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無涙葬送  作者: 如月 巽
15/16

終わりの終わり。

今話はいわゆる【後日談】

前話までの胸糞感は……おそらく少ないかと。

 葬儀翌日。

 この日は上長に連絡して1日休みを伸ばしてもらって、チビらぎと過ごしながら家事とお茶出し。

 両親は祖父を偲んで線香を上げに来る方の応対もあるし、午後には大物家具を処理場に持って行くための片付けもするため、【遺品整理の手伝い】という形で有休を取った。


 これまでの話には書いてないけど、実際には祖父逝去当日から通夜前日までの間にもずーっと片付けはしていた。なんなら入所後からずっと。

 やっていた事を毎話全部盛りすると、読みづらいのが更に読みづらさ倍増なのは確定だったんで書かなかっただけで。


 祖父は亡くなる4年くらい前から「高齢者はあまり風呂に入らない方が良い、と人から聞いた」と言い、医師に診てもらう前日にシャワーを浴びる程度だった。

 こちらが「体を拭こう」と提案しても「体冷やしたらどうするんだ」と断固拒否されてたし。

 自分の用がある時以外は部屋に籠りきり。

 自分で買ってきた物で漬物を部屋で作ったり、大量に大根おろし作って自室冷蔵庫に数日保存しながら食べてたりしてた。

 してた、ので……その、なんだ、畳や壁が臭いを吸ってしまっていてですね、めちゃくちゃやべえ異空間だったワケです。


おそらくアレばかりは、実際経験しないことには想像しがたい。

食べ物の匂いに置き換えるのは食べ物に失礼だし、靴下のニオイも……おそらくなんか違うとおもう。

 とりあえず、同居中はどんな有名消臭剤を置こうが撒こうが本当の一時凌ぎに過ぎず、来客時に「このニオイ、どうしたの?」って聞かれるレベルだった。

ちなみにニオイ、今はもう完全に消えてます。

完全に消えるまで半年以上掛かったけど。


 線香を上げに来てくれる方のなかには、子供の頃に会った方も居て、「優しいお爺ちゃんだったし、寂しいでしょう?」と言われて曖昧に濁す。

 祖父の弟さんが来てくださって、昔の話を色々聞かせてくれたけど、その話の中には自分が知る祖父の姿はなく、やっぱり他人の話をされている様な感覚。

 その後しばらくして父は祖父の弟さんともに出掛け、チビらぎと母と3人で少し遅めの昼食。


「あーちゃ、あーちゃ」

「…え、あ。ごめんねーらぎさん、どしたー?」

「じゅれー」

「はいよ、今持ってくるね」


 チビらぎ用ゼリー飲料を渡して、食器を置きにキッチンへ入ると、換気扇下でタバコを咥えた母にじっと見られる。


「何?」

「少し休んできたら?言われたの辛いんでしょ」

「んー…大丈夫。一人時間になる方が、いらん事考えそうで」


葬儀が終わったら、祖父に対しての感情に何か変化はあるかも知れない。

亡くなった日から火葬まではそう思っていた。

けど、それよりも別の衝撃が大き過ぎたせいか、故人に対しての気持ちの整理がしたくても、考える事自体が出来なかった。

気を緩めると、言われた言葉への怒りと哀しみが込み上げて、涙がバタバタ。

前晩からそれが繰り返しになってしまっている状態ゆえに、一人になりたくなかった。


 その日の午後からは一緒に遊んだり絵を描いたりしながら、空き時間に四十九日法要の葉書を書き、夕飯と風呂を済ませてからはチビらぎの寝る時間と同じ時間に寝ついた。



──────────


それから4週間後。



 如月は仏壇の日々水換え、両親は週一早朝で墓参りを行って、あっという間に四十九日法要。

 本来の四十九日法要日に日取りが出来なかったため、遅れるよりは良いということで約1週間早まった。

 施主となる父と私は先に菩提寺に来て住職に挨拶。

「お子さんが飽きちゃったら、外出て大丈夫ですからね」と言っていただき、一安心。


 母と旦那、チビらぎが帰りに渡すお弁当を受け取って来てから到着し、それから間も無くして親族達も到着。

 上叔母がこっちを見て話しかけてこようとしたが、それに気付いたらしい父が割り込んで「先に入れ」と寺に向けて手を振る。

 その後も家族の絶妙な回避技により、心の平穏を保ったまま法要は終わり、墓参りも何事なく終わった。


 それからしばらく父と妹達は話し込み、2家族を見送ってから父の車へ。


「ひとまずお疲れ様、ってところだね」

「いやまだ終わらねーのよ」

「え?なんで?」

「言うほどの額じゃねーけど、遺産分配とかが残ってンだわ…」



 うんざり顔の父に同情するしかなかった。

次回は最終話になります。

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