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無涙葬送  作者: 如月 巽
11/12

遺影と費用と戒名と

読んでくださりありがとうございます。


EP.10より【死】【葬儀までの流れ】【縁者問題】について触れています

今話は【葬儀場・菩提寺での手続き】になりますが、EP.10に較べれば重くありません

それでも、生理的嫌悪感・恐怖心を感じた場合は、閲覧中止または休憩を取るなどをお願いします

なお基本的に【血縁者問題】は毎回です、酷い話だ


読者様の精神面を第一にお考え頂けますと幸いです



【《戒名》《位牌》について】

《戒名》は宗派によって《法名》と呼び名が違います

如月家の菩提寺宗派は《戒名》と呼ぶので、タイトルおよび作中で用いております

位牌については宗派に関わらず置かない方もいらっしゃるので、「そう言うのがあるんだなぁ」程度に思っていただければ幸いです



 話の時間軸は前話の夕方から。


 夕方…と言っても16時過ぎ頃。

 気絶前の頭痛が落ち着く程度には身体は復活。旦那とチビらぎはまだ寝てる。

 やや怠さは感じながらもリビングへ行けば、やはり疲れた様子の母が睡魔に誘われてウトウト。


「お母さん、大丈夫?」

「っあ、ごめん、寝ちゃってた」

「いや別に謝らなくて良いんだけども。みんな眠いよそりゃ」


 明け方より前から起きて、全員仮眠に近い状態。

 まして二人の場合は斎場で要らぬ心労まで掛かったのだから、疲労度は如月夫婦よりもかなり高かろう。


「夕飯作るの面倒だから、買ってきちゃって良い?」

「買いに行くのは賛成だけど、私行ってくるよ。駅前の牛丼屋で良い?」

「お願いしちゃって良い?」

「全然構いません、喜んでお引き受けします」


 少し散歩したかったのもあり、寝てる二人への伝言をお願いして外出。

 如月の通常速度(※歩速が速いらしい)徒歩で地元駅まではおよそ10分強。大した距離ではない(と思ってる)けど、大して動かしてない身体を起こすには丁度いい。

 宣言通りの夕飯を購入して帰宅すれば、ちょうど風呂場から出てきた半裸マンのチビらぎ登場。


かーちゃ(母ちゃん)おかーぃ(おかえり)ー」

「らぎさんただいまー」


 ニコニコしながら母にリビングへ抱っこ連行、からの着替え。程なくして旦那も風呂から上がったので、全員で店屋物の牛丼を食べる。

 疲れた身体に甘じょっぱ牛肉は大変に染みた……。

 その後、正確すぎる体内時計によって眠くなったチビらぎ氏を旦那が寝かしつけに連れて行き、夜家事を済ませたのち、父と共にその日最後の一仕事に挑む。


それは《遺影用の写真探し》。


 背景なし・単身・胸上の遺影は、写真を遺族が選別して葬祭業者に持ち込み、加工・印刷・額装を依頼するのが一般的。

 近年では故人のスナップ写真を引き伸ばした物や、遺影用撮影してもらった物を使うこともあるようだが、如月家は例に漏れず写真加工をしてもらうことに。

 おそらく業者によって希望される写真は違うかも知れないが


・正面撮影で首まで写っており、自然な表情のもの

 →紋付着物を合成をしてもらったため、首まで写ってる必要があった

・背景と人物の区別がつきやすい

 →背景除去作業しやすくするため

・眼鏡などに映り込みが少ないもの

 →多少は除去加工は可能だが不自然になるかも、と言われたらしい


と、3つの条件にあった写真を探すことに。

ちなみに年代は特に問われなかった。家々で御事情が違うだろうから、そこ迄は指定しないのかも知れない。多分おそらく。


上妹(あいつ)が言うには、箪笥の引き戸の中にアルバムがって話……あ、ほんとにあった」

「なんであの人が知ってるの、人ン家のこと知ってるの怖すぎでは」

「前の家の時、そこに入ってたって話だったんだよ」

「いやどっちにしてもなんだが?!」


 本当になんで知ってるんだよ、って思いざっくりと経緯を聞いたところによると。

 祖父がシルバー人材(高齢者等就業支援)センターで働いてた頃、そこで知り合った人と旅行した際、レンズ付きフィルム……今は使いきりカメラって言うのか?まぁそれで撮っていたらしい。

 上叔母は写真屋への現像を頼まれ、出来上がったものを届けた時に、いつも同じ場所からアルバムを取り出していたのを見ていたので「おそらくそこに入ってるんだと思う」と言われたんだとか。


なんだろう……こう、なんとも言い表しにくい感情。これに限ってはは上叔母ガーとかではないのは確か。


 モヤモヤしつつもアルバムの日付を確認すると、2000年以降のアルバムは十数冊。めくっていくと、本人が写っている写真自体はさほど多くない。

 撮られるのは苦手な人間だったから、仕方ないと言えばそうだが、それにしたって条件にうまく嵌る写真が見つからなさ過ぎる。


 父と唸りながら選別し始めてから1時間。

 写真の中では、出されている条件に適うと思われる候補写真を2枚選定。

1枚は山を背景に記念写真的に一枚撮ってもらったやつっぽい写真。

そしてもう1枚は、シルバーセンターで知り合ったであろうハイマダム達に囲まれて撮ってもらっているもの。


「自然な表情、だとは思うけど……」

「解る。どう見たって煩悩まみれだよな」

「デスヨネー……」 

いや、確かにほどよい表情には写ってるけど、なんというか、[侍らせみ]をすごく感じる。

しかもそれを父娘二人して思ったあたり、もうなんかお察し感。


「……顔しか使わねえし、両方とも葬儀屋に持ってってみる」


 父からのその一言でその日の任務が無事終わり、風呂もそこそこに布団に入る。

 精神的疲労が一気に出てしまい、そのまま寝落ちた。



─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


祖父逝去から2日目。


 午前中は葬祭場との【打ち合わせ】、午後は戒名相談のため両親は朝から再び外出。

 この日は第4土曜日だったので旦那も私ももともと休日。

 故人の御身体(※オブラート表現)は預かって頂いているので、《自宅に誰か居なくてはいけない》という状況ではないので、三人で電車に乗ってショッピングモールへ。

 旦那も私も仕事柄スニーカーや安全靴での作業。年齢を重ねてから冠婚葬祭が無く、礼服はあっても黒靴が無かったので、買いに行かねばならなかったのである。

 チビらぎを大人の事情で連れ回すのも可哀想…というか、あまりにも失礼なので、しっかりたっぷり遊んでいただこうという考えのもと、地元ではなく電車で1時間かからない範囲に出かけた。

 

如月達の動向を書いても参考になる部分は全くないので、今回も両親側の話をしよう。

【 】も居る事だし。



 前日の晩に選定した写真を持って葬祭場へ向かった両親。

 上叔母はまだ来ていなかったそうだが、「如月家の葬儀なので、喪主様が良ければ特に問題ありません」とのことだったのでその日の打ち合わせを始める。

 写真を見せてどちらが良いかと話し合った結果、侍らせみ感満載の方の写真で遺影を作ることになった。

 担当さんも「良いお顔ですけどね…」と苦笑いしていたらしい。

 身内以外が見ても苦笑が出るってことは、誰から見てもそう感じる写真ってことなのだろう、やれやれ恥ずかしい。

 写真を渡して制作をお願いしたのち、上叔母到着。呆れ顔の従弟付き、お疲れ様……。

 式の内容や葬品などの確認、そしてどうあっても避けることのできない【式代支払い】、なのだが。


「全部お兄ちゃんが払ってよね。私、払わないよ」

「今、その話出す必要ねェだろうが!!」


口に出さなくて良いことを出す上叔母。

父、流石にブチ切れる。


 最初にそういった話題をこちら側から投げているのであればまだしも、本当に突然だったそう。

 金銭が関わることだから先手を打ったつもりだったのか……は本人じゃないから何とも言えないが。

 少なくとも発言していい場ではないコト位、いい年齢なんだから解りそうなモノだが。如月でも判るぞ。


 売られ言葉を買い、式代は全額持つ事にした父。何故そうしたかを聞いたら「一通り終わらせる為の手切金と思う事にした」と。

ちなみに大激怒に怯んだ上叔母、その日のその後は大人しかったそう。そのままならば良かったのに…ね。




 怒りを頑張って落ち着かせながら、再度の菩提寺訪問。

 前日には出来なかった戒名相談と共に、亡祖母との夫婦(めおと)位牌に作り変えてもらう依頼もすることに。


「住職、母ちゃんと兄貴を一緒の位牌にしてやれねえの?親父のは単品でいいんだけど」

「残念ですがそういった形がないのでねぇ……御夫婦位牌で許してください」

「住職が言うんじゃ仕方ねえ、我慢する。でも一緒にしてやりたかった」


 人物紹介で一言だけ触れているが、父には兄がいた。

 産まれた当月に旅立ち、如月が幼い時から小さな位牌が仏壇に鎮座している。

 母親とほとんどいられなかった兄を想ってのことであり、曾祖父も祖父を嫌っていたことも考えての提案だったが、ないものを「作れ」と言うような人ではない。

 位牌台に置き切れなくなるのも困るので、妥協したそうだ。


 位牌についてはあらかた決まり、祖父の戒名についての相談。

 名付については宗派云々というよりも、お寺さんや家々に依って違うと思うけど、父は生前の祖父との思い出や仕事について聞かれたという。


故人様(※実際は祖父の名)と過ごした中で何か思い出とかはありますか」

「親父に、っつーより住職に申し訳ねえんだけど、本当にまともな思い出が出て来ねえンだよ。一緒に釣りに行くっていうから行ったら釣り竿流されるし、一緒に出かけたら疲れただのなんだの文句しかなかったし……」


父よ、貴方は学生時代からろくな目に会ってなかったんだな……。

 いろいろ話して行った結果、本人が縫製の仕事と畑仕事をしていたこと、如月家故人の戒名にはそれぞれ季語が入っているので、それを考慮して戒名をいただくことになったという。



 戒名授与を終えた両親と買物を済ませた如月親子、お互いに帰宅。

 遊び疲れてスヤスヤ寝ているチビらぎを旦那に任せ、母と仏花を選びに出掛けて車中で報告会。そこで父ブチ切れ事件を聞いて思わず溜め息。


「ったく、何で余計なコト言うんだよって」

「もうそこまで来たら、世間知らずとかそういうレベルじゃないよね。悪意のない悪意とは思えないよ」


【葬式まで何かしら起こさないと良いけど】


「急に黙ってどうしたの?」

「……要らんこと口にしたなぁって」


マイナスの意味を持つ言霊は起きやすい。

創作の中だけではなく、現実でもそうだと思っている。


そしてそれは、やはりフラグとなってしまった。

次話は通夜式になります


スピリチュアル的発言(妄言?)や暴言とも取れる言動が割と出てきます、苦手な方はご注意下さい


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