表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~転承~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

192/197

3章 32話 4節

バットマ少将との会談を終えたフライとキースは

その日の午後、昨日と同じカフェテラスへと向かった。

カフェにはこちらも昨日と同じく、

女性が二人、テーブルを囲んで時間を持て余している。

フライは二人と視線が合うと右手を挙げた。


「よう!

今日も今日とて、退屈そうな顔をしているな。」


声をかけられたツキヨは、上目遣いのジト目で

フライを睨む。


「ふーん。

来てくれたんだ。

話は聞いたんでしょう?」


意味深に言葉を吐くと、フライは首を左右に振る。


「ああ、話は聞いている。

多少はビックリしたがな。

君たちに会う前に話をされていたら

腰が引けたんだろうが、

俺たちは既に出会っている。」


フライを尻目にマドカがキースに視線を投げかけた。


「ごめんなさい。

ご指名しちゃって・・・・・・。」


言葉と同時に俯くマドカに、キースは笑顔を返す。


「指名されてうれしいですよっ!

僕もまたマドカさんと話せて、嬉しいですよっ!」


臆面もなく言うキースに、フライは苦笑いしたが

キースは気にする事なくマドカの隣に座った。

マドカの声が小さくなる。


「そんな・・・・・・私も

お話したかったので・・・・・・。」


二人の会話がむずがゆい。

キースはあえて、二人を見ないようにした。

ゆっくりとツキヨの隣に座る。

何かを察したかのようにツキヨも笑った。


「ふーん。

友達想いなんだ。

見かけによらず。」


「そういうわけじゃないっ!

いや・・・・・・全くないとは言わないが、

嫌だったら、断ってるさ。

それぐらいの甲斐性はある。」


フライの返しにツキヨはクスッと声を出した。

ツキヨはフライにそう言ったものの、

ツキヨ自身も、マドカに配慮した面がある。

「似た者同士なのかも。」

と感じた微笑みだった。

ツキヨの笑顔をフライは無視する。


「まぁいい。

お前ら、『外の世界』は初めてなんだろ?

今日は人間の娯楽ってヤツに案内してやるぜ。」


「え?でも、私たち

このテラスからの移動は禁じられているんですけど・・・・・・。」


「許可は取ってある。

俺がここに来る条件としてな。

行動範囲に制限はあるが、行きたいところに行けるよう

許可は取ってあるんだ。」


「あら、まぁ・・・・・・。

手際のいい事。」


ツキヨの言葉にフライはウインクをして答えた。

マドカもようやくフライを見る。


「じゃあ、私。

遊園地に行ってみたい。

色んなアトラクションがあるのでしょう?」


「じゃあ、今日はそこに決定だな。

時間が勿体ない。

さっさと行こうぜ。」


フライは自身が立ち上がるついでにツキヨの手首を軽く握って

立ち上がるように促す。


「え!?」


突然の接触にツキヨは一瞬慌てた。

彼女らは他人に触れられる機会はあまりない。

研究所の研究員とかでも、触れあうのは必要最低限であったので

フライの何気ない行動にツキヨの感情は大きく揺れ動いたが、

辛うじて、その感情を表に出さない事に成功する。


「ちょっと、せっかちでしょ。

もっと優しくしてよ。」


「ははは。

時間には限りがあるんだ。

急ぐ時には急ぐ。

これ、人生を楽しむ秘訣だぜ?」


「ふふっ。」


代わりにマドカが笑うと、彼女も勢いよく立ち上がる。

キースも慌てて立ち上がった。


「待ってください、マドカさん。

こいつの言うように動いてたら、

体力持ちませんから!!!」


キースは陸戦隊の隊員で鍛えられていたが、

隊の中では体力がないほうである。

それに比べてフライは陸戦隊の中でもトップクラスに

身体能力が優れたエースであった。

研究所暮らしのツキヨやマドカたちが

フライのペースについていけない事を憂慮した言葉であったが、

フライはそれを一蹴する。


「疲れたら俺たちがオンブしてやれば済む話だ、キース。

体力が尽きるまで遊ぶ!

それが今日のミッションだろ?」


「お、、、おんぶって。」


フライの言葉にキースはビックリしながら

マドカのほうを見た。

マドカはフライの言葉が気に入ったようで、

キラキラと瞳を輝かせてキースを見る。

もし、彼女に尻尾が生えていたのであれば、

その尻尾は左右に元気良く振られていた事だろう。

キースはその瞳に逆らえなかった。


「わかったよ。

まったく。

じゃあ、行きましょうマドカさん。

今夜は疲れてぐっすり眠る事を覚悟しておいてくださいね!」


キースがテーブルを離れ歩き出す。

一歩遅れたツキヨも立ち上がった。


「ちょっと待ってよ!!

別に行くのは反対じゃないけど・・・・・・。」


と言いつつ、捕まれたままの右腕に視線を落とした。

フライはその視線に気付くとニヤッと笑う。


「はぐれないようにさ。

街中を歩くのも初めてなんだろ?」


ツキヨはフライの言葉を聞いて、

上半身を後ろに引いた。

強引なフライに面を喰らった表情で硬直する。

またしてもフライに賛同したのはマドカだった。


「そうね。

私たちじゃ、迷子になるわ!!」


と言うと、キースの背中にまでダッシュで走っていく。

追いついてきたマドカにキースは

左手を差し出した。


「どうぞ。お嬢様。」


「はいっ!」


マドカは両手でガシッとキースの左腕を掴む。

二人を見て、ツキヨも腹を括った。


「もう・・・・・・。」


「人生は楽しむもんだろ?

行くぜ。」


「はい、はい。」


言葉とは裏腹に、特に悪い気はしないツキヨだったのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ