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無涙葬送  作者: 如月 巽
7/10

施設探し のち 見学。

 申請が通った。という事は、ケアマネジャーを付けてもらったり、本腰入れて施設探しをする段階に来たわけで。

 腰の重かった父がようやく動き、介護認定も取れて一安心…なんてコトになる訳がない現実。


 後は野となれ山となれ、と出来たらどれだけ楽か。

 フィクションの世界ならサクサクと進むのに!


 そんな都合良い展開なんて起こり得るはずもなく、空き時間はタブレットか携帯で施設情報と睨めっこ。


日に日に父への要求を増やしていく祖父。

希望を押し通そうと連絡してくる上叔母。

板挟みに辛抱するも、顔が険しくなる父。


 そんな血族(みうち)の状況を一刻も早く変えねば。

 その一心で、普段は執筆や原稿に当てている休憩時間も、介護施設検索に時間を割いた。


 おそらく一般的には、毎日なんて施設検索する必要はないと思う。

判りつつもやっていたのは、父の要望条件に出来る限り合致する物が中々なかったから。


・隣県までであれば可

・介護士常駐

・終身介護可能(看取りがあるならなお良し)

・病院などの送迎をしないで済む

・月額12万以下

 

「そんな施設、CMのヤツ位しか無いわい!」

「結局高くつくに決まってるから嫌だ!探せばあるはずだろ!!」

「なんだその子供みたいな理由!探す身にもなれ!」

「そういう面倒は引き受けるっ()ったろ!!」

「モノには限度ってモンがあるんだよ!どっか条件緩和しろぃ!!」


 漫画みたいなやり取りだが、どっこい丸ごと現実の言い争い。

 まぁ、提示条件のうち上の3つまでは割とあるのだが、問題は残りだ。

4番目の時点で《完全介護型高齢者用施設》を見つける必要があるし、最後の項目に至っては最早無茶振りレベル。

 何が言いたいか、って?



できるなら、金を使いたくない。



 話を更新したことによってタイトルが目に入って、たまたま立ち寄っただけの方からしたら、「うわなにコイツやば…」となるかも知れない。

 呟き系SNSに書こうものなら「自分の親なんだからそのくらい出せば良いのに」とリプライが並びそうな一言だ。うん、自覚はある。あるの。


ただ、ここまでのエピソードを思い返していただきたい。


自分の入院代を義父に全て払わせる。

人様の物を盗って謝罪はしない・警察で暴れる。

名入りの物を気にせず人に売る。

幼子に手をあげようとする。

貸したものは一切返さない。

人からの親切は当たり前、一切の感謝もない。

けれど他人には良い面見せ。


ここまで酷いとさすがの如月でも、憐憫や同情の気持ちは一欠片も湧かない。

「昭和初期生まれは仕方ない」と思うかも知れないが、多分これは人間性の問題。

明治生まれだった曾祖父が時代に対して柔軟な考えが出来る人だったから、[○○生まれ]で括るべきではないと思う。


さて、話を戻して。


起床から就寝まで完全介護の食事付き。

病院送迎ナシで介護士が常駐する施設。

なおかつ月額は、できる限り低価格帯。

隣県までOKと言われても中々見つからない。


 いくつかの施設から資料請求し、施設検索サイトの個別担当さんと相談。

 それから1週間後、気になっていた県内市外の完全介護施設を予約。

その1週間の間にも小さいゴタゴタはあったが、そこは割愛。時間を進める事にする。


──────────


 12月入って最初の日曜日。

 ぶちぶち続く父の愚痴を聞き流しながら、見学を申し込んだ高齢者介護施設へと向かう。


 希望月額よりはそこそこ高いが、それ以外の父の希望は叶っているので、難色を見せる父の顔色は無視して申し込んだ、というのが真相。

と言うのも、実は認知症の有無はハッキリしていなかったため、そこも考慮する必要があった。

 見学先は認知症罹患高齢者の受け入れ体制も整っていたため、「高すぎる」と言われても反論できるようにしたのである。


 ぶっちゃけ、価格帯とかについては施設担当者さんに説明任せた方が良いし。


 行った時間帯はレクリエーション中で、館内には楽しげな雰囲気が漂う。

 和やかに迎えてくれた担当者さんの表情に対し、懸命に普段の顔を作る警戒心マックスの父。

 本人は普段通りのつもりだったんだろうが、身内だから解る感覚。私が緊張するから止めてくれぃ…。


あまり施設仔細を書くものではないので割愛するが、説明を受けた父が一言。


「家の者が手を一切出さなくて良い施設探したら、確かにこれぐらいになっても仕方ねェわな」


ようやく如月の言葉の意味をわかってもらえたらしい。

怒鳴り合いは無駄じゃなかったよ。


 見学後の帰路。

「正直、値段はまだ納得してねえ」

(まだ言うか)

「でもまぁ、候補としては入れとく。ありがとな」


何でこの(ひと)は素直に言えないんだろ。

話す相手が実娘()だからか、それとも他に理由があるのか。


「どーいたしまして」


そう考えちゃってる自分も素直じゃない。

つまりはお互い様、とりあえずここは返し言葉だけにしておこう。


この施設、次の話にも関わってきます。

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