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無涙葬送  作者: 如月 巽
12/12

疑心通夜

読んでくださりありがとうございます。


EP.10より【死】【葬儀までの流れ】【縁者問題】について触れています

今話は【家族葬の通夜式】が主になりますが、【縁者による詰問・スピリチュアル発言】という、一般的に考えるとやや特殊な状況が発生します

生理的嫌悪感・恐怖心を感じた場合は、閲覧中止または休憩を取るなどをお願いします

なお、次話には葬儀になるというのに【血縁者問題】はまだ入ってきます、どういうことなの


読者様の精神面を第一にお考え頂けますと幸いです

 遺影写真をお願いして戒名授与が終わった。

 平成初期くらいまでは《回覧板で訃報を早めに回して葬儀の日程を連絡》とか《ご近所総出で通夜式当日まで手伝ってもらう》とかあったけど、家族葬なので全て終わってから訃報を回すことに。

 令和になってからはそういうご家庭の方が多くなったし、そもそも回り切るまでに2週間以上とかが()()だし。


 前話の翌日は会葬品・生花・通夜振る舞いと精進落としの確認で両親が出かけた程度。

 ま、そこで上叔母はまたも自分の希望を押し通そうと介入。懲りないなぁもう……。

「もっと高価な方がいい」「多めに頼んだ方がいい」と言い出し、その個数は明らかに遺族側人数の2倍以上を頼もうとしていたそうで。

「残ったらどうするんだ」と聞いたら「私たちで分ければいい」と言われたんだとか。

 他人の金で食う飯だから高いものを頼もうってか、このヤ……このアマ。

 結局、従弟が「沢山あっても食べられない物ばかり入ってたら困るから、シンプルな方がいい」と発言し、母がそれに同意したことで上叔母は引き下がったそうだ。グッジョブ、補佐タッグ。


 ここ数話で「また上叔母かよ、コイツばっか出てくるな」と思われる方もいるだろう。

 祖父逝去の話の際に存在だけが出てきて、打ち合わせ関連には一切登場してこなかった下叔母。

 彼女は基本的に面倒はやりたくないし、長いモノに巻かれていたいタイプ。なので葬儀については「お兄ちゃんに全部任せる」と手を出さなかった。

一般的に考えたら、故人の一番身近に居た家族がメインで準備をするものだと思うので、如月的には下叔母の考え方の方がマシだと思う。

 血縁者が意見を言うのは多少有りだが、我が物顔で執り仕切るのは違う。

まして「自分は払いませんが豪華な式にしましょう」なんて、どれだけ図々しい図々しいことを言っているんだと。恥を知れ。

 

閑話休題、時間軸は通夜式当日へ。

── ── ── ── ── ──


祖父逝去から4日  2025年5月26日・通夜当日


 いつも通りの時間に目が覚め、普段の休日朝と同じように朝の家事を済まし、最終確認に出かけていく両親を見送る。

 夕方からは通夜式。準備よりも連日の悶着で疲れ切っている父に同情しつつ、午前中は親子三人楽しくお家遊びを満喫──


〜♪ 〜〜♪ 〜〜〜♪


──していたところで家族からの連絡を知らせる携帯くん。

「もしもーし」

『俺だけど』

(あーはっはー、声の感じがめちゃくちゃ不機嫌じゃーん、私に対してじゃないけどさー)

 電話の奥からは上叔母の甲高い声と、従弟の宥める声が入ってくる。


「うん、どうしたの?」

「当日に金の話で悪いんだけどよ、孫達であげる花代の支払い、会場で当日払いになっちまったんだわ。だから」

「いいよ大丈夫。会場で受付に払えば良いのかな」

「おう。最初はまとめてから払うって言う話だったんだけど、なんだか上妹(※実際は名前)がよくわからないコトにしちまってて。面倒くせェからそうしてもらった」


そんなコトだろうとは思ったよ。

つーか、今日通夜ですよ?貴女まだ物申して実兄困らせてるんですか?いい加減にしてくれませんかね??

電話を切りながら口から出るのは重いため息。


 祖父を失った悲しみから重い気持ちになってそうなる方がまだ良かった。

 会いたくない親族たちと顔を合わせないといけない上、毎日のように何かしらの悶着があって家族が疲弊しているのを見ているが故に気持ちが沈んでるだけという、まるっきり違う意味のため息。

 亡くなったのが金曜日で今日が月曜だから……えーと、日数換算で4日間。

 えぇ……四日間ずーっと言い争いしてるの?これ絶対【遺産関係】も面倒なことになるんじゃないの?


 そんなことを思っているうちに時刻は十二時を回り、両親帰宅。5人で昼食を食べて一休みしたのち、各々喪服に着替える。

 ちなみに乳幼児などの小さい子供を連れていく場合は、色味のないシンプルな服装にしてあげれば大丈夫。

 チビらぎの場合、通夜式は白袖に黒シャツのレイヤード風の服と黒のレギンス、黒っぽい靴を履かせてた。

 黒い服を着ているからか、「なんかみんないつもと違う」とちょっと怪訝そうにしていたけど、みんな一緒に出かけるんだという認識は出来たらしく、素直に車には乗ってくれた。

 ごめんね、三時間くらい退屈にさせちゃうけども……。


──────


 葬祭場に到着したのは、16時過ぎ。

通夜式自体は18時からの開始だけど、その前に行う物があるため早めに来た。


納棺の儀 ─ 家族・親族による故人の旅支度と、御身体を棺へ収めるまでの儀式のこと


 家族葬なので基本的には遺族・親族しかいないのだが、母方の叔母夫婦や父の兄妹たちの義家族などもきてくれることになっていたので、先に父の妹家族達と共に行うことになっていた。

 チビらぎを母に任せ、父と悠遊さんと共に葬祭場へ入って待つコト暫く。

 

「久しぶりだねえ、巽ちゃん。お爺ちゃん亡くなって大変だったね」

「ええ。上叔母さんはお元気そうですね」

「そんな事ないわよ、歳取ったし。それより、子供産んだんだって?今日来てるならお爺ちゃんの顔くらいは」


言わせねえよ。


「一歳の子供に見せるべきではないので」

「ええ?でもほら最期だし」

「私が、そう考えているので」

 せめて通夜と葬儀くらいは何事なく終わらせたいので、顔を繕って出来る限り穏やかに反論する。

 これ以上言うと怒りを買うと思ったのか、不服げに引き下がり自身の子供達の元へ。

 それから間もなく下叔母からも挨拶をもらい、全員揃った所に住職と御弟子さんも到着。

 担当さんの案内で祖父の仰臥(ぎょうが)する控室に入れば、担当納棺師の方が頭を深く下げる。

 父の妹二人にその家族、従姉弟とその家族…となると人数が多い。控室に人数が収まらなかったため、詰めて座ることとなり、父の隣に並ぶ。


 如月自身は一月の退院以降、祖父の顔は一度も見ていない。

そもそも早朝出勤(5時起床・6時半)だし、育児時短勤務とはいえ最短でも18時少し前くらいの帰宅。

 そんな時間割だから、退院後はほぼ寝たきり状態だった彼とは顔を合わせることが無かった。


 数ヶ月ぶりに見た祖父の寝顔は、納棺師によって既にある程度整えられていた。

 死因は臓器機能不全による物だったため、その顔は決して安らかとは言えない物だったと父から聞いていた。しかし、目下に眠り続ける祖父は苦しみなんてなかったように整っていて。正直言って「他人なのではないか」とさえ思うほどだった。

 打ち合わせの時に幾度も顔を見ていた父でさえ同じようなことを言っていたので、想像はできないが本当にあまり良い死に顔ではなかったのだろう。


 末期(まつご/死)の水(に水を取る)・簡易湯灌の清拭(せいしき)・死化粧。

 粛々と儀は進み死装束の着付けも終えて納棺し、長旅を支えるための杖を納めることとなり、孫を代表して誰が入れるかとなった。

 血縁の深い内孫が入れることが一般的であるらしく、叔母二人から早く受け取れという視線が送られてきたが、それを無視して父と共に従弟の方へ向き直る。


「従弟。孫杖(これ)はお前が入れてやってくれ」

「え、でも如月さん、これって巽さんが入れるべきじゃ」

「うん、私は食事の準備はしたけど、運転とかできたわけじゃない。お爺ちゃんの足代わりに車を出してくれたのは従弟君だから。私からもお願いしたい」

 横からすごく痛い視線がくるけど、従弟に笑ってお願いすると、彼も笑って頷いて杖を納棺してくれた。


今思えば、私の中には微かに情が残っていたのかもしれない。

これに関して言えば、入れるのが嫌だったわけじゃなく本心からの言葉。

少なくとも、晩年に会話の少なかった内孫から受け取るよりも、短期間でも話をしてくれた外孫から受け取る方が嬉しいんじゃないだろうか、と思ったのは確かだった。


 棺の蓋が一度閉じられて、祭壇のあるホールへと移されてゆく祖父。それを見送り、一度駐車場に戻ってチビらぎと僅かながらに一緒の時間を過ごす。

 時間が近づいてきて、再度斎場に戻るため荷物を取りに車に戻って、彼女をチャイルドシートに座らせ、持ってきていたタブレット端末を母に渡す。


「ごめんね、ばぁば(※如月母)と一緒に待っててね。母ちゃん、後でまた来るからね」

「……うん」


 一歳児に酷なことを言っている、という自覚はある。しょんぼりしてしまった娘を抱きしめてから、母にバトンタッチ。

 血縁の濃さで言えば私が強くなるため、通夜・葬儀の主たる部分は父と共に出て、母はチビらぎを車で面倒見る形を取ることに。

 しかし、遺族である以上は母も焼香をしないわけにはいかないので、私が焼香を終えたタイミングで母と交代し、母が終わったらまた交代することにしていた。


 そして通夜。

 流石に何事が起こることもなく一時間強くらいで恙無く式自体は終わり、親族達が玄関ホールを出ていくのを見送ってから、父と旦那と共に外へ出る。


「あ、お兄ちゃん!」


 如月達の前に手を繋いで登場し、甲高い声で父を呼ぶ下叔母の娘と上叔母の下妹。

 自分達の母親の兄だからと言って、兄と呼ぶのはいい加減やめた方が良い年齢なんだが。ついでに可愛く見える歳はとうの昔に過ぎてるから、おてて繋いでルンルンルン♪はやめてください、見ててイタい。


「ねえねえお兄ちゃん。お爺ちゃんがさ、明日はお茶と煎餅入れて欲しいって《言ってる》んだよね」

(始まった……これ長くなるな)


スピリチュアルな発言をしたのは《下叔母の娘》─ 以降は《下従妹》と書かせていただく ─ で、その発言で叔母二人も寄ってくる。


下従妹は昔から[視えて話せる]と言うタイプで、こう言っては難だが、私から見るとやや浮世離れしている節がある。

一応言うと、如月自身は[視えて話せる]と言う人を否定する訳ではない。

ただ、彼女に対しては元々否定的な目で見ている部分があるだけ。

如月家へ来ていた頃は、「あそこに○○が来てる!」「そこは××が居るから座らないで」と言うのは当たり前。

御盆ともなれば、「お兄ちゃんの兄貴が○○食べたいって言ってるから、早く用意して!」など、謎の指揮官化する事もあった。

しかも祖父と叔母二人はそれを鵜呑みにして聞き、父や私達への助言とばかりに話してくるので、その……大変に、対応に困るお嬢さん。まさか今もその当時のままだとは思わなかった。


「ねえねえ娘ちゃん(※実際は名前)、お爺ちゃん、他にも何か言ってた?」

「うん。煙草に火を着ける道具がなんで無いんだとか、畑道具の一つも入れられないのかって」

畳を数回焦がして、隣家が火事で全焼した翌年から喫煙やめてましたよ。

今住んでる家に引っ越すよりずっと前に、シルバーセンター辞めさせられてから「俺ァ畑はもうやらねえ」って言って、ずっと物置小屋に入れっぱなしです。


「あと、()()()()()()()()()()座椅子は、お兄ちゃんの兄貴が気に入ってるからまだ残しとけって」

自信満々に言った下従妹の言葉に父の視線が私に向き、私は彼女の言葉を聞いてる振りをして父へ頷く。


 彼女の言っている座椅子は、父が曾祖父のために会社から貰ってきた物。

 彼が使うようになってから一度も手入れはされていなかったこともあり、中綿と生地には異臭が籠り切っていたことから4月の頭に処分していた。


つまり、()()()()()()()()()()()()


(ここで言及すると面倒になるし、とりあえず言わせておこ──)

「お兄ちゃんさー、お爺ちゃんがよく飲んでたお茶教えてよ。そっちほら色々大変だと思うし」

「いや、俺はそこまで」

「お兄ちゃんに聞けばわかるってお爺ちゃん言ってるんだよ、だから知ってるでしょ、教え──」


「◯◯の茶葉だったよ」


 父へ寄り込んで質問を重ねていく従妹達に、答えを発する。

 私から言葉が来るとは思ってなかったのか、二人は目を丸くして互いの顔を見合わせてはこちらに目を戻す。


ただでさえ連日の悶着に疲弊している父に、これ以上質問させない。


「体が動いた頃は、いつも××に買い物行ってそのお茶買ってきては自分で淹れてた。沸かしたてのお湯でね」


従妹達の母の実兄ではあるが、従妹たちが呼んで良いわけが無い。

呼ばせたくない。聞きたくない。



「お父さん、らぎさんがジィジーってさっき呼んでたから行ってもらっていい?」

「……おう」

 チビらぎが父を呼んでいたのは嘘じゃない。子供って勘が鋭いから、何かを彼女なりに察して呼んだのかもしれない。


 父を一時退避させて、困惑気味の従妹達に笑って見せる。


「悪いんだけど、そういうのは私に訊いてもらえない?お父さん、そこまでは把握しきれてないからさ」

「……っ巽ちゃん、そういうの全然知らないって」


─「お爺ちゃん言ってた」って言いたいんだろ。

 死人に口なしだもんな、なんとでも言えるもんな。


家の中に一緒に居た時(爺の言葉が解るって言)間は一番長いから(うのが本当ならば)その位のことは判るよ(今すぐ聞いて答えれば)?」


 この時点で怒りは限界を越えていたけど、この場で声を荒げれば自分が要らない悶着を引き起こしてしまうから。

 言葉の裏に本音を隠して、作り笑う。

 

「あー…うん、じゃあさ─」


 4人から見たら私の行動は完全に予想外だったんだろう。

 過去、如月へ面と向かって「大人しすぎて何を考えているかわからない」と笑って言った上叔母からしたら、さぞかし異様な行動に見えたと思う。

 下従妹の問いに対して全て答えれば、下従妹は何に苛立っているのか顔が歪む。

 下叔母は私の回答を携帯にメモしていたが、上叔母は怪訝な顔でずっとこちらを見ていた。


「───。他にない?大丈夫?」

「……大丈夫」

「なら良かった」


 彼女達が考えている《如月 巽》を壊さないよう、怒りを抑えながら自分を作る。

 下叔母の相談にも答え、父が戻ったところで従姉妹組2人は離れていく。


「かーちゃー、とーちゃー!」

「はいはーい、母ちゃんいきまーす」

「父ちゃんも行くよー」


 お呼び出しに応え、母と一緒にいるチビらぎの所へと向かうために足を進める。


「……悠遊さん、ごめんね」

「謝らなくて良いよ。でも、聞いてたより酷い」

「うん」

「巽ちゃんは間違ってないよ。よく耐えた」

背を撫でてくれる手が温かくて、泣きそうになった。




19時過ぎに終わったのに、スピリチュアルな副葬品相談と父世代の思い出話に花が咲き。

結果、解散が20時を回ってしまったため、その日は店屋物を携帯から注文して届けてもらった。


通夜振る舞いの弁当があるだろ?って話になると思うんですが。


……帰りの受付で、またぎゃいぎゃいしてたんですよ。

しかも、妹夫婦2組と上叔母の娘夫婦2組が。

だから面倒になって、それぞれの家族に全員分持ち帰ってもらいましてね。

遺族分が2つしか残らなかったんですよ。


…………。


一般的に!

持ち帰りの場合!!

式に来てくださった人数分ですからぁぁぁ!!!


……通夜でこんな感じだったんです。


そして次回、告別式から納骨までの話になります。

また酷かったんだよなぁ、コレが…。

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