預かり入院と相談と
二〇二四年、師走。
父に施設見学に行くか聞いてみたが、「ケアマネジャー決まってからにする」と言われ、とりあえず保留。
まぁ、高齢者介護施設……老人ホーム、と一言で表せる物の実際には区分が細かい細かい。
サービス内容や公的施設・民間施設、受け入れレベルの違い等、初めてな事が色々ありすぎて、如月の頭が正直限界かな…とはなっていた。
そうなると、やはり専門知識ある人が入ってくれた方が確かに良い。
言うて、あのワガママをうまく流せるケアマネさんがいるのかどうか…。
そういや、前話では施設区分に触れる事なく流したので、どういったのがあるかをざっくりと紹介。
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【民間施設】 管轄は個人/法人などの民間企業
自立の方から要介護4まで対応している
月額利用料は各施設ごと個別設定なので、運営企業によって差異が大きい
利用者側の条件にあわせて探すことができることが大きなメリット
主な施設
①介護付き有料老人ホーム
多くの人が思い浮かべるであろう「老人ホームといえば」な施設(と如月が勝手に思ってる)
要介護認定の方だけ入所出来る《介護専用型》施設と、要支援/介護認定の方、自立の方も入所出来る《混合型》施設がある
生活支援や身の回りのお世話、医療ケアなど、多くのサービスを提供
24時間介護職員が常駐していることが殆どで、夜間対応や終身/看取り対応が可能なところもある
介護サービス費用が定額で予算・見積もりがしやすい
先で述べた通り施設によって金額差異が大きく、入居一時金と月額相場も土地柄などによっても大きく変わる
施設によって介護サービス費用とは別に費用がかかる事もあるため、施設見学は必須かもしれない
如月達が見学に行った施設は後者の《混合型》だった
②住居型有料老人ホーム
自立の方から介護認定度が高い方までが入居できる施設
施設規定の介護サービスを受けられる❶とは違い、利用者が必要とする介護サービスを自ら選択できる
そのため、入居者それぞれで利用料金が異なっている
入居一時金と月額相場は❶と較べて抑えることが出来る
ちなみに相談窓口の担当者さんは「安価版の有料老人ホーム、という認識が覚えやすい」と話していた
③サービス付き高齢者向け住宅
認定に関わらず入居することが可能
「サービス」は介護ケアではなく、生活相談や安否確認を示している
❶・❷と大きく違う点は《施設》ではなく《住居》なので、外泊などにも寛容なことが多く、自立生活を楽しむことが出来る
介護サービスは❷の形態とほぼ同じだが、外部の居宅サービス事業者に依頼する形になる
入居者は賃貸契約を結ぶことになるが、契約継続する限り、入所待機などの心配がない、というメリットがある
【公的施設】管轄は国・地方自治体など行政機関
月額利用料が安いので人気だが、介護度制限や入所待機者が多かったりと制約も多い
自宅介護が困難な人を受け入れてくれる傾向がある
主な施設
❶特別養護老人ホーム(通称…特養)
要介護3認定以上である事が条件
要支援1・2は入居不可 要介護1・2は別途審査・認定が必要
24時間体制で専門的な介護ケアが受けられ、終身・看取りなどにも対応
夜間常駐看護士は居ないため、緊急時の連絡は自身で行う(オンコール対応、という方式らしい)
日常的ケアが必要だと入所は難しい、というデメリットもある
❷介護老人保健施設(通称…老健)
民間施設の有料老人ホームや①とは違い、リハビリと医療ケアをしながら在宅復帰を目指すための施設
「家に戻ること」が目的なので、入所が短期という特徴がある
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民間施設・公的施設ともに1種類ずつ他の形態があるんだけど、説明した5種とは入所条件が介護認定以外のものが関わったりして結構違うので、ここでは割愛。
閑話休題。
祖父は「俺ぁ病人だ」節を効かせ、優先順位は自分だとでも言うかように身内を使う。
病院の送迎は当たり前だし、自分が出掛けたくなったら、上叔母と従弟を呼び付けて遠出。
食べたいものがあれば、それを買ってくるまでずっと言い続ける。
正直言ってやりたい放題。大の大人のコレはマジでイタいしツラい。
それでも、如月も父も「年明けには動こう」と耐え続けた。
なんだかんだ年末も近くなった頃、「体調が悪い」と言い出した祖父を父が病院へ連れて行った日の事。
仕事から帰宅すると祖父の気配はなく、けれど父は居る。
「あれ?どうかしたの」
「ああ。親父、入院だってよ」
「今日の[体調悪い]はホントだったの?!」
「あー…んーー……」
驚く私への父の反応は歯切れ悪いモノ。
何なら「どう説明すれば良い」と言いたげに母へ目を泳がせていて。
珍しすぎる反応に首を傾げて、よちよち歩きで来たチビらぎを抱っこする。あー可愛い、笑顔最高、癒しだわ。
「担当の先生が[年末年始くらいはゆっくり過ごせた方が良いでしょうから]ってお父さんに言ってくれたんだって」
「………ん?」
目を父に戻せば、相変わらず微妙な表情。話が見えないような、何となーくわかったような。
おそらくこれかな、と思いながら、顔が変わらない父に口を開く。
「えー……多分だけど、診察を受けたものの特にどこが悪いって言うのはなかったんだね」
「おう」
「だけど、本人は体調不良を主張し続けていたわけだ」
「ん」
「したら先生が[ゆっくり過ごしたらどうだ]と提案してきてくれた、と」
変な顔したまま頷いた父。
なるほど、コレ【預かり入院】ってやつだ。
【預かり入院】
介護を行っている側が休息を取れるよう、医療機関が一時的に要介護者を《入院》と言う形で預かる仕組み
期間はおよそ1週間から2週間
介護施設サービスでいうところの[ショートステイ]と同じで、入院中は病院提供介護ケアが受けられる
医療機関での受け入れなので、重度が高くても受け入れてもらえることが多い
今はレスパイト入院、と言うらしい(知らなかった)
作品資料として調べてる時に頭には入れていたが、実経験するとは思わなかった。
その後に父から聞いた話、入院している間にケアマネジャーを決め、今後どうするかを相談する流れになったという。
ちなみに、医師から祖父への説明は「検査してみないと分からないので、入院しましょう」ということにしたらしい。
嘘も方便。年齢を考えたら瓢箪から駒になる可能性もあるけど。
一通り話し終えた父は少しホッとしていて。
ああ、やっぱり疲れていたんだなぁ……と内心で呟いた。
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二〇二五年、卯月。
病院から不穏な連絡が来ることもなく、穏やかに新年を迎えた如月家。
三が日はのんびりと過ごし、仕事始め…から数日後に祖父退院。もちろん父は休暇を取らされた。
しかし、こちらも動いていなかった訳ではなく。
退院前、病院からの紹介でケアマネジャーさんが決まり、退院後についての相談もしっかりしていた。
高齢者介護施設入所にしたい旨を先生経由で伝えられていたので、水面下ではあったが話はすんなり進んでいたらしい。
…「らしい」をつけるのは、如月は父から聞いた話だからである。
ケアマネさんとの相談にまでついて行って無いのです。
「そこまで頼むのはさすがに悪ィし、上妹来るから着いてこない方が良い」と言われて。
父は月額費用を多少引き上げて、それ以外は前話で出した施設検索条件で、ケアマネさんに施設探しをお願いした。
そして数日後、ケアマネさんとの面会日。
「此方の有料老人ホームが宜しいかと。近郊では一番手厚い介護ケアで、施設指定の病院が出張回診にも来てくれます」
「…マジか………」
「えっ、何?」
「去年、娘と行ってきた」
「あ、そうなんですね。そしたら─」
「私、それ知らないけど?!」
「何でわざわざ報告お前にしなきゃなんねえの」
「……えっと、施設見学は予約しなくて大丈夫そうですか?」
「はい。ちっと、家で一回検討します」
まさかの、施設被り。
仕事から帰宅後、父から聞かされて爆笑してしまった。
「いや、まさかだってそんなコト起きるなんて思わねえだろ!?」
「まぁ確かに確率は低いよねぇ」
それはもう何かの思し召しじゃない?
如月の添え言葉にため息をつきつつも頷く父。
結局、施設はそこに決定したのであった。




