


 ここまでは、まあいい。


 問題は、その張り紙の文面でした。

 私は当然、『路上駐車禁止』と書くつもりでした。


 ところが上司が言いました。

「そんな強い言葉はダメよ」

「・・・でも、路上駐車は禁止ですよね?」

「『ご遠慮ください』にしなさい」

 私は一瞬、黙りました。

「・・・その文面じゃ、分からないと思いますよ」

 すると上司は、少し苛立ったように言いました。

「それくらい分かるわよっ」


 ・・・本当かな?


 私は心の中で首を傾げました。

『禁止』と書くと強すぎる。だから『ご遠慮ください』。

 なるほど。

 日本語としては、確かに柔らかい。


 ただし。

『ご遠慮ください』と書かれていて、本当に遠慮してくれる人ばかりなら、世の中の注意書きはもっと少なくて済む。



 ここで、皆さんに少し思い出していただきたい事があります。

 コロナ禍の頃、学校行事の対応で、さまざまな制限がありましたよね。

 人数を減らしたい。でも保護者の参観も要望がある。その結果捻り出したのが『児童1名につき、保護者1名でのご協力をお願いします』『同居家族以外の参観はご遠慮ください』

 そんな案内が、普通に出ていました。


 では、その上司はどうだったか。・・・同居しているわけでもない孫の授業参観に行っていたのは、誰でしたっけ?


「だって、孫の運動会なんだから見たいじゃない」

 そう言って、学校から「敷地内への立ち入りはご遠慮ください」と言われれば、「じゃあ、塀の外ならいいでしょ」と。そして門の近くにぴったり張り付いて、運動会を応援していましたよね。


 いや。

「そこまでして見たいか」と思ったのは、私だけでしょうか。


 更に最近もありました。

 学校から、『学校に駐車場はありませんので、駐車はご遠慮ください』という案内が出ていた。

 ところが、「間に合わないから」という理由で、会社から車で学校へ行き、普通にとめていましたよね。

 そして後で、こう言っていました。

「誰にも何も言われなかったわよ」


 ・・・覚えていますよ。



 だからこそ、今回の話に戻るのです。

『路上駐車はご遠慮ください』という文面にしようとしている上司に、私は聞きたい。

 あなたの中では、「ご遠慮ください」と書けば、他人は車を停めなくなるんですか?


「だって、普通は分かるでしょ」

「普通って、どの普通ですか?」

「『ご遠慮ください』って書いてあれば、駐車しちゃいけないって分かるじゃない」

「・・・」


 自分の顔を鏡で見てください。



 勿論、「ご遠慮ください」という表現自体を否定しているわけではありません。

 状況によっては、とても便利な言葉です。

「大声での会話はご遠慮ください」

「飲食はご遠慮ください」

「長時間の滞在はご遠慮ください」

 そういう場面では、相手への配慮を残した柔らかい表現として機能します。


 ただし。

「遠慮してください」と言われた本人が、それをどう解釈するか。

 そこが問題なのです。


『ご遠慮ください』と書いてあっても、『ちょっとくらいならしてもいい』と解釈しているなら、百歩譲ってわかります。むしろ、その考え方は理解できます、違っていても。思考としては理解できます。



 でも、「それくらい分かるわよっ」と言った本人が、過去に同じような「ご遠慮ください」を自分には適用しなかった。


 そこなんですよ。


 自分が守らなかった注意書きを、他人は守ると思っている。

 この思考回路が、私にはどうにも理解できません。


 自分は停めても誰にも何も言われなかったから大丈夫。

 でも、他の人はご遠慮くださいで、路上駐車しなくなる。

 ・・・その境界線は、いったいどこにあるのでしょう。


 もしかすると、私がやるのは事情があるからいい。でも他人はダメという、ものすごく便利なルールが存在しているのでしょうか。

 それなら最初から張り紙に、「私以外の皆様は、路上駐車をご遠慮ください」とでも書いておけばいい。

 少なくとも、ルールの適用範囲だけは分かりやすい。

 勿論、そんな張り紙は作りませんけど。



 結局、注意書きというのは、書いた側の「これくらい分かるでしょ」という気持ちではなく、読んだ側がどう受け取るかが大事なのだと思います。

 そして何より、自分が「ご遠慮ください」を「まあ、いいか。いいでしょ」と解釈した経験があるのなら、なおさら他人の解釈を信用しないほうがいい。


 そもそも「ご遠慮ください」で止められる人なら、路上駐車なんてしないでしょう。

 本当に察することのできる人は、誰かに注意される前に、自分で考えてとめません。注意書きが貼られるところまで迷惑をかけません。



「ご遠慮ください」ではなく、「禁止です」と書かなければ伝わらない人間がいる。それは仕方ありません。

 けれど自分はそれをきちんと理解できていると思い込む事ほど怖い事はありません。そして、そういう人ほど、自分以外には普通は分かるでしょと言うのです。自分が「ご遠慮ください」を無視した事は、都合よく忘れて。


 自分が守らなかった言葉であっても、他人は守ってくれると思うわけですね。

 本当に便利なものです。


読んでくださってありがとうございます(*_ _)

ポイントを入れてもらえると、嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
 時司 龍さん、こんにちは。 「時司の愚痴日誌 ご遠慮ください~あなたはしないのに?」拝読致しました。  駐車場が、一時的に足りない。  上司に相談。他の駐車場、借りませんか?  予算が無い。無…
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