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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~転承~

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3章 32話 2節

丸いテーブルを囲むように座った4人は、

ツキヨーフライーキースーマドカ

の順番で円状になった。

ツキヨのの右隣にはマドカが居たが、

必然的にツキヨとフライ、キースとマドカが

話し相手となる形である。

ただ、会話の中心はコミュニケーション能力の塊のような

フライの独断場となりつつあった。


「まったく・・・・・・。

どいつもこいつもお盛んな事だ。

軍の将校だったら、何処に行ってもモテるだろうに。」


フライの批判は、同じ軍属である兵士たちに向けられていた。

軍人の中には、真剣に恋人を探している者も多いが、

中には、この地で愛人を作ろうと考えている不届き者がいるのを

知っているからである。

辺境惑星での赴任は長くて3年で交代するため、

3年待てばいいだけの話なのだが、

その3年が長いか短いと感じるかは、個人差があるであろう。

そしてタチの悪い事に、女性の中でも

愛人のポジションで良いと考えている者もいる。

需要と供給のバランスがいい。と言えば聞こえは良いが、

モラルの問題はあった。

そもそも参加者の比率は男性1に対し女性10と

男性は選びたい放題である。

惑星フルブの公式接待。と揶揄されるパーティであるが、

一応は軍人。

身の程を弁えて欲しいという願望はあったが、

明日死ぬかもしれない軍人という立場であるため、

フライとしてもここで皮肉を言う程度で収まってはいる。

ツキヨはフライの言動が新鮮だった。


「面白い人ね。軍人さん。

少しぐらいは羽を伸ばしてもいいのではなくて?」


ツキヨの言葉は、堅物な意見のフライに向けられた言葉である。

フライは手首を左右に振った。


「だから、ここでくつろいでるのさ。

上官のいない場所で、のんびりコーヒーを飲みながら

美女と話す。

この程度でいいんだよ。」


「大して変わりがないように思えますけどね。」


ツキヨは笑いながら言った。

フライの「美女と話す」という台詞にあざとらしさを感じたからである。

男前の筋肉質な偉丈夫なだけあって、

女性の扱いは慣れた感じである。

二人とは対照的に、マドカとキースはあまり会話が弾んでいるようには

見えなかったが、特段険悪な雰囲気ではない。

お互いが人見知りしているような感じで、

相手の動作に気を向けてはいるものの、

何を会話していいのかわからないような感じではある。

フライは暫く様子を見ていたのだが、

遂にじれったくなって、ちゃちゃを入れだした。


「おいキース。しゃべらないならもう帰るぞ?」


「あ、それは困る・・・・・・。

あ、あのマドカさん、お花は好きですか?」


唐突な会話に、マドカビクッと肩を動かした。


「お、お花ですか?」


「ええ、実は趣味で花を育てているんですが、

マドカさんに似合う花があると思いまして・・・・・・。」


キースの言葉を聞いたフライは、右手を顔に押し付けて

天を仰いだ。

女性に免疫があるほうではないと思っていたが、

まさかここまでとは思わなかったからである。

しかし、先にツキヨが話に食いついた。


「花を育ててるって、生きてる花ですぅ?

生物工学とか専攻してらっしゃる?」


ツキヨがそう聞くのも理由があった。

琥珀銀河には、花という生命は在来種としては存在しない。

地球と言う星から持ってきた花の種子はあり、

存在が皆無という事はなかったが、一般的に

花と言えば、人工物の造花の事である。

しかし造花は育てるという表現はしない。

そして生物工学という単語にも問題があった。

慌ててキースは首を振る。


「生物工学なんて!

そんな禁忌の学問をやっているわけじゃないのですが、

父がちょっとした縁で花の種を入手してきたんです。

それから我が家では、花を育てるのが趣味と言うか。

それで、私も育てているのですよ。」


「まぁ素敵な話。」


ようやくマドカの表情が柔らかくなる。

だが、この会話の流れには違和感があった。

フライはその違和感に気付く。

それは生物工学というワードを軍人であるキースは兎も角、

一般人であるツキヨとマドカが軽く受け流した事であった。

人類が琥珀銀河に辿り着く前、天の川銀河に住んでいた時代、

人は生命体を自由に作り変え、生態系を破壊した。

人は生命というパンドラの箱の解析を終え、

神に近付いたのである。

そして同時に、様々な異形の生物を作り上げ、

それを兵器として利用した事で、世界は崩壊した。

神と驕った人類が、悪魔に生まれ変わった瞬間である。

世界は大いに乱れ、混乱し、カオスという表現が適切な世界が

訪れたのである。

琥珀銀河へ移住してきた人類は、そんな天の川銀河の文明を

恐れ、毛嫌いし、新天地を求めて

外宇宙へと旅立った人類の一派である。

必然、世界を地獄絵図へと変えた生物工学を封印し、

禁忌の学問とした。

それまで蓄積された知識は、全てAIの中に封印され、

今や生きている人間で生物工学を理解している者は

この琥珀銀河では皆無だったのである。

そんな状況で、自然に生物工学というワードが

飛び出したことはフライにとっては違和感でしかなかった。

だが、他の3人は全く気にしていない素振りである。

むしろキースに至っては、饒舌になっていく。


「造花って美しいのですが、完璧すぎるんです。

味気ないんですよ。

欠点がないと言うか、暖かみがないと言うか。」


「でも、生きてる花って枯れるのでしょう?」


「枯れるからこその美しさなんです。

そこにある儚さと、完ぺきではない不揃いの

計算されていない美しさと言うかですねぇ。」


目を輝かせてしゃべるキースに、フライは頭をかいて

視線をツキヨに流した。

ツキヨはキースの話の中身よりも、楽しそうに話を聞いている

マドカにご満悦のようである。

「まぁ、いいか・・・・・・」

とフライは思った。

目の前の三人が、楽しそうなのであれば、

それでいいと思ったのだった。

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