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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~転承~

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186/199

3章 31話 4節

そう、事実なのだ。

結果論ではあるが、結果から導かれる事実なのだ。

場の空気が凍る。

ゲイリは思っている気持ちを素直に語りだした。


「事実は小説より奇なり。だ。

俺は歴史を学んでいる。

歴史に名を残すような偉人が、歴史の表舞台に出てくる時ってのは

全てがその人物を中心に回っているかのように

奇跡的な連鎖が時代と偉人を作る。

人一人一人、個人の運命とかは信じないのだが、

歴史の出来事ってのは、まるで運命に導かれるように

奇跡と奇跡が絡み合ってしまうから、歴史が動いてしまうものなんだ。

そして、俺はウルスと言う男を知っている。

幼年期に3度も命を狙われ、その全てを奇跡的に回避し、

3度目の誘拐事件では、そこで出会ったピュッセル海賊団と

親交を深め、王位継承戦争ではその力を大いに利用した。

それだけじゃない。奴の学生時代の友人には、

エースパイロットと呼ばれる男、

ワルクワとの同盟を成立させた男、

そして俺がいて、妹は芸能界で王族のイメージアップを担った。

ウルスの現在こそが、運命に導かれて、

皇帝になるべくしてなったんではないかとさえ思える。

そして、パラドラムの指導者ミネル。

そこからの、タク君やクールン人との出会いは

一本の道で繋がっている。

このストーリーの中で途中から、

無理矢理ストーリーに割り込んできた存在・・・・・・。

それがタク君なんだ。

言うならば、脚本の中のノイズが彼なんだ。

今、誰が作ったか知らないこの物語の中心に

タク君が居る。」


「馬鹿馬鹿しい!!」


ゲイリのあまりにも突拍子もない台詞に、

ティープも逆に落ち着きを取り戻した。

感情のコントロールは得意な男である。


「で、タクの出生に何があるってんだよ。

まさか、クシャナダ女王の隠し子だった!とかじゃないだろうな。

そうだったら、笑うしかないな。

で、どうだったんだ?ウルス。

調査結果は出たと言っていたな?」


ウルスは首を左右に振った。

それはガイアントレイブの王、クシャナダ女王の隠し子ではない。

というニュアンスにも取れたが、

逆に、そんな単純なものではない。という仕草にも見えた。

ウルスは覚悟を決める。


「ゲイリから1枚の女性の写真を渡されたんだ。

俺も、お前も知らない人物だよ。

ゲイリも直接会った事はないだろう。

なにせ、その写真の女性はタクを産んで

すぐに亡くなっているのだからな。」


「ん?タクの母親か?

誰なんだよ。それ?」


ゲイリに視線が集まる。

ゲイリは皆の視線よりも、

「その写真の女性はタクを産んで」という

ウルスの言葉に頬の筋肉が緊張するほど強張った表情を見せた。

少し小刻みに震えながら、恐る恐る口を開く。


「ガイアントレイブの隔離施設から逃げ出したクールン人さ。

ロアーソンの研究所の資料の中にあった。

一人だけ、収容施設から逃げ出したクールン人がいたってね・・・・・・。」


その言葉の意味を理解するのに、頭の回転の早いセリアでも

5秒ほどの時間を要した。

母親がクールン人という事は・・・・・・。


「は?

タクがクールン人だって言うのかよ?

待て、待ってくれ!

情報量が多すぎる。

クールン人はそもそも女性しか産まれないんじゃなかったのかよ?

タクは男だぜ?一緒に共同風呂に入った事があるから間違いない。

何かの勘違いじゃないのか?」


ティープの動揺にウルスは事実関係を話す。


「勘違いという可能性は0ではない。

だが、タクが拾われたとされるスラムの住人で

タクと母親の事を覚えている人物が居たんだ。

生まれて間もないタクを抱いて、スラム街に現れたらしい。

彼女は、ガイアントレイブからの密入国者だと答えたそうだ。

そして、長旅の疲労からか体調の悪化で亡くなったんだが、

亡くなる直前にタクには、

自分の事を話さないで欲しいと頼んだらしい。

ガイアントレイブの追手から逃れるために。と。

勘違いの可能性はかなり低いと思う。

施設から逃げ出したクールン人の写真と

その彼女がガイアントレイブからの密入国者という情報が

一致するからだ。

そして、タクという名前の響き。

ガイアントレイブの流れを汲む名前だとは思っていた。」


琥珀銀河に流れ着いた人類のコロニーは3つあるが、

それぞれ、独特の文化の色を持っている。

天の川銀河では、世界の統一が進んだが、

文化圏の名残りは根強く残っており、特定のコミュニティに

同じ文化圏の人種が集まる傾向にあった。

漢字という特殊な文字を、ファッションの一つとして

使用しているのはガイアントレイブだけであり、

そこに住む人々の名前も馴染みのない発音のモノが多い。

タクという名前は、確かにガイアントレイブの文化の色を持っている。

ただし、とウルスは付け加える。


「ただし、タクの母親と名乗る人物が

クールン人だっただけで、実際にタクと

血の繋がりがあるとは限らない。

調べればわかる事だろうが、どうする?ゲイリ。

その脱走したクールン人の遺伝情報なども

資料にあったのだろ?」


ゲイリは頭をかく。


「まるでパンドラの箱だな。

開ける事が躊躇われる。

クールン人が男子も産むことが出来るとなると

それこそ、完全隔離しなければいけなくなる事案だ。

女性は妊娠という段階を踏む事で、例え人工子宮を使ってても

出産を把握できるが、男子の遺伝子のばら撒きを

管理する事は、実際問題不可能だ。

クールン人政策の根本が変わってくる。」


ゲイリはウルスの質問の回答を避けた。

とりあえず、棚上げするつもりだった。


「今、結論を出す必要はないさ。

幸いにと言うかタク君はクールン人と近い。

もしクールン人を隔離するとなれば、

タク君は自ら進んでクールン人との

共同生活を選ぶだろう。

それはタク君を隔離する事にも繋がる。

問題は本人にこの事実を伝えるか?だが・・・・・・。

ティープ、君に任せるよ。」


ゲイリは言った。

ボールの所有権を渡されたティープは

言葉を発する事が出来なかった。

頭の中がグルグル回る。

色々な感情が湧いては、沈静化し、

別の感情が生じてくる。

彼も、今は回答をする事が出来ないでいたのだった。



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