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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~転承~

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3章 31話 2節

軍服を着ているが、ひと際目立つ男。

綺麗な黄金の髪の色のせいではない。

金髪の男性は少数だったが、他にも居た。

だが圧倒的なオーラを感じさせる。

もちろん、周囲の雰囲気も異様なのが判る。

その男性の周囲と周りの兵士たちには距離がある。

まるで近付いてはいけないような距離感がある。

だが、それだけが理由ではないのは明白だった。

誰の目にも、その男が特別だと判った。

しかし男は何も気にしていないかのように

タクらのバスに近付いて来た。

彼の後ろには、階級の高い勲章をつけた軍服の男たちが続き、

更にその後ろに外見からして屈強な兵士たちが連なる。

威圧感はパンパなかった。

まるで、マフィアのボスが歩いているかのようである。

もちろん、マフィアのボスよりも

帝国の皇帝は格上なのであったが。


まずは、ゲイリがタクらの前に出た。

タクはまだしも、一行にはクールン人の面々が居る。

ヒナたちのような少女もいれば、もっと幼い子どもたちもいるのである。

目の前の男たちの集団は

彼女らのトラウマになりかねない。

ゲイリが前に出る事によって、

安心感を与える効果を狙っての事であるが、

一言、文句を言うためでもあった。

ゲイリの気持ちも知らず、先頭を歩きながらゲイリに気付いたウルスが

軽く片手を挙げた。

その仕草を見て、「ふぅ。」

と思わずゲイリは肩を落としてため息をつく。


「陛下!

こちらには一般市民もいます。

そのような強面の団体で来られては皆が萎縮してしまいます。

ご配慮をお願いしたい!」


ゲイリが大声で叫ぶと、ウルスは一瞬ビックリしたような顔をして、

後ろを振り返ると、数名に指示を出した。

再び歩きだしたウルスの背後には3名のお供が付いてくるのみである。


「まったく・・・・・・。

自分が皇帝である自覚がまだないのか?あの男は。」


ゲイリのぼやきに、セリアが口を出す。


「あら?

お兄さまを皇帝として扱ってない筆頭の

ゲイリ中佐のお言葉とも思えませんが?」


「姫!からかわないでください。

あいつと俺は親友で、しかも今は義理の兄弟です。

それに、人前では陛下として接してますよ。」


ゲイリは言ったが、そんな事はセリアも百も承知である。

真面目に受け答えするゲイリにセリアは笑った。

その笑いが気になったのか?

タクら一行の側まで来たウルスもつられて笑顔になる。


「夫婦仲がよく、羨ましい事だ。

私はあまり妻に会えていない。」


ゲイリ夫妻とウルス夫妻は、同日に同じ場所で結婚式を行った間柄であり

夫婦としては同期ではあったが、

その後の生活は天と地の差があった。

戦場まで一緒に行動する妹の夫婦仲をウルスは羨ましがったのである。

皇帝の身で、公務の際に妻を帯同させるわけにもいかないのは

ウルスも理解していたが、それにしても

妹セリアの自由な行動は、皇帝としても、兄としても

少し頭の痛い話である。

もちろん、セリアという人材がクールン人問題を扱うにあたって

適材であったのは理解しているが、自由に動ける立場ではないはずなのに

自由奔放に生きている妹を見て、羨ましくもあり、

悩ましくもあり。


なんとも言えない空気に包まれた3人の後方から、

陽気な声がする。


「キャー!

ウルスさま!!ウルスさまー。

本物のウルスさまー!!!」


ゲイリとセリアの背後に隠れながら、奇声を発したのは、

ジャッジライトリバースの一人、エナだった。

慌ててリーダー格のヒナが、エナの頭を抑える。


「申し訳ありません。陛下。

この子、ミーハーで。」


と言うヒナも視線はウルスに釘付けであった。

ヒナもエナも15歳。

目の前に彫刻のような美貌と謳われる皇帝が現れれば、

平常心でいろと言うほうが難しいであろう。

ウルスは、この不敬な二人の態度を気にする素振りもなく、

にこやかに笑う。


「長旅でお疲れでしょう。

今日はゆっくり休んでください。

部屋は個別に用意してあります。

これからの事は、明日、また話しましょう。」


「は、ハイ!

かたじけのうございます!!」


というヒナの台詞に、思わずゲイリが

「ぶっ!」

と吹き出すと、セリアに肘でこずかれる。

流石のウルスは動じない。


「では、トメリスク中将、

皆さんを宿泊施設へ。」


ウルスの後方に居た一人の中年男性が前に出ると、

「こちらです。」

とヒナたちに合図する。

厳格で真面目そうな男の指示に、ヒナを含むクールン人の面々は

案内に従った。

タクも一緒についていく。

場には、ウルスとゲイリ、セリアとティープが残った。

ゲイリが軽く首を振る。


「警護の問題もある。

皇帝陛下が来るような場所ではないだろう?」


どうしても小言が言いたいようであったが、

その言葉にウルスは反抗的だった。


「マークサスで襲撃があった連絡以降、

詳しい話もなく通信を遮断したのはどっちだ?

待たされる身にもなってみろ。

クールン人問題もあるが、親友と妹がそこに居るんだぞ!」


心配したんだ!と言わんばかりであったが、

それは本心なのだろう。

表情は真面目だった。

ゲイリは頭をかく。


「仕方ないだろ。

正体不明の組織に襲撃を受けたんだ。

警戒もする。」


ゲイリの反論にそれまで黙っていたティープが口を挟む。

ウルスとゲイリとティープは、今は立場が違うとはいえ

士官学校時代の同級生である。

彼らに身分の壁はない。


「それだ、ゲイリ。

奴らの正体はわかったのか?」


「いや、わからんよ。

だが、考えれば考えるほど、色々とおかしい。

奴らの狙いがクールン人だったのであれば、

我々を待つ必要はなかった。

ガイアントレイブであれば、撤退する時に

クールン人を始末できたはずだし、

ワルクワであっても、ルカゼがマークサスの事は知っているはずだ。

俺たちの到着を待つ必要がない。

奴らの狙いが俺たちだったとしても、

マークサスに辿り着ける前に襲う事は出来たはずなんだ。

だが奴らは、俺たちがマークサスに着いてから襲ってきた。

つまり、俺たちを尾行していて、

クールン人の居場所まで案内させた。

としか考えられない。

だが、俺たちは極秘任務で動いていたわけで、

俺たちの動きが外に漏れる事は考えにくい。」


そこまで聞いて、ウルスが軽く頷く。


「つまり、内部が怪しいと言う訳か。

犯人はスノートールの人間・・・・・・。

もしくは内通者・・・・・・か。

確かにスパイがいるのでは、安易に情報を

流すわけにはいかないな。」


「ああ。

現にカンに辿り着くまで、何の妨害もなかった。

情報統制の効果があったって事だな。

内部に犯人の一味がいる可能性が高くなった。

ただ、俺はもう一つの可能性も考えている。」


「ん?」


「通信をハッキングされている可能性さ。

スノートールの暗号通信を解読している奴らがいる可能性も

あるって事さ。

現に、ウルスと俺とで作った二人だけの暗号通信で

何度か交信はしたんだが、それは漏れていないようだしな。

むしろ俺はこっちが本命じゃないかと思っている。

スパイが居るのであれば、わざわざ

スパイが居る事が判るような行動を敵が起こすとは考えにくい。」


敵の正体を絞るため、ゲイリは偽の情報を

ウルス宛に送っていた。

具体的には、魔法が使えるクールン人は危険だからと

マークサスに置いていくという情報を流したのだった。

しかし、ゲイリが指定した囮の場所に敵が襲ってきたという情報はない。

この情報はブレイズの乗組員にも伝わっていたため、

ここで二つの事実が判る。

一つは、ウルスとゲイリ二人のみが解読できる独自暗号は

敵は解読できてないという事。

二つ目は、ブレイズの乗り組み員にスパイは居ないという事である。

この二つの事実を以って、ゲイリは

ウルスとの通信を遮断すれば、敵に情報が流れる事はないと

判断したのであった。

そしてその予想通りに、ブレイズはカンまで

何事もなくクールン人を移送する事が出来たのである。


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