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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~転承~

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3章 31話 3節

ゲイリの報告に一同の表情が険しくなった。

もし仮に、スノートールの暗号通信が復号されていたとするならば、

それはそれで頭の痛い問題である。

暗号を変えれば問題ないかもしれないが、

解読は実質不可能と言われる強力な暗号を用いているのだ。

解読に成功している組織があるとは考えにくい。

それが実在するというのが大問題なのである。

皆が同じ考えなのだろうと察したセリアが口を開く。


「暗号の復号に成功しているとは考えにくいのだけど。

でも、敵はバイオソルジャーという旧時代の

禁じられた兵器まで投入してきた敵。

我々が放棄した技術を用いる組織ですわ。

考えただけで、恐ろしくなりますわね。」


ウルスが続く。


「人類発祥の銀河・・・・・・・天の川銀河の

負の遺産。と言ったところか。

今、我々が認識している組織とは別の組織が

存在している可能性があるって事だな。

例えば・・・・・・それこそ他の銀河から流れ着いた

第4の勢力とか・・・・・・・。」


可能性は0ではなかった。

今現在、琥珀銀河に住んでいる人々のルーツは

天の川銀河と呼ばれる人類が誕生した銀河から

脱出し、琥珀銀河に流れ着いた者たちであった。

ウルスらはその子孫であり、琥珀銀河で誕生した生命体ではない。

ウルスらの祖先と同じように天の川銀河からの漂流者は、

今後来ないという確証はなかったし、

琥珀銀河ではない別の銀河に漂着した人類が

更なる銀河を求めて外宇宙に飛び出した可能性もある。

琥珀銀河では、3つの勢力が交渉を行い、

天の川銀河を地獄絵図と化した様々な

非人道的兵器の開発と使用を禁じた。

何故なら、それらのせいで彼らの祖先は

天の川銀河を捨てる事になったからである。

特に生態系を狂わすバイオテクノロジーの研究の類は

禁忌とされてきた。

だからこそ、クールン人の人体実験ともとれるガイアントレイブの

所業が断罪されるのである。

クールン人に対して、バイオ研究が行われていなかったのは、

せめてものガイアントレイブの良心であったかもしれないが、

人を隔離し研究材料として扱い事さえも忌諱されるのに、

人為的な計画に基づく繁殖など言語道断という下地があったからである。

しかし、未知の敵はバイオテクノロジーにより生み出された怪物、

バイオソルジャーを使ってきたのだ。

むしろ、そのような組織がクールン人に興味を示すのは

妥当であるような気もする。

魔法を使うバイオソルジャーが生み出す事も出来るかも知れないのだ。

4人の背筋に悪寒が走った。


沈黙の後、ゲイリが堪らず話題を変える。

元々彼は物事を悪いほう悪いほうへと考える癖がある。

だからこそ、最悪な状況を回避できるのであったが、

この話題は個人の予想の範疇を超えていたからである。


「そう言えば、ウルス。

調査を頼んでいた件はどうなってる?」


「ああ、調査は終わってるよ。

だが・・・・・・。」


と答えると、視線がティープに流れた。

その視線の動きにティープも気付き、違和感を覚える。

内容が自身に関係ある事を悟ったからだった。

おのずと視線は質問したゲイリに集中するが、彼は気にしない素振りで答えた。


「構わない。

ティープにも知っていてもらったほうがいい話だ。

まぁ、結果次第だが。」


「なんだよそれ?

悪い事か?」


ティープの疑問にウルスは、「ふぅ」とため息をつく。


「タクの事だ。

タクは孤児として保護され、父親も母親もわからない。

ゲイリはな・・・・・・タクの出生について調査依頼を出してきたんだよ。」


「タクの!?

なんでだよ?

タクの出生に何かあるのか?」


代わりにゲイリが応える。


「タク君は、クールン人との親和性がいい。

クールン人と視野を共有した事もあれば、

カサンドウラでは、ハルカ君と共に気を失った瞬間がある。

タク君らからは何も聞いていないが、

その時以降、タク君とハルカ君の距離感が縮まったように

感じるんだ。

何かあったのだと思っていい。

それだけじゃない。

カレンディーナ大将と出会い、パラドラムの子どもの一員として

軍の作戦に関わり、クールン人と邂逅した。

ウルスや俺、ティープがクールン人問題に関わってしまうのは

国を担う者として状況的に必然だったが、タク君。

彼には必然性がないにも関わらず、

今もクールン人問題の中心に居続けている。

まるで世界が、彼とクールン人を結びつけるかのようにだ。

ヒナ君らジャッジライトリバースの件もそうだ。

ヒナ君は15歳の少女だが、タク君も15歳。

同世代で波長も合うだろう。

偶然にしては出来過ぎていると思わないか?」


ゲイリの言葉に、ティープは思わず大笑いした。


「はははははは!

現実主義者のゲイリ中佐の言葉とは思えん!

運命とか宿命とか陰謀論とか、一蹴するお前じゃないか。

その言い方は、ナニか?

タクとクールン人を出会わせるために、

全ての物事がストーリーに沿って、流れていたとでも言うのか?

ウルスがメイザー公に勝利し、皇帝になったことも、

ウルスと俺やゲイリ、ミネルが同級生だってことも、

・・・・・・。」


一瞬、ティープの言葉が止まる。

セリアはティープが何を言いたいのか?の予想がついたため

顔を下に俯けた。

今彼は言ったら後悔する事を言おうとしている。


「おっかさんと・・・・・・・。

おっかさんと俺が出会って、婚約したことも、

二人でパラドラムの孤児たちの面倒を見ようって決めた事も!

おっかさんが、クールン人を助けようとしたことも!!!」


徐々に語気が荒くなってくる。

ここに来て、ゲイリもウルスもティープが一番何を言いたいかを理解した。

その言葉を受け止めるために、ウルスは唇を軽く噛む。

ティープは遂に吐き出した。

己の思いを全力で乗せた言葉だった。


「おっかさんが、死んだ事も!!!!

全てはタクとクールン人を出会わせるための

必然だったって言うのかよ!!

ふざけるのもいい加減にしろ!!

ゲイリ!

お前は人への配慮がないのはわかっていたが

これは最悪だ!

冗談にしてはタチが悪い!!!」


ティープは怒鳴るように言ったが、

それは不思議な事である。

運命・宿命・陰謀論、これらはまともな人間であれば

軽く流せる内容の話である。

特に戦場という空間で生きている軍人は

自分の生死を運命や宿命などに左右されたくないと考えるものだ。

だから、ティープは一蹴するだけで良かったのだ。

ムキになる必要なんて、1mmもなかったのである。

だが、この時はゲイリの言葉を流せなかった。

それほどまでに、ゲイリの言葉に信憑性を感じたからに他ならない。

ゲイリは瞳を閉じると、力なく言う。


「俺は運命とか宿命とか陰謀論とか今も信じてないさ。

事実だけを見ている。

それは変わりがない。

だが・・・・・・。」


ゲイリは一度、話を続けるべきか悩んで言葉を止めた。

だが言う事にした。

少なくとも、義理とはいえタクはティープの被保護者である。

その人物を調査したのだ。

ティープには、全てを話しておくほうがいいだろうと判断したからである。

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